氷川きよしが音楽で見せた人生一度限りの劇的瞬間 初のポップスアルバム『Papillon(パピヨン)-ボヘミアン・ラプソディ-』を聴いて

氷川きよし、音楽で見せた劇的瞬間

   『第70回NHK紅白歌合戦』での強烈なパフォーマンスが話題を呼んだ、『ドラゴンボール超』主題歌「限界突破×サバイバー」。氷川きよしが幼少期に表現したかった(※3)世界観、〈限界突破〉したその先へと突き進みます。

氷川きよし / 限界突破×サバイバー ~「氷川きよし デビュー20周年記念コンサート~龍翔鳳舞~in日本武道館」より【公式】

 「碧し」はGReeeeN、「おもひぞら」は水野良樹氏(いきものがかり)を作詞作曲に迎え、J-POPの名手とタッグを組んだ、氷川きよしの音楽的挑戦が見られます。シンプルさが胸に響くミドルテンポ曲「碧し」はデビュー記念日〈2月2日〉から歌詞が始まり、自身の素直さと、真面目で実直な姿そのままに、感動的な展開とコーラス。出会いと別れ、汗と涙、様々な経験を得て成長してゆく、少年漫画的世界観。「おもひぞら」は、ポップスと演歌の要素を融合した意欲的な作品。郷愁と親子の情、日本的な叙情性あふれる音色に、歌手を目指して故郷を離れ上京した氷川きよしの心情が映されています。

氷川きよし / おもひぞら【公式】

    多様性に満ちたアルバムの中でも、異色のR&Bグルーヴを放つのは「Never give up」。プライベートで親交があり、気心の知れた(ファンクラブ限定CD『KIYOSHIカバーコレクション』収録「悲しい色やね」でもお馴染み)上田正樹氏のソウルフルな作編曲とラップ(!)に乗せた、氷川きよし初の作詞曲。〈何時も孤独で周囲(ひと)と違うから 誰かにわかってほしいけど誰もわからない〉、そこからの〈過去で縛らない〉〈ありのままに行こう〉〈運命を変えよう〉。胸の奥底から溢れ出た言葉。氷川きよしらしく生きる、生々しく熱い決意が表れています。

 そして、燦然と輝く金字塔「ボヘミアン・ラプソディー」。新たな世界への扉を開くきっかけとなった曲で、物語は締めくくられます。フレディ・マーキュリーの思いに強く共感し、その魂をカバーするため、日本語で歌うことに拘りました。「英語は苦手なんです」と笑いつつ、人生でずっと使ってきた言語でしか表せない、繊細な心の機微が込められた渾身の一曲。湯川れい子氏による、言葉たちが踊り出すミュージカル口調、独特のグルーヴ感にゾクゾクさせられる、氷川きよしにしか表現できない世界。

 同名映画で描かれた、スターがスターであるが故の様々な葛藤や絶望、孤独。光が強ければ強いほど濃くなる影。しかし、その全てを音楽に還元し、この世界に生きる多くの人の苦しみを救う偉業もまた、スターにしか成し得ないのではないでしょうか。

氷川きよし / ボヘミアン・ラプソディ~「氷川きよし・スペシャルコンサート2019 きよしこの夜Vol.19」より【公式】

 「変化(へんげ)恐れぬ蛹(ピューパ)」は、今「Papillon(蝶)」へ。生きていくことは、変わってゆくこと。人生一度限りの劇的瞬間を、私たちに見せてくれました。

<参考元>
※1:週刊女性PRIMEインタビュー※2:全日本歌謡センター
※2:全日本歌謡センター
※3 :リアルサウンド(本人コメント)
※4 :大槻ケンヂのザ・対談 猫対犬(ソニーマガジンズ刊)
※5:エレクトリックダンスミュージック

■松村早希子
1982年東京生まれ東京育ち。この世のすべての美女が大好き。

(絵=松村早希子)

■リリース情報
『Papillon(パピヨン) - ボヘミアン・ラプソディ-』
6月9日(水)リリース
Aタイプ
初回完全限定 スペシャル盤17cm紙ジャケット仕様
CD+DVD:¥3,545+税
※豪華歌詩ブックレットステッカー封入(Aタイプ絵柄)

Bタイプ 通常盤(CDのみ): ¥2,909+税
※豪華歌詩 ブックレット ステッカー封入 B タイプ絵柄

■関連リンク
日本コロムビア公式ホームページ

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