King Gnuが「The hole」で見せた、今を生きるバンドとしての覚悟 渾身の『Mステ』パフォーマンスから感じたこと

 King Gnuが6月19日放送の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に出演し、「The hole」のスタジオパフォーマンスを披露した。

King Gnu『Sympa』

 King Gnuと言えば先日、最新アルバム『CEREMONY』がBillboard JAPAN「2020年上半期JAPAN HOT Albums」で首位を獲得したというニュースが出たばかり。また、この日の『Mステ』の特集は「サブスク楽曲再生数ランキング」で、大ヒットナンバー「白日」もランクインしていた。もしかすると今回の出演では、最新アルバムの楽曲か「白日」をパフォーマンスする話も出ていたかもしれない。でも彼らは、あえて2019年にリリースされた2ndアルバム『Sympa』収録のバラード「The hole」を選んだのである。もちろん、確固たる意志を持って。

 今回の出演が発表された際、メンバーの常田大希はSNSでこう呟いていた。「迷いや混乱に満ちた情勢の中,日々SNSなどでも攻撃的な発言が目につく今一体何を歌うべきかと考えた結果,一番優しくて強い歌を届ける事を選びました」――迷いや混乱に満ちた情勢、それがどういうことなのかはわざわざ説明するまでもない。それぞれ程度は違えども、誰もがコロナ禍の影響で生活や健康、経済的な問題などに直面し、不安を抱えている。音楽業界も大打撃を受け、King Gnuが今年2月から開催予定だった全国ツアーも延期、並びに振替公演も全て開催見合わせとなった。

 加えて最近特に悪目立ちしているのが、SNSでの誹謗中傷やネットリテラシーに関する問題だ。炎上やトラブルは日常茶飯事で、それは悲しいニュースや事件に繋がってしまうこともある。いつだって「良い世の中だ」なんて簡単に言えるものではないけれど、間違いなく今は大勢の人が心苦しさを感じている時代だと思う。

 そんな世の中にバンドとして何を伝えられるのか、どう届けていくべきか。その自問への答えを、彼らは地上波のテレビで「The hole」のパフォーマンスという形にした。スタジオにはいつも以上にヒリヒリとした緊張感が漂い、一音一音に魂を込めて奏でる常田のピアノからは、怖いくらいの気迫が感じられた。音符ではなく誰かの心をそっとなぞっていくように繊細な井口理の歌声、新井和輝、勢喜遊が奏でる、優しくも胸に突き刺さる演奏はまさに「渾身」という言葉がピッタリ当てはまるほどの衝撃的な熱演で、Twitterでは放送直後から「King Gnu」「The hole」というワードがトレンドになり、大きな反響を呼んだ。

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