kolme×fox capture planが語る、“こだわり”と“ニーズ”を両立する難しさ「要望に合わせることが逆に音楽性を広げるチャンス」

kolme×fox capture plan対談

「海外=英語のタイトルが正解というわけでもない」(岸本)

ーー楽曲制作に関してkolmeから聞いてみたいことってありますか?

KOUMI:1曲作るのにどれくらい時間がかかるか知りたいです。

カワイ:早いときは1日かからないで、すぐできることもありますよ。基本は3人しかいないから、スムーズにいくときはいくっていう。ストリングスとかシンセを入れたいと思えば、後から足していけばいいし。

岸本:自分のデモなんかはドラムとベースのワンループみたいなのもあって。それを2人に渡してアレンジしていく感じですね。

カワイ:後でどうせ生にするからって、すげぇ雑なデモだよね。仮タイトルも「ロック」とか適当な感じだし(笑)。

井上:「エイトビート」とかね。サービスエリアで目についたからって理由で、「うどんコーナー」ってタイトルの曲もあったし(笑)。

MIMORI:あはは。インストの曲の場合、タイトルを決めるのがすごく難しそうですよね。

カワイ:タイトルは曲のイメージを左右する情報にもなってしまうから、やっぱり悩みますよね。だから、いつもだいたい入稿日の朝にやっと決めて提出する感じです(笑)。

岸本:ジャズとかインストって英語のタイトルをつけがちなんだけど、僕らは「疾走する閃光」のような日本語タイトルもけっこう多いんですよね。今年も「夜間航路」っていう曲を出したんだけど、Spotifyでは海外からのアクセスがめっちゃ多かったりもして。だからね、海外を意識しているから英語のタイトルが正解かっていうと、そういうわけでもないのかなって。foxをやっていてそんなことを思いますね。

カワイヒデヒロ

RUUNA:はぁ! なるほど。

カワイ:意外と日本語自体に魅力を感じてたりするからね、海外の人たちは。

井上:僕がサポートしたミュージシャンが言ってましたけど、ヨーロッパのプロデューサーたちはみんな口をそろえて「日本人が海外に出るなら歌詞は日本語にして欲しい」って言ってたそうで。

RUUNA:海外の人は逆に日本語を聞きたいっていうことなんですね。

井上:そうそう。「次は完全に日本語ブームが来るから」みたいな。

岸本:もうすでにLUCKY TAPESとかは日本語のまま海外に行ってますからね。もっとデカい話をすると、坂本九さんの「SUKIYAKI(上を向いて歩こう)」とか由紀さおりさんの「夜明けのスキャット」はアメリカでヒットしましたけど、それも日本語のままでしたし……ってことをラジオで菊地成孔さんが言ってました。

カワイ:自分で調べた情報じゃなかった(笑)。

KOUMI:あははは。私たちはデビュー当時から海外に向けて発信したい気持ちがすごく強かったんですよ。だから呪縛のようにタイトルを英語縛りにしてずっとやってきたんですけど……逆だったってそこは重要ではなかったことですか(笑)。

MIMORI:今のお話聞いて、これからは全部日本語にしようと思いました(笑)。

カワイ:まぁまぁ、今のは極端な話ではありますけどね。

岸本:もちろん英語のタイトルの日本の曲も海外で聴かれていたりもしますし。中には日本らしさを好む人もいるっていうことですよね。

ーーkolmeの場合、タイトルは英語でも歌詞に日本語が使われていますから。大丈夫だと思います。

RUUNA:フォローしていただいて、ありがとうございます(笑)。

「自己主張が激しすぎてわかりづらいって言われることも…」(RUUNA)

RUUNA

岸本:ちなみにkolmeの歌詞はMIMORIさんが?

KOUMI:最初は3人で一緒に書いてたんですよ。でもなかなか大変で(笑)。

MIMORI:うん。なので今は3人それぞれが別々に書いているんですよ。私が出した曲のデモを元に、「これはこの人に合いそうだよね」みたいな感じで話をしながら分担を決めていきます。「この曲書きたい!」って立候補されることもあるし。

RUUNA:逆に誰の手も挙がらないこともあるんですけど(笑)。そのときは譲り合いですね。「今ちょっと暇な人どうぞ」みたいな(笑)。

ーー3人それぞれ得意な曲のタイプもあるでしょうしね。

岸本:そうですよね。分担するのはいいなぁ。3人の主観がぶつかると当たり障りのない歌詞になる可能性もありますからね。

MIMORI:メインボーカルがRUUNAでラップがKOUMIっていう役割が明確にあったりもするので、曲に関しても作りやすい部分はありますね。「これはこの人が得意だろうな」ってイメージできるんで。

KOUMI:音域とかも考えてくれるもんね。

カワイ:あ、そこまでしっかり考えて作ってるんだ。なるほどね。

岸本:確かに音域もすごく合ってる感じがした。いい意味で、頑張って歌ってる感がないから聴きやすいんですよね。

カワイ:楽器ができる人が曲を作ると、この音は歌えないんですけどみたいなことになりがちですからね。

MIMORI:そうなんですよね。私も曲を作ってるとどんどん上の音階に行っちゃって、絶対に出ないキーになっちゃうことがよくあります。音階の動きにしても、それぞれ苦手なものがあったりもするので、そこは細かく修正して作っていきますね。

岸本:いいですね。うちもそういうふうに作ってくれてんの? 俺がピアノで弾きやすいようにってことを考えて。

カワイ:いや、俺は全然考えてない。むしろ「これを弾け!」くらいな感じ(笑)。

ーー11月にリリースされたfoxの新曲「Precious My Heroes」は、シンガーの宮本一粋さんをフィーチャリングした歌モノでしたね。そこでは岸本さんが初めて作詞を手がけられていて。

岸本:そうですね、はい。

MIMORI:私は2年前から『スタンドマイヒーローズ』のゲームをずっとやっていたんですけど、それがアニメ化されることが決まったときに、音楽プロデュースをfoxさんがやることを知って感激したんですよ。「好きと好きの融合。キタコレ!」と思って。で、主題歌になっているこの曲も、リリース前からfoxさんのホームページで何回も何回も聴いてました。最高の曲だと思います!

カワイ:やっぱり褒めちぎりがすごい(笑)。

岸本:曲を作っている段階で、このメロには英語がハマりそうだなとか、細かいこだわりが出てきてしまったので、じゃあ自分で歌詞を書いてみようかなっていう感じでしたね。『スタマイ』の曲としてある種、客観的に聴いてくれる人が多そうでもあったので、そういうときこそ新しいことをやるチャンスかなっていう思いもありましたけど。

RUUNA:タイアップ曲や提供楽曲を作るときは、普段と違った部分に意識を向けたりすることもありますか? というのも、私たちのアルバム曲は自己主張が激しすぎて一般的にはわかりづらいって言われることがわりと多いんですよ。もうちょっとニーズを考えながら作ったほうがいいよって。なので、最新のアルバム『Do you know kolme?』は、自分たちなりのこだわりとニーズをすり合わせたラインをけっこう意識して作ったんですけど。

カワイ:劇伴なんかはむしろニーズに合わせて作らなきゃいけない感じではありますよね。「こんなシーンで使われます」とか、いろいろなオーダーがあったりするので。

岸本:まぁでも、そうやってニーズに合わせることが逆に自分たちの音楽性を広げるチャンスでもあるのかなって思ったりもするんですよ。

井上:確かにそうだね。foxとしては挑戦できなかったことを劇伴で一度経験してから、あらためて自分らのアルバムでやってみたりってこともあるから。

RUUNA:あーなるほど。

ーーアウトプットする場所が他にあると、そういう利点もあると。

岸本:縛りのある劇伴なんかがあるからこそ、自分たちの作品では思い切りオリジナルを出せるところもあるし。そうやってバランスを取ってるところがあるのかもしれないですね。

RUUNA:私たちはkolmeしかないから、どこまで自分たちのこだわりを出していいのかがけっこう難しいところなんですよねぇ。

カワイ:確かにそうかもしれないですね。でも、僕らは基本的に「ニーズなんか知らんわ!」って感じで好き放題やっていたりもするので(笑)、kolmeさんもそれでいいような気がしますけどね。確かにバランス感覚は大事かもしれないけど、あまり考えすぎず。

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