BABYMETAL、光と闇の力を手に入れた“メタル銀河の旅” スペクタクルなステージ繰り広げた幕張2日間を振り返る

BABYMETAL、幕張2daysを振り返る

 『METAL GALAXY WORLD TOUR IN JAPAN EXTRA SHOW LEGEND - METAL GALAXY』と銘打たれたBABYMETALの2020年最初のワンマンライブは、予想のはるか上を行く演出の連続だった。「光と闇」「東と西」……、事前に知らされていた相反するキーワードは、ワールドツアーの“EXTRA SHOW”と位置付けたこの幕張メッセでの2日間が、それぞれ特別なライブになることを暗示していた。しかし、両日のラストで眼前に広がった光景がそうであったように、この2日間には想像を絶する壮大さがあった。白装束の神バンド4人に加え、黒装束の神バンド4人、SU-METALとMOAMETAL、さらにアベンジャーズ3名を交えた総勢13名揃い踏みのステージは、BABYMETAL史上最大のサプライズであり、この場で起こった奇跡とこれまでの軌跡を表しているようでもあった。豪奢で品格を放ち、今や世界が羨むほどのモンスターグループとなったBABYMETALに相応しいスペクタクルな“メタル銀河の旅”だった。

(Photo by Taku Fuji)

 1月25日、1日目は“Light Force=光の力”をテーマとしたものであり、まず度肝を抜いたのはステージ後方の超巨大なスクリーンである。会場を横長に構えたステージが全体を覆うかのようにそびえ立っている。そこに映し出される宇宙が幕張メッセ国際展示場ホール全体を異空間、メタル銀河へと変貌させていくのだ。「FUTURE METAL」からの「DA DA DANCE (feat. Tak Matsumoto)」。大歓声に迎えられながら歌い踊る3人は巨大スクリーンの映像に重なって浮遊しているように見える。エレベーターを模した真っ赤な箱の中で繰り広げられる「Elevator Girl」、曼陀羅の渦中で妖艶に舞う「Shanti Shanti Shanti」。白装束の神バンドが繰り出す猛り狂うアンサンブルの波を華麗に泳いでいく3人。重厚なサウンドと異空間を演出する映像、聴覚と視覚の同時に攻め掛かってくる演出を前に現実から隔離されていく気分になる。そうした中、ふとアルバム『METAL GALAXY』の曲順通りにライブが進められていることに気づいた。

“むかしむかし、そのむかし、広大なメタルの銀河の向こう側に、メタルの楽園があったーー”

 ストーリームービーのナレーション。はじまったのはかつてのライブでお馴染みの映像演出である。メタルのパロディやオマージュを盛り込みながら、BABYMETALのダークファンタジーの物語を体現していくものであり、久々の復活だった。“それは、「パラダイス“メタル”銀河」と呼ばれる、大人には見えない「とっておきの夢の島」”……と、突っ込みどころ満載の内容に笑いと歓喜の声が上がる。

 そうして始まったのは、世界初披露となる「Oh! MAJINAI (feat. Joakim Brodén)」。スクリーンには、なんとSabatonのフロントマン、ヨアキム・ブローデンが現れた。

(Photo by Takimoto “JON” Yukihide)

 巨大スクリーンの中で増殖していくヨアキム・ブローデン、スクリーンの中でところ狭しとコミカルに大暴れする泣く子も黙る北欧メタルの豪傑を前に、フロアも皆我を忘れ、気が付けば、隣人と肩を組み合いながらの「しゃかりきMOSH’SH」を繰り広げ、メタルの銀河にパラダイスは広がっていくのであった……。ちなみにBABYMETALの3人はコサックダンスではなく、背中に手を回しながら横一列になってアイリッシュダンスを模した振りを楽しそうに踊っていたことを付け加えておく。

 個人的に心奪われたのは「Brand New Day (feat. Tim Henson and Scott LePage)」である。プログレのインストバンド、Polyphiaのギタリストをフィーチャーした同曲は、インダストリアルで無機質なギターの壁と綿密に組まれたリズムが印象的なナンバーである。しかし、神バンドで聴くそれは耳にへばりつくようなサウンドと蠢くようなアンサンブルであり、音源とは一味違う凄絶な情緒の構築美が見事だった。何より耳を奪われたのはSU-METALのボーカルだ。彼女のスタイルは真っ直ぐな歌声を響かせるものであり、楽曲に寄り添っていくようなタイプではなく、どんな楽曲も自分の方に引き寄せていくボーカリストだと思っていた。この曲を聴くまでは……。

(Photo by Taku Fuji)

 「Brand New Day」で聴けたSU-METALの歌声は、少女のような瑞々しさに大人の艶やかさが加わった欲情すら感じさせるもの。優等生的なイメージのあった彼女の歌唱スタイルにさらなる拡がりを見せたものだった。はじめて生で聴く同曲は、たっぷりとしたブレスと激しく揺れ動くバンドアンサンブルに合わせるような躍動で魅せていく。いや、バンドが彼女の歌に突き動かされているようにも思えた。声を前に出すのではなく、一旦上顎に当ててから鼻へと抜けていくような高音が実に心地よい。こんな声も出せるのか。ここに来てSU-METALのボーカリストとしてのポテンシャルをさらに引き出した、とんでもない曲だった。

 久々の日本語バージョンで披露された「THE ONE」。〈僕らの声 僕らの夢 僕らのあの場所へ〉とSU-METALの凛々しく勇ましい声が響き、ドラマチックな楽曲展開に場内は酔いしれ、“ララララ~”の大合唱はどこまでもいつまでも響き渡っていくようであった。

(Photo by Takimoto “JON” Yukihide)

 そこからしばしの静寂を挟むと、ライブのテーマのひとつ「東と西」、“東西の神々が降臨する”という映像が流れる。それは、白装束を纏った“東の空の守護神バンド”と黒衣に身を包んだ“西の空の守護神バンド”の狂宴、「Road of Resistance」だった。ギター4人、ベース2人、ドラム2人が繰り広げる轟音をバックに、SU-METALとMOAMETAL、そしてアベンジャーズ3人が勢揃い。フラッグを背負った5人の姿に場内は狂喜乱舞したのだった。

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