TAEYOが『ORANGE』で表現した“ありのままの自分” ラップ、サウンド、仲間……5つのエレメンツからの影響も語る

TAEYOが『ORANGE』で表現した“ありのままの自分” ラップ、サウンド、仲間……5つのエレメンツからの影響も語る

 2015年頃からラップを本格的に始め、2018年にリリースした「Fault」がバイラルヒット。甘さと哀愁が交差する歌声とメロディックなフロウ、さらにモデルもこなす爽やかな風貌で人気を高め、昨年出した1stアルバム『HOWL OF YOUNGTIMZ』でブレイク必至の次世代筆頭格へと躍り出たTaeyoung Boyが、TAEYO(タイヨウ)と名前を改め、ついにメジャーデビューを果たした。

 新天地に飛び出す決意をにじませたメジャーデビューEP『ORANGE』には、BACHLOGIC、Chaki Zulu、そして向井太一などの作品を手掛けるCELSIOR COUPEがプロデュースで参加。リード曲「Let me down」はトロピカル風味全開のポップチューンで、新機軸を打ち出す意欲作となっている。制作中に悩んで凹んだ時期もあったというEPを彼はどのような思いで作りあげたのか。後半では「TAEYOをつくる5つのエレメンツ」というテーマ取材も行い、彼の趣味嗜好も探ってみた。(猪又孝)

メジャーデビューを前に初めて経験した挫折

ーーメジャーデビューして気持ちに変化はありますか?

TAEYO:だいぶありますね。「Let me down」を作ってる頃から変わってきました。これまではノリで突っ走ってきた感じだったんですけど、よりリスナーのことを意識するようになりました。

ーーリスナーに何かを伝えようという意識が働くようになったということですか? それともリスナー受けを考えるようになったとか?

TAEYO:伝えるという方ですね。ヒップホップだから、フロウが格好良いとか、ライミングがしっかりしているとか、そういう側面もあるけど、それはやろうと思えばいくらでもできるから、いったんいいかなって。セルアウトみたいなことじゃなくて、単純に聞いてくれる人の数を増やしたいから、伝わる人を増やさないといけないし、そういう意味で「伝える」ことを意識しようと。

ーーメジャーデビューにあたり、TAEYOに改名した意図は?

TAEYO:Boyを取るというのは、去年、アルバム『HOWL OF YOUNGTIMZ』を出した後くらいから思っていて。それでインディーズの最後に出したEPは『THE BOY IS』というBoy推しのタイトルにして伏線を張ったんです。ただ、Taeyoungという表記がある事情で使えなくて。そこで出てきた「TAEYO」と書いて「タイヨウ」と呼ぶアイデアがしっくりきたんです。本名がタイヨウだし、まいっかと思って。

ーーTaeyoung Boyのラスト作品としてリリースした「NAMINOUE」は、どのような思いで書いた曲なんですか?

TAEYO:本当はメジャーに進んでから出そうと思っていた曲なんです。でも、そのプランが変わってインディーズ最後になったんですけど。シンプルに言うと、Taeyoung Boyっぽさを出したというか。それこそ聞いてくれている人を少し意識して、みんなが好きなTaeyoung Boyじゃないけど、Taeyoung Boyっぽさはめちゃくちゃ出てると思ってます。

ーーその“Taeyoung Boyっぽさ”とは?

TAEYO:軽快さというか、いい意味でライトな感じ。あと、フックのメロディラインは客観的にすげえ俺っぽいと思います。でも、リリックでは〈ここまで来る中で俺 周りと違ってもそれでいいかな〉とか、次に進む感じも少し出していて。ライトな決意表明ですね(笑)。

ーー「NAMINOUE」というタイトルもTayoung Boyっぽいと思いました。「Let me down」にも〈燃える炎じゃない 揺れる波でいたい〉と出てきますが、流れに身を任せたい、というようなスタンスが基本にあるんですか?

TAEYO:そうですね。ギラギラしてるというより、波っぽい感じ。WAVYに行きたいなって。本名のタイヨウは「太洋」と書くんです。

ーーTayoung Boyのテヤンは太陽という意味の韓国語から来ているということだったので、てっきり「太陽」と書くのかと思っていました。

TAEYO:違うんですよ。太平洋にちなんでるし、単純に海が好きだし、波っていうワードも好きなんです。常にそういうスタンスでいたいですね。サーファーがよく言うけど、アップダウンはあるけどそれに従って流れるままに、っていうのが好きです。

Taeyoung Boy – NAMINOUE (Prod. BACHLOGIC)

ーーEP『ORANGE』のリード曲「Let me down」は、どのように作り始めたんですか?

TAEYO:もともとは「NAMINOUE」をEPの推し曲にしようと考えていたんですけど、チームで話していく中でプランを変更することになって、その代わりとして作り始めた曲でした。もっとフックになるような曲を急いでゼロから作ったんです。だったら信頼できるプロデューサーさんと作りたいということでChaki Zuluさんにお願いして作り始めたんですけど、そのときはめちゃくちゃ落ちて凹みまくったんです。そもそもなんでこの曲を作らなきゃいけないんだ? みたいな感情も沸いてきて。

ーー「NAMINOUE」があるのに! みたいな。

TAEYO:そう。最終的に自分で決めたこととはいえ、チームの意向として、そういうプランになっていって、これって俺の意思なのかな? とか、なんで俺ってメジャーデビューするんだっけ? みたいなところから考え始めたらめちゃめちゃ落ち込んで。

ーーインディーズの頃は思いのままに作って、自分のペースでやってたから。

TAEYO:そうなんですよ。今までそういうことを言われたことはなかったし、歌詞について言われることもなかったし。

ーーメジャーの洗礼ってヤツですね。

TAEYO:それは本当、みんなに言われました。ただ、音楽のことで落ち込むなんて人生で一度もなかったんです。それこそWAVYな感じでやってきたので。めちゃくちゃ落ち込んで迷走した時点で「Let me down」のトラックはChakiさんが8割くらい作ってくれてたんですけど、Chakiさんも「それだったら、やらないほうがいいんじゃないか」って言ってくれて。

ーーいったん制作を止めようと。

TAEYO:で、少し時間を置いてから、またChakiさんと話したんです。腹を割って、泣くくらいの感じで話して。それをきっかけに「心を入れ替えて、またチャレンジしよう」という気持ちになったし、そこでChakiさんから、落ち込んだ状況を逆に明るい曲調に乗せて歌うのはどうかっていうアドバイスをもらって。だからヴァースには当時の心境がそのまま出てるんです。

ーー歌い出しから〈I don’t know why 分からない/視界淀んで 深く沈んで〉と迷いを吐露してますからね。ただ、思うようにいかない恋愛を歌っているようにも解釈できる歌詞になっています。

TAEYO:Chakiさんからは恋愛をテーマにするのもいいんじゃないかと言われたんです。だけど、俺が恋愛をやるとクサくなって、逆に格好良く見えないので、そうとも聞こえるような言葉をフックとかに入れて。でも、実は“落ち込んでた俺”っていう曲です(笑)。

「Let me down」

BACHLOGIC、CELSIOR COUPE…共同作業で作り上げた楽曲たち

ーーEP『ORANGE』は、どのような作品をめざしたんですか?

TAEYO:最初は全部BACHLOGICさんのトラックで作ろうと思ってたんです。「NAMINOUE」も入っていて、その時点で「Intro」と「Alright」があって。「Intro」は朝焼けが浮かぶ曲だし、「Alright」は映画のエンドロールで流れる曲っていうイメージで作っていて。そこから夏をテーマにしたEPにして、夏のいろんな時間帯、場面を切り取ろうというコンセプトで作り始めたんです。

ーー結果的には、朝焼けから始まって夕方→夜→再び朝日というような、時間の流れに沿った構成になってますよね。

TAEYO:そうなんです。結果的には自然とそのテーマにフィットするように作れたかなと。「Let me down」でめちゃめちゃ悩んでるときに、もうノリで曲をつくりたいと思って、スタジオの人に曲をつくらせてくださいってお願いしたんです。そのスタジオのエンジニアがCELSIOR COUPE。彼は俺の「GIRL」とか初期からずっとやってくれているから、俺のことをいちばん側で見ている人で、そのとき彼が持っていたトラックで作ったのが「All I have」なんです。それを聞いたチームの人間が「これ、いいね」となってEPに入れることになって。そこからピースをはめるように作っていって、最後に「ORANGE」を書いたときにピースがハマったなという感じでした。

ーー「Intro」は、むせび泣くようなサックスから超シブく始まるのが印象的でした。

TAEYO:俺も最初にこのトラックを聞いたときクラっちゃって。EPをつくる話が出たときに、まずBACHLOGICさんが会社に来てくれて、デモトラックを20~30個聞かせてくれたんです。「Intro」のトラックはそのうちの1個で、あのサックスも入った状態であって。そのときから「これは絶対、EPの1曲目にしたいです」って言ってたんです。

ーー都会の朝が浮かぶ音ですよね。夜中3時じゃなくて、朝3時って言いたい感じの音。

TAEYO:マジでその感じですね。ここから始まるっていう雰囲気が出てる。だから、その音からインスピレーションをもらってリリックを書きました。

ーージャズの香りが漂うメロウなトラックですが、ラップはスピーディーにスピットしています。

TAEYO:トラックを聞いたときにケンドリック・ラマーが浮かんで、ガツガツラップしたいなと思って。でも、作り始めたら意外と抜き差ししても面白いなと思って、後半は少しメロディックな展開にしたんです。

ーー後半のラップは声が太くて、曲が進むにつれてアグレッシブさが増していきますが、これまであまりやっていないラップスタイルだなと思いました。

TAEYO:1曲目だからこそ、これまでと違う感じ、こういう俺を出しておきたかったというのはありますね。あと、声の出し方とかレコーディングの仕方が今回のEPからめっちゃ変わったんです。今まではノリで全部録っていて、そんなにテイクを重ねることはなかったんです。でも、今回はめちゃくちゃ録り直していて。1曲に対する思いが強かったのもあるし、コンセプトもしっかりしていたから、それに合わせてフロウの仕方とか声の出し方、重ね方やガヤまで、こだわってつくりました。

「Intro」

ーーCELSIOR COUPEによる「All I have」と「Calm」は、生演奏感の強いトラックですね。特に「Calm」はアコギ1本で、ドラムも入ってない。

TAEYO:「All I have」はもともとトラックがあって、あとからベースを生演奏で弾いてもらって入れました。「Calm」は、ジャスティン・ビーバーの「Changes」を聞いてアコギ1本で行くのもいいなと思っていて。もともとそういう音楽も好きなので、狙ったというよりは、自然とそういうものをやりたくなった。EPにそういうテイストが入っていたら1個ポイントになるし、こういう曲があるとライブの幅も広がるし。

ーーTAEYOくんはギターが弾けるんですか?

TAEYO:弾けないです(笑)。だから、頑張ろうと思ってます、この1曲のために。

「All I have」
「Calm」

ーー同じくCELSIOR COUPEによるタイトル曲「ORANGE」は、ドラムンベースを基調にしたトラックですね。

TAEYO:2人ともたまたま同じタイミングでThe Weekndの「Hardest To Love」という曲にハマっていて。ああいうノリのヒップホップを作ろうということで、CELSIOR COUPEさんにゼロからトラックを作ってもらって、そこから2人でブラッシュアップして最後まで練り上げました。The Weekndの「Hardest To Love」は古さもあるけど新しいというか。最近、USやUKにはそういう曲が出てきているけど、日本のヒップホップにはまだあまりないと思って、やっちゃおうと考えたんです。

ーーリリックは、沈む太陽と昇る太陽に自分を重ねた内容になっていますね。

TAEYO:最初にフックの〈遠くに沈むオレンジが胸を満たしたら照らすmoonlight〉というフレーズが出てきて、まずは景色が浮かぶ感じで書いてたんですけど、2ヴァース目でバランスを取ってラップをしたくなったんです。そこで、オレンジ=太陽=俺だな、って考えてテーマを変えて書きました。冒頭に話した波じゃないけど、ありのままというか、着飾っていない自分を出した曲ですね。

「ORANGE」
「Alright」

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