BLUE ENCOUNT、飾らないステージで爆発させた“ライブハウスへの想い” 配信ライブ『STAY HOPE』レポート

 そういったこのバンドの愛すべき不器用さが、私には懐かしく感じられた。ライブハウスが槍玉に上げられたことに対し、田邊が「本当に悔しいです」「何も知らないやつらがライブハウスのことを悪く言っている現状が耐えられません」と語っていたように、最初の時期は、これまで大切に守り続けてきた領域に土足で踏み込まれた感覚に虚しさや怒りを覚えた人もいたことだろう。とはいえ、全員が困窮し、理不尽な扱いを受けていない人の方がもはや少ないのが現状。みんな、できることが限られているなりに、それでもやれることを探しながらやっている。みんなが頑張っているからこそ、蹂躙された悲しみは置き去りにされ、日を重ねるにつれて言外しづらくなっている。

 では“知らないやつら”にぞんざいに扱われたとき、私たちが悲しいと感じたものとは何だったのか。ライブハウスとはそもそもどういう場所だったのか。この日のブルエンのライブにはそれを思い出させられた。

辻村勇太

 9曲目の「もっと光を」は、リリース以降何度となくライブで披露されてきた曲だが、それでもこの日の「もっと光を」は格段に輝いていた。スポットライトを一身に浴びた田邊による心のこもった歌い出し。それに突き動かされたように、「歌えー!」と叫ぶ辻村勇太(Ba)。「これからもライブハウスが抱きしめるよ」「だから俺達と一緒に生きよう、よろしくお願いします!」といった歌詞替えは大幅に字余りで、もはやメロディをはみ出しているが、細かいことはどうでもいい、それを上回るほどの情熱がここにはある。辻村が演奏しながら「ウォイ!ウォイ!」と声を張ると、高村佳秀(Dr)がシンバルを叩いてそれに応じる。江口雄也(Gt)は、満面の笑みでカメラに近づいて演奏したり、マイクをスタンドごとカメラの方へ――いや、カメラの向こうにいるあなたの方へ向けている。「ダァー!」とか「ウワァー!」に近い田邊の絶叫に締めの一音が重なり、曲が締め括られた。ラストの「だいじょうぶ」を演奏する前の長いMC、ギターを鳴らしながら田邊が呟く。「そうだな。ダセえことでも堂々と言えるのがライブハウスだった」と。

江口雄也

 ライブ終了後には、2021年4月18日に横浜アリーナでワンマンライブを開催すること、映画『青くて痛くて脆い』の主題歌「ユメミグサ」を収録したシングルを今年9月2日にリリースすることが発表された。今回の配信ライブの会場はTSUTAYA O-WEST。2013年3月、600人のファンでいっぱいになったフロアを見て1万人超の観衆を想像したという田邊が、「絶対武道館でワンマンやります!」と宣言したあの場所だ。その3年半後、彼らは有言実行を果たしている。

 この日誰もいないフロアを見て、4人は何を想像したのだろう。横アリの頃には状況が落ち着いているのか。どの程度なら客席を埋められるのか。今はまだ分からないことだらけだが、ここで結んだ約束はきっと明るい未来を連れてきてくれるはずだ。

■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。

■セットリスト
BLUE ENCOUNT『STAY HOPE』
2020年7月10日(金)TSUTAYA O-WEST
1:opening
2:ポラリス
3:Survivor
4:THANKS
5:#YOLO
6:幻聴
7:ANSWER
8:バッドパラドックス
9:VS
10:もっと光を
11:だいじょうぶ

■BLUE ENCOUNT関連リンク
公式HP
Twitter
Instagramアカウント(@blueencount_0fficial)

関連記事