嵐 二宮和也の歌声に宿るアーティストに対するリスペクト Mrs. GREEN APPLE「Attitude」カバーを聴いて
嵐・二宮和也がパーソナリティを務めるラジオ番組『BAY STORM』(bayfm)。3月8日のオンエアは、素晴らしい音楽を生み出したアーティストを心から尊敬する二宮のまっすぐな人柄が溢れ出た放送回だった。
同オンエア終盤、普段であれば嵐の楽曲を流す場面で、この日は特別に“ある楽曲”をカバー収録してきたことを明かした二宮。その出来栄えを前情報なしでまずはリスナーに体験してほしかったのだろう。ここでは「本当に大変だった」とだけ告げて、カバー音源をさっそく披露。ピアノ伴奏の放つ爽やかなポップネスと、音楽を通してたくさんの人を救おうとする、歌詞に込められた力強さのコントラストが印象的な楽曲が届けられた。二宮が今回カバーした、5人組ロックバンド・Mrs. GREEN APPLEが歌う「Attitude」である。
Mrs. GREEN APPLEについて少し解説しておこう。同バンドでは、ギターボーカルを務める大森元貴がメジャーデビューを目指す上で、自身の明確なバンド像にマッチするメンバーを集めたという。いわば、大森自身や彼の生み出す楽曲はバンドの“心臓”であり、その意志を音楽によって明確にするのが、メンバーの役割なのだろう。また、今回カバーされた「Attitude」は、彼らが昨年10月に発表したアルバム表題曲。そのラストを飾る〈書き綴られた歌詞は/私のそう、遺言〉などのフレーズが象徴するように、大森を筆頭とする彼らがその活動に対して、まさに“命を懸けている”ことを強く示す楽曲と評しても過言ではない。
そんな彼らの作風は、前述したようなポップネスを放つ明るいメロディの背後に、ポジティブながらもどこか切ない歌詞を隠し持っている。「Attitude」もその例に漏れず、ドラムマシンやボーカルエフェクトを駆使した、アレンジの技巧が映えるトラックが印象的だ。また、二宮も苦戦したという大森のハイトーンボイスも相まり、カバー曲として簡単に真似できる代物ではない。
あわせて、バンドの所信表明をする特別な一曲だからこそ、彼らのファンの間でも少なからず賛否両論となっていたのは仕方のないことだろう。ただ、ひとつだけ確信できたのは、二宮がカバーした際の細かな歌い回しや、オンエア内での発言には、Mrs. GREEN APPLEに向けた彼のリスペクトの感情が大いに存在していたことだ。
カバー音源が披露されて第一に「二宮和也はこんな歌声も出せるのか」という驚きがあった。二宮といえばやはり、嵐で全員曲を歌っているイメージが色濃い。だからこそ、今回のように一人のシンガーとしてマイクを握った際の歌声は、普段とはがらっと印象を変えた弾むような軽やかさがあった。また、彼のリスペクト精神は、カバー時の繊細な歌い回しの機微からも伝わってくる。細かな言葉の発音などを挙げればキリがないのだが、例えば、曲中でも特にリズム感を要求される〈誰かとね 愛し愛されて死にたいの〉の部分は、原曲にアレンジを加えずにそのまま再現していた。