『国道9号線』インタビュー
JABBA DA FOOTBALL CLUB『国道9号線』インタビュー ヒプマイ楽曲提供やソロ活動を経て突破した“自分像”
自分たちでしか出てこないフレーズを、独りよがりじゃなく表現できている
ーー(笑)。話を「国道9号」に戻します。NOLOVさん以外の3人は、どのようにリリックを作っていったのでしょうか。
ROVIN:さっきも言ったように、千葉出身の僕にとって「国道」といえば16号線なので、前の仕事でもよく使っていた16号線のことを思い浮かべながら(リリックを)考えました。結構、いろんな思い出が詰まっているんですよ。僕は中学生の頃からずっと音楽が好きで、音楽で生きていけたらいいなと思っていたんだけど、そう簡単にはうまくいかない。どうしたらいいのかもよく分からず、「なんでこんなことやってるんだろう」と思いながら、好きな音楽を聴いて車で移動してたんです。そんな燻った時代のことを書こうと思ったら、今の気持ちとそんなに変わってないことに気づいたんです(笑)。確かに、念願どおりデビューも出来て、思い描いた自分よりもさらに先へは行けたけど、そこにはまた「さらに先」が見えていて。
ーー〈何回括りゃいいんだ この腹 時間とか不安とか もうキリねぇし〉というラインは、そういう思いから生まれたのですね。
ROVIN:そうなんです。あと、テクニカルな意味で今回かなり難しいラップに挑戦していますね。リズムの取り方、発音の仕方など誰にも真似できないと思う。「俺にはこれがあるから、ここにいられるんだぞ?」という意味も込めてチャレンジしました。
NOLOV:実際にやってみると分かるんだけど、「よくこんな音の隙間にその言葉入れてるよな」と思うくらいムズイんですよ。太鼓の達人だったら「鬼コース」(笑)。〈ライフイズワンダホー〉や、〈きっと ずっとこんな調子?〉のところとかヤバイ気持ち良さがある。
ASHTRAY:その流れで言うと、俺のラップは至って「普通」ですね……(笑)。
NOLOV:謙遜すんなよ、バシっと言ってやれよ!(笑)
(一同笑)
ASHTRAY:この曲に限らず、俺は結構「起承転結」がちゃんとあるリリックが好きで。〈俺って言う名のパズル どれだけ経ったら完成する?〉というラインでは、自分の中にある「閉塞感」みたいなものを表しつつ、最後の“雨の後はきっと晴れだな”というラインまでどう持っていくか? を考えながら作っていきました。その展開は今回、結構うまくいったと思っていますね。
「国道」に関しては、俺は東京の板橋出身だし車も持ってないので、夜中に国道をぶっ飛ばすこともなかったんですよ。でも、今話したようなモヤッとした「閉塞感」はありましたね。それを“狭い街の空”というところで書いたつもりです。それが俺にとっての「国道」というか。
ーー高いビルが建ち並ぶ、東京の狭い空に閉塞感を投影したと。
ASHTRAY:そうなんです。そんな場所でも、もしかしたら微かに地平線が見えるかもしれないという希望を最後の8小節で表しているんですよね。
BAOBAB MC:僕もASHTRAYと一緒で、板橋の隣の練馬出身なので国道とか馴染みねえし、そもそも免許がねえなと(笑)。で、今の状況や自分の中にある「閉塞感」ってなんだろう? と考えたら、「昨日の方が今日より楽しい」と思ってしまう時じゃないかなと。そこから〈そりゃそうだ振り返りゃ昨日は楽しい じゃ今日はどうだった ってちょっと怪しい〉というラインが出てきたんです。
「昨日は楽しかったな」と思うのって、その時に頑張っていたからだと思うんですよ。それに対して、今は頑張っている最中だから「苦しい」と感じてしまう。そのことに気づいて、そこからリリックを膨らましていきました。〈団地街チャリで飛ばしてたら外は真っ暗〉というところで、自分なりの「国道」を表現したつもりです。
NOLOV:今回、みんなのラップが文句つけようがないくらいカッコよく仕上がったなと思います。結構、俺はダメ出しするほうなんですよ。「お前、これじゃ意味わかんねえよ」「伝わんねえよ」とか。でも今回は、今までの曲の中でもダントツでかっこいいと思った。〈俺って言う名のパズル〉なんてフレーズ出てきます? 俺ムリっすよ、こんなフレーズをカッコよくラップできるのASHTRAYしかいない。ROVINの〈ライフイズワンダホー〉も最高だし。自分たちでしか出てこないフレーズを、独りよがりじゃなく表現できているからめちゃくちゃ満足していますね。
ーーカップリング曲「めでたし めでたし」は、『君の街まで』というツアーのために作った曲だそうですね?
NOLOV:自分たちがインディーズの頃は、音源をリリースするといつも「色んなところ回りたいから各オーガナイザーさん連絡ください」みたいなことを自分たちで発信してたんですけど、メジャーになるとなかなかそういう小回りが効かなくなるんですよね。メジャーだと呼びづらいというか、「お金かかるでしょ?」って思われるみたいで。だったら公募型にして、「連絡くれればどこでも行きますよ」という企画にしちゃえばいいなと。そうしたら、いろんなところから連絡があった。せっかくツアーを回るなら、この感謝の気持ちを楽曲にして、それを持って行きたいと思ったんです。
僕ら6年目に入るけど、基本的に各地方のオーガナイザーさんに呼ばれ、色んなところでライブができたからここまで来られたと思っているんです。本当、音楽やってなかったら札幌にも熊本にも行ってないよなと。自分だけの小さなコミュニティで満足してたら、全国のお客さん、オーガナイザーさんたちと出会ってない。そんなことを思いながら、バオちゃんと家で制作していたら、〈すれ違う 偶然繋いだ MUSIC〉という最初のフックがすぐ浮かびました。
ーー聴く側からすると、自分の友人関係のことを当てはめたくなりますね。いっときはとても仲が良かったのに、些細なことで疎遠になって。でもまた、生きていれば何かのきっかけで仲良くなるかも知れない。そんな希望を持たせてくれる楽曲だなと。
NOLOV:ありがとうございます。そんなふうに受け取ってもらえたらすごく嬉しいです。確かにありますよね。「なんか、こいつ話が合わなくなってきたな」と思っても、何年かして「めっちゃウマが合うわ、やっぱり」って思うこととか。僕は以前マイ・ケミカル・ロマンスやグリーン・デイみたいなパンクが好きで、一時期は「あんな音楽だせえ」とか思っちゃっていた時期もあって(笑)、でもまた最近好きになったんです。そうやってJABBAの曲こと、嫌いになってドープなヒップホップに入っていく人もいるだろうし、でもまたいつか「やっぱJABBAかっこいいよね」って戻ってきてくれるかもしれない。俺らはずっとここでやっているから、いつでも戻ってきてくれていいよ? っていう。
ちなみにこの曲は、ライブではずっとアコースティックセットでやったんですよ。アコギで作った曲なので、俺はカホンを練習して、バオちゃんがギターを弾いて椅子に座って4人並んで。お客さんもすげえ喜んでくれましたね。「あの曲、めっちゃいいですね」ってたくさん言ってもらいました。
ーー今、世界中が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で大変なことになっていますが、最後に今後の展望を聞かせてもらえますか?
NOLOV:このあいだ、コロナのせいで仕事が1週間くらいポコッと空いた時にマジやばいなと思いましたね。「暇すぎるんだけど」と思った時に、仕事のありがたさをすげえ感じました。ただ……こればっかりは仕方ないですよね。正直、実態も分からないし。そういう意味では3.11の時の方がまだ分かりやすかった。目に見えて状況が伝わってきたけど、ウイルスは目に見えないし深刻さもはっきりとは分からない。ちゃんと環境が整っていないと音楽はできないことを思い知らされました。まあ、家でも音楽は聴けるし、漫画も読めるし、動画も観れるけど、フィジカルなことが制限されるのってめっちゃフラストレーション溜まりますよね。とにかく、今は健康第一でいるしかないのかな。
今後の展望としては、各々の活動も充実させたいです。この間もROVIN × Buddyをやったように、そもそも俺らバンドじゃないんだから、どんどんソロやったらよくね? と思うんですよ。JABBAの音楽の骨子は俺とバオちゃんで作っているわけで、それぞれ他にもやりたいことがあるに決まっているし。そう思ったら別々のところで活躍してきて、JABBAに戻ってそのエッセンスを集結させればいいやって。そうやって、常にパワーアップしたJABBAを見せられるようにしていきたいですね。
■リリース情報
JABBA DA FOOTBALL CLUB 『国道9号線』
2020年3月18日(水)発売
初回生産限定盤
¥1,800+税(CD+DVD)
通常盤
¥1,200+税(CD only)
<CD収録内容>
1. 国道9号線
2. めでたし めでたし
3. Have a Good Time Remix feat. ASHTRAY, NOLOV
<DVD収録内容>
特典映像「バオちゃん、この後なんて言う?」
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