TWICE、『MORE & MORE』ヒットに繋げた2つのコンセプト 多彩な楽曲と変わらぬ“らしさ”もポイントに
本作はリードトラック以外にも押さえておきたいナンバーが多い。初めてラテンに挑戦したという「FIREWORK」は、サビでの切ない歌声が新鮮に響く。ナヨンが作詞したダンスナンバー「MAKE ME GO」では、クールなラップとメロウなボーカルが混じり合う様がスリリングだ。「SHADOW」はトロピカルハウスと80年代のシンセポップをベースにしつつも、メロディラインはしっとりとしているのが面白いところ。また、「DON’T CALL ME AGAIN」ではレトロソウルを、「SWEET SUMMER DAY」ではニュージャックスウィングを取り入れるなど、音楽的な幅を広げようとする意志が感じられる曲が目立つのも印象的だ。
このように多彩な楽曲を詰め込んだ『MORE & MORE』だが、1枚を通して聴いてみると意外にもTWICE本来の魅力は薄れていないことに気付く。それは制作サイドも意識したらしく、サウンドメイクは新しくても、デビュー以来変わらない“TWICEらしさ”を随所に散りばめる工夫を忘れない。これは日本における活動でも同様で、昨年11月に日本で発表した『&TWICE』もあらためて聴いてみると『MORE & MORE』と方向性が似ていることがわかるだろう。
新作『MORE & MORE』に関しては、他にも注目すべきことがあった。前述した『TWICE “MORE & MORE” SPECIAL LIVE』はアルバム制作に関するトークがメインだったが、今まで以上に仲の良さを感じさせる場面が多かったように思う。それは十分な休息を取ったからなのか、もしくは思うように活動できないことがむしろ結束力の向上につながったのかーー。本当のところはわからないが、現時点でグループの状態がベストであることは間違いない。
■まつもとたくお
音楽ライター。ニックネームはK-POP番長。2000年に執筆活動を開始。『ミュージック・マガジン』など専門誌を中心に寄稿。『ジャズ批評』『韓流ぴあ』で連載中。ムック『GIRLS K-POP』(シンコー・ミュージック)を監修。K-POP関連の著書・共著も多数あり。