韓国大手配信サービス Melon、リアルタイムチャート廃止 ファンによる過剰な“スミン”行為の影響を解説

過剰な“スミン”行為が生む問題

 韓国の大手配信サービス・Melonが、1時間単位で集計するリアルタイムチャートを廃止。集計を24時間に変更する。この背景にはアイドルファンを中心に行われている過剰な“スミン”=ストリーミング行為の影響もあるようだ。そこでK-POPアーティストなどに詳しいDJ泡沫氏に詳しい事情を聞いた。

 そもそも、Melonは韓国でどのような存在なのだろうか。

「Melonはカカオトークなどを提供するカカオが運営しています。二番手の配信サービス・genieもそうなんですが、元々はSKテレコムという日本で言うとドコモやauといった通信キャリアの系列会社と共同運営だったので、スマホを契約した人が安く入れたり、カカオトークの決済を利用すると安くなるセットプランがありました。正価でストリーミングのみならプランによって700円〜1200円位で聴き放題ですが、さらに30〜50%オフサービスなどがあり、スマホを買った時にプランが安かったからそのまま入る、というケースからMelonは加入者が多かったようです。以前は60%くらいシェアがあったのですが、今は他のサービスも増えてきたので40%くらいです。2位のgenieが25%なので、まだMelonが最大手ですね。SpotifyよりはどちらかというとApple Musicに近いと思います。韓国でもSpotifyのようにそれぞれのユーザーの好みに合わせておすすめが出てくるような『FLO』『VIBE』などの音楽サービスが出てきました。Melonもリアルタイムチャートを廃止するのに加えて、そういったサービスを取り入れていくようです」

 Melonがリアルタイムチャート廃止に踏み切った理由の一つである“スミン”はどのような行為なのか、そしてそれによってチャートはどのような影響を受けるのだろうか。

「“スミン”は、ストリーミング数を上げたい曲を再生し続ける行為です。同じ曲を何曲も入れたプレイリストを作って家でも外でも24時間再生しっぱなしにしたりする。PCとスマホ、両方持っている人も多いので、いくつかのデバイスで再生するというのが一般的なようです。24時間リアルタイムチャートは1時間ごとに更新されるので、昼間、多くの人が起きている時間帯はアイドル以外のリスナーも曲を聴くためにアイドルの曲の順位は下がりがちです。以前は多くの人が寝ている夜10時ごろから朝8時くらいまでの時間帯もリアルタイムチャートが出ていましたから、その時間帯にスミンすれば1位を取りやすいんです。自分たちも寝ていますが、その時間帯に積極的に空回しすることで順位が上がる、深夜だけど“1位”が取れるという考え方ですね。Melonでチャートの推移を示したグラフが見られるのですが、アイドル以外の曲は昼間上がって夜下がる、スミンされている曲は逆で昼間は平坦で、夜になると上がる。だから以前から、ファンがスミンしているからこういうグラフになるとか、スミンされている割合が多い曲なのかどうかというのはある程度知られていました。ファンとしてはとにかく“チャート1位”という冠が欲しいんです。でもそれでは必ずしも本当に聴かれている曲ではない、ということで前々からリアルタイムチャートをなくしてほしいという一般ユーザーからの声はありました。

 日本ではオリコンやビルボードで年間チャートが出ていますが、韓国だとスミンによってそういう記録が乱されてしまう。もちろん、たくさんファンがついているアイドルも記録されるべきですが、それはアルバムチャートなどでもわかることです。音源ポータルにとってはたくさん聴かれることは重要なので、リアルタイムチャートをなくすとアイドルファンの利用が減ってしまうかもしれない。そこで苦肉の策として、2018年の7月11日以降深夜1時から朝7時まではリアルタイムチャートを出さないと決まったんです」

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