GLAY TAKURO、数々の名曲を生み出したサウンド傾向は? VTuber 燦鳥ノム楽曲提供を機に分析
燦鳥ノム×TAKUROが繋げた仮想世界と現実世界
では、今回の燦鳥ノムへの楽曲提供では、どのような化学反応を引き起こしたのだろうか。
燦鳥ノムは、サントリーの公式VTuber。清涼飲料を具現化したような清楚なお嬢様キャラ。凛とした力強さと透明感の両方が備わった稀有な歌声が魅力で、Official髭男dismの「Pretender」といった大人っぽいラブバラードも、アップテンポなボカロ曲も、難なく歌いこなしてしまう。
そんな彼女にTAKUROが提供した「僕たちはまだ世界を知らない」は、初夏にぴったりな爽やかな曲。サビの繊細な鍵盤の音と、胸に沁みるような歌メロ。愛や人生といった壮大なテーマを、厳しくも優しい言葉で綴った歌詞。どちらもTAKUROがこれまで生み出してきた名曲たちに通じるエッセンスを感じさせ、燦鳥ノムの可憐な歌声との相性も抜群に良かった。
燦鳥ノムのオリジナル曲は、今回が3曲目。これまでにも「カゲロウプロジェクト」のじんや、LiSAやでんぱ組.incの作曲も手掛けるTom-H@ckなど、著名なクリエイターたちが彼女に楽曲を提供している。彼女のオリジナル曲は、楽曲や歌唱力ももちろん素晴らしいのだが、ミュージックビデオもクオリティが高いと評判だ。リリックビデオとミュージックビデオを兼ね備えたような映像は、ゆらめく幻想的な水面や、ポップなアニメーションなど、実写では表現できない近未来的な演出が施されている。
しかし、「僕たちはまだ世界を知らない」のミュージックビデオは、これまでの傾向とは全く異なる現実世界に近いシーンばかりだ。横断歩道や高層ビル、公園、お寺など、私たちの身近な場所で燦鳥ノムが歌っている。そして、どの場所でも必ず晴れた青空が映っている。だからその空は、もしかしたら私たちが見上げた空と繋がっているのかもしれない。そんな風に感じさせられ、彼女の存在をより身近に、そして現実的に感じられる作品になっていたのだ。楽曲のもつイメージをこのミュージックビデオで映像化したと考えるならば、TAKUROのサウンドが、燦鳥ノムを現実世界とより近づける役割を担ったと言えるだろう。
今回、VTuberへの楽曲提供という新たな試みで、仮想世界と現実世界を繋げたTAKUROサウンド。GLAYのTAKUROとしての活動を楽しみにするのはもちろん、他のアーティストへの楽曲提供で生まれる新たな化学反応にも期待したい。
■南 明歩
ヴィジュアル系を聴いて育った平成生まれのライター。埼玉県出身。