ポーター・ロビンソン、マデオン、長谷川白紙らが共演 『Secret Sky Music Festival』が示した新しいフェスの在り方

 いよいよフェスティバルも終盤に差し掛かり、満を持して登場した、今回の主催者であるポーター・ロビンソンによるパフォーマンス。どのパフォーマンスも素晴らしく、なにより彼自身がフェスティバルが始まってから常にSNSとYouTube上で各アーティストのパフォーマンスに興奮する様子を投稿していたのだが、いざ本人のパフォーマンスが始まると改めてその世界観に圧倒される。最初から「Sad Machine」を投下し、さらにアニメ『ちょびっツ』のOP曲「Let Me Be With You」から自身の楽曲で特にエモーショナルな「Easy」へ繋いだり、Anamanaguchiのリミックスによりハードコア化した「Get Your Wish」からマデオンとのコラボ曲「SHELTER」へ繋ぐ、といったエモーショナルにもほどがある驚きの展開の連続に、SNSやコメント欄は言葉にならない絶叫で溢れ、この日最大の盛り上がりを見せた。

 実は彼のステージセットは、DJ機材とプロジェクターとカメラ一台のみという、今回の出演者の中でも最もシンプルなつくりだったのだが、DJセットの情報量が非常に多く、見る側の頭の中に強く映像を想起させるため、一切の物足りなさを感じさせない。最後には新曲の「Look At The Sky」が初めてプレイされ、今回のフェスティバルに協力してくれた観客とアーティストへ感謝の言葉を贈りながら、彼はステージを去っていった。

Porter Robinson - Secret Sky Set (2020)

 コロナ禍の状況下、一人ひとりが部屋=“SHELTER”の中からインターネットを通じて繋がる現代において、SNSやYouTubeによるコミュニケーションだけではなく、画面の向こう側であることを生かし、リアルとバーチャルの垣根をなくした『Secret Sky Music Festival』は、理想的かつ新たなフェスティバルの在り方だと言えるだろう。規模で言えば、前述した『フォートナイト』などの取り組みの方がはるかに大きいかもしれないが、各アーティストが自分の枠の中でクリエイティブを発揮した今回の試みもまた、実に数多くのクリエイターへ刺激を与えたはずである。バーチャル空間での表現に大きな影響を受けてきたポーター・ロビンソンだからこそ実現できた、とても価値のある体験であった。なにより、長時間に渡って盛り上がり続けていたコメント欄こそが、その意味を証明している。

 とはいえ、このイベントを最も楽しんでいたのは、自身の手掛けるイベントの大トリを奇才Lil TexasによるBPM200を超えるかというカオス極まりない超ハードコアセットに任せ、YouTubeのコメント欄に「FASTER(もっと速く)」と大量に投稿して画面を埋め尽くしていたポーター・ロビンソン本人であることに疑いはない。このカオスもまた、彼が抱える魅力である。

■ノイ村
92年生まれ。普段は一般企業に務めつつ、主に海外のポップ/ダンスミュージックについてnoteやSNSで発信中。
シーン全体を俯瞰する視点などが評価され、2019年よりライターとしての活動を開始
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Twitter : @neu_mura

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