草なぎ剛とユースケ・サンタマリア、自由奔放な2人が『なぎスケ!』で生み出す“許し笑い合える空間”

 「『ぷっ』すま」スタート時には草なぎが20代、ユースケ・サンタマリアが30代だった。それが、今では2人とも40代後半に。最前線で活躍し続ける彼らにはずっと若いイメージがあるが、大人の男性としての哀愁も漂う年齢だ。加えて、年齢を重ねるごとに彼らの自由奔放っぷりには拍車がかかっていく。

 それでも「『ぷっ』すま」が『なぎスケ!』となってもなお、視聴者から愛されているのは、そこに視聴者との信頼関係があるからに違いない。「若いころのように無理してシャカリキに頑張るのをやめた」というユースケ・サンタマリアは、ますますワガママに。「翌日が休みじゃない日に釣りロケ入れられたら超不機嫌になる」など言いたい放題だ。それを、真正面から「知らないよ、そんなことは! そうやってみんな仕事してんだよ」と草なぎが一括し笑いを誘う。

 また、外出自粛生活が続いたことで、ゲームにすっかりハマり、収録日の集合時間に遅刻したというユースケ・サンタマリア。「今日『なぎスケ!』あるって知ってるわけでしょう? それダメだね! 遅刻ですよ!」と草なぎは注意しつつも、「まぁいいわ。すごい! 逆にちょっと尊敬しました」と笑ってしまうことで、ユースケ・サンタマリアの失態も笑いに変えてしまうのだ。

 最近では、愛犬クルミちゃんの子犬が生まれたことで、命を育てることに真正面からぶつかった草なぎ。死なせてしまうのではないかというほど、切羽詰まっていた時期があったことも、今ここだから話せるような素振りだった。

 おそらく、このやりとりは見る人によって様々な切り取られ方をされる可能性があると思った。ユースケ・サンタマリアの発言に「けしからん」という人もいるかもしれない。草なぎのツッコミに「それは無責任だ!」と怒る人もいるかもしれない。だが、そんな一部分の発言を抜き取って誹謗中傷する流れに、そろそろ疲れてきてはいないだろうか。

 多くの人のもとに一斉に届くテレビに対して、視聴者と番組との信頼関係がより深いのが、ネット配信のバラエティの特徴。視聴者は、むしろユースケ・サンタマリアのぼやきも、草なぎ剛の対応も、許し笑い合える空間を求めて自らアクセスしているのだ。そのコミュニケーションに至るまでの時間があり、愛があるという前提を踏まえてやり取りを見守っているのだということ。

 「いかがなものか」という声が上げやすくなった一方で、ささくれた気持ちにもなりやすい現代。もちろん誰も傷つけないコンテンツを作るという意識は大前提として目指さなければならないものだが、一方ですべての人に好かれるのは難しい。だからこそ、「これをわかってくれる人とだけ繋がりたい」という空間があってもよいのではないか。

 ユースケ・サンタマリアが、草なぎと東幹久に向けてポロっとこんな風に言っていた。「厳しい世の中だから。足掻きながら、頑張りましょう」と。正解が一つに限定できない世の中で、こうした気を緩めることができるユートピアが、ちゃっかりと存在し続けてほしいと願うばかりだ。

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