BLUE ENCOUNT、飾らないステージで爆発させた“ライブハウスへの想い” 配信ライブ『STAY HOPE』レポート

BLUE ENCOUNT『STAY HOPE』レポート

「何日経とうと、何カ月経とうと、ライブハウスで鳴らす音は正義でした」

 7月10日に開催されたBLUE ENCOUNT(以下、ブルエン)の配信ライブ『STAY HOPE』。冒頭に引用したのはMCでの田邊駿一(Vo/Gt)の発言だが、こう言えるほどの実感を得られたことがバンドにとって一番の収穫だったのではないだろうか。

 複数人が集まって音を鳴らすバンドという形態は、コミュニティの在り方として最先端なのかというと、そうとは言い難いだろう。バンドの音楽は一人だけでは完結しない。リモートワークにも向いていない。コロナ云々と関係なく、別々の意思を持った人たちが集まり、一つの方向を向きながら音楽をやるのはそもそも困難で面倒なことだ。しかし、だからこその感動がそこにはある。泥臭さが愛おしいと思える。ブルエンのドロップ幕には「THIS PLACE IS YOURS」というフレーズが刻まれている。あの言葉の意味、そこに詰まった誇りの存在を、バンド自身が、そしてライブハウスを愛する私たちが思い出すためのライブだった。

 定刻をやや過ぎた頃、当日の会場入りの様子や、田邊が心境を語るインタビューを収めたオープニング映像がスタート。その後、おなじみのSEをバックにメンバーが姿を見せた。いつものライブと同じ始まり方。まるで観客がそこにいるかのように、田邊がフロアに手を振る。

 そうして「ポラリス」、「Survivor」からスタート。特徴的なギタータッピングを聴いて「そうそう、これこれ!」という気持ちになった人、ビートに合わせ思わず拳を上げてしまった人、少なくなかったのではないだろうか。「いつも通り行こう、よろしく!」と田邊が言っていたように特殊な演出等はなし。“ライブハウスで演奏するメンバーの姿をカメラがひたすら捉える”、“それを私たちが観る”というシンプルなスタイルで以って、ライブは届けられた。

田邊駿一

 初めに「ただいま帰ってきました!」と挨拶していたのは、彼ら自身、ライブをやるのが久々だったからだ。新型コロナウイルスが猛威を振るう以前、有観客で開催された2月21日・新潟LOTS公演(Fear, and Loathing in Las Vegasのツアー)を最後に、ブルエンが出演予定だった対バンライブ、フェスやイベントは中止・延期になった。自身主催の全国ツアーも延期に。その後はバンドと田邊ソロで1回ずつ、出演者が複数組いる生配信ライブに出演したものの、バンドが主体となってライブを行う動きはしばらくなく、今回の配信ライブが実質今年初のワンマンだ。その理由は後に説明された通り。生の現場で直接届けたいという気持ちの強さから、当初は配信ライブに乗り気になれなかったが、ライブをできない期間があまりにも長く続いているため、待っていられなくなったそうだ。

高村佳秀

 要は“誰かのため”というよりも、“まずは自分のため”という動機であり、だからこそ、この日の彼らは飾らずステージに立っていた。「ブランクがだごできゃあ!」(熊本弁で「ブランクがめちゃくちゃ大きい!」の意)と本人たちも言っていたように、序盤は若干硬かったが、「ライブハウス久々!」「本番前の緊張感もよかったね」などと言葉を交わしながら演奏を重ねるうちに、音は活き活きとし、メンバーの表情も清々しくなってくる。セットリストの半分にも達していない時点でメンバーは汗を滴らせ、「贅沢な時間を過ごさせてもらってます」と笑っている。MCのたびに田邊が「カメラどこだろう。あ、ランプ点いてるやつか。ごめんね」と目線をどこに向けるべきか確認していたりと、配信ライブ慣れしていない感じが目立っていたが、裏を返せば、それでもやろうと踏み切ったということ。全体として、この人たちはライブハウスという場所が、こうしてバンドで音を合わせることが大好きでしょうがないんだろうなあと感じさせられた場面が多かった。

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