吉田山田の「もやし」なぜ話題に? 心に沁み入る人生賛歌に共感の声

吉田山田の「もやし」なぜ話題に?

 吉田結威(よしだゆい)と山田義孝(やまだよしたか)からなる男性2人組ユニット、吉田山田。彼らが2018年に発表した「もやし」が、じわじわと支持を広げている。もともとは6枚目のアルバム『欲望』に収められたナンバーで、ファンの間でも隠れた名曲として人気の高かった同曲。再び脚光を集めているきっかけとなったのは「歌ってみた」系の動画で知られる歌い手グループ・浦島坂田船のひとり、となりの坂田。(あほの坂田。)のTwitterだった。シンプルに「吉田山田のもやし。おススメです」とツイートしたところ、食材と勘違いした人、吉田山田の楽曲と知っていた人、双方のリプライが活発化。16000件以上の“いいね”を獲得した。そして、6月27日放送のレギュラー番組『吉田山田のドレミファイル♪』(tvk)でついに初パフォーマンスを披露し、今さらなる話題を集めている。

 一度聴くだけで聴き手を虜にする「もやし」とは、一体どんな楽曲なのだろうか。

 タイトルだけ見ると、どこかコミカルな楽曲にも思える「もやし」。しかし歌詞を耳にすると、その印象は覆される。なにせ冒頭から〈もう やだ しにたい〉という、およそポップソングには似つかわしくない衝撃的な言葉が並ぶからだ。しかしその後、〈その言葉の頭文字をとると もやし〉と続き、タイトルに隠された真の意味に気づく。またAメロの繰り返しでは〈もう やばい しあわせ その言葉の頭文字とっても もやし〉と、同じ“もやし”に正反対の意味があることも明かされる。絶望を表す“もやし”と喜びに満ちあふれた“もやし”。ふたつは表裏一体であり、それを繰り返すことが人生だ、と楽曲は宣言する。伴奏も栗コーダーカルテットが編曲や演奏を担当し、童謡のような牧歌的な香りが漂う音作り。それも、ヘビーな歌詞を身構えることなく素直に聴くことができる理由だろう。なんとも吉田山田らしい、ストレートでポジティブな人生賛歌だ。

 楽曲が盛り上がるにつれ、USENなどで初めて耳にしたという人たちも増加。「有線で歌のおにいさん風の声で“もう やだ 死にたい の頭文字をとると もやし”“人生はもやしの繰り返し”等もやしについて歌っている曲が流れてきてめちゃくちゃ気になる」「吉田山田のもやしって歌が頭を離れない……」など、タイトルの意外性はもちろん、技ありな歌詞にハマる人が多い印象だ。メンバーの吉田は昨年のツアー中のインタビューで「「もやし」はタイトルを言ったときに笑い出すお客さんもいるんですけど、山田の「もう やだ しにたい」の歌い出しで場内がシーンとなるんですよ。歌の最後には涙を流している人もいましたし、いろいろ説明せずに曲だけで人の感情を揺さぶる山田らしい曲になったなって実感がありますね」(参照:音楽ナタリー)と語っているが、一聴して心をつかむ楽曲が誰にでも生み出せるかといえば、そうではないだろう。吉田山田だからこそ歌える歌、伝わる詞というのをブレずに追求し続けた結果が、「もやし」にも活かされているように思う。

 思えば、彼らの代表曲「日々」も、『みんなのうた』で放映が開始されると同時に少しずつ拡散し、大ヒットにつながった。そこで描かれていたのは老夫婦が歩んできた結婚生活についてのさまざまな情景。聴くだけでシーンが浮かんでくる、物語性の強い楽曲はこのころからすでに吉田山田の真骨頂だったことがわかる。優しいメロディとシンプルながら胸を打つ歌詞は、いつも聴く者のくじけた心に寄り添い、励まし、奮い立たせてくれる。「もやし」の広がりで改めて、彼らがメッセージソングの旗手であることに気づかされた。

吉田山田 /もやし [MUSIC VIDEO]

 昨年、デビュー10周年を迎えた吉田山田。節目のアニバーサリーイヤーを経て、吉田は「11年目からはちょっと自分たちのキャラクターが変わると思います。肩の力をもうちょっと抜いた感じで、次はどこにでもいけるよねって感覚がある」とコメント。山田も「ふたりでやるのってすごく大変だけど、結果いいものになるんです。“ふたりを諦めない”ってことが僕らが出した答えのすべてのような気がしている」と語り、ユニットとしての絆はより強固になった印象を受ける。新たな地平を目指し、吉田山田の旅は続いていく。

■渡部あきこ
編集者/フリーライター。映画、アニメ、漫画、ゲーム、音楽などカルチャー全般から旅、日本酒、伝統文化まで幅広く執筆。福島県在住。

■番組情報
『吉田山田のドレミファイル♪』tvk(テレビ神奈川)
オンエア:毎週土曜日22:00~22:30
メインMC:吉田山田
コーナー進行:麻生夏子
番組HP

■リリース情報
吉田山田ベストアルバム『吉田山田大百科』
2020年4月8日(水)発売
【デラックス盤】税抜3,900円
【ボーナストラック盤】税抜2,500円

【デラックス盤】CD+Blu-ray
▶︎CD:吉田山田大百科(新曲1曲含む全15曲収録)
01. ガムシャランナー
02. 花鳥風月
03. 約束のマーチ
04. 魔法のような
05. 日々
06. 僕らのためのストーリー
07. 未来
08. 母のうた
09. RAIN
10. YES!!!
11. 宝物
12. Color
13. もやし
14. 赤い首輪
15. いくつになっても(新曲)

▶︎Blu-ray:吉田山田デビュー10周年ドキュメンタリー tvk『吉田山田、十年十色』ディレクターズカット
※2019年12月28日にオンエアされたtvk『吉田山田、十年十色』を再編集し、未公開映像もふんだんに盛り込んだロングバージョン
▶︎封入特典:スペシャル特典券

【ボーナストラック盤】CD only
▶︎CD:吉田山田大百科(新曲2曲含む全16曲収録)
01. ガムシャランナー
02. 花鳥風月
03. 約束のマーチ
04. 魔法のような
05. 日々
06. 僕らのためのストーリー
07. 未来
08. 母のうた
09. RAIN
10. YES!!!
11. 宝物
12. Color
13. もやし
14. 赤い首輪
15. いくつになっても (新曲)
16. 微熱 (新曲) ※ボーナストラック盤のみ収録
▶︎初回封入特典:スペシャル特典券

■YouTube番組
「吉田山田のパッとでなふたり」

■関連リンク
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吉田山田 Official Facebook
吉田山田 Official Twitter
山田義孝 Twitter
吉田山田 Official Blog
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