乃木坂46 秋元真夏 1万字インタビュー「後輩グループも背負っているという責任感が芽生えてきた」

 乃木坂46にとって2019年は、西野七瀬や桜井玲香ら1期生の卒業、4期生の本格的な合流、アジア圏での海外公演など、例年以上に変化のあった1年だった。ただ、そんな大きな出来事がありながらも、グループ全体としては盤石な姿勢を崩さないことが、結成8年目を迎えた乃木坂46の強さや存在感の大きさを象徴していたようにも思う。

 そんなグループの中で大きな役目を担うことになったメンバーが、卒業した桜井に代わってキャプテンに就任した秋元真夏だろう。グループとしての活動はもちろん、個人でもバラエティ番組への出演、2019年は舞台『サザエさん』で磯野ワカメ役を演じるなど、乃木坂46の間口を広げてきた秋元。そんな彼女に乃木坂46の2019年を振り返ってもらいながら、新たに芽生えたキャプテンとしての自覚や責任感、客観的に見た乃木坂46の現在と坂道グループ全体について、そして個人としての今後を語ってもらった。(編集部)

以前と同じものにするのは無理だと気づいた1年

秋元真夏

ーー2019年の乃木坂46を振り返ると、2018年から続く1期生の卒業に加えて4期生という新たな戦力の加入という2つのトピックが挙げられると思います。そんな中で、秋元さんは2019年前半と後半とでグループ内での立ち位置がガラッと変わった、特殊なポジションにいると思うんです。

秋元真夏(以下、秋元):確かにそうですね。

ーーそんな秋元さんの目から見た2019年の乃木坂46は、どのように映りますか?

秋元:2018年から続いてメンバーが減っていくにつれて、特になーちゃん(西野七瀬)のような「乃木坂46の顔」としてグループを引っ張ってくれた子がいなくなると、残ったメンバーにはその子の穴を埋めなくちゃいけないという気持ちが芽生えると思うんです。例えば、ファンの人から見た「記憶の中にある乃木坂46」にポコっと穴が空いてしまうと、以前とは違うものに見えてしまいそうで。その「記憶の中にある乃木坂46」を保つためにはどうすればいいのか、すごく考えた1年だったかなという気がします。ただ、その穴に誰かを入れたら必ず当てはまって、埋まったから完成ということには絶対にならないし、以前と同じものにするのは無理だということにも気づいた1年でもありました。

ーー「ポスト西野七瀬はこのメンバーです」と、以前の枠に収めようとしても、以前と同じものにはならないし、そうすることが必ずしも正解ではないと。

秋元:はい。あと、これは自分に関してなんですが、キャプテンの桜井玲香が卒業して後任に私が入ったときに、玲香はガツガツ引っ張っていくというよりは背中で見せていくタイプで、私もそんなにしっかりしてないので引っ張っていくという感じではないという共通点はあるんですけど、まったく一緒ではないんだなというのも感じました。

ーー同じことをしようとしても、人が変われば以前とは違うものになると。アイドルグループを長く続けていくうえで、その問題は避けては通れないものですよね。

秋元:乃木坂46って問題なくトントン拍子で進んでいると思われたり、常に右肩上がりだねと言ってもらえることが多かった気がするんですけど、この難しさはまだ解決できていない気はします。

ーー4期生加入から1年経ちましたが、彼女たちがどんどん個性を見出すことで、また変わりそうな気がします。

秋元:選抜に入ったメンバーもまだ3人しかいないですしね。3期生も選抜に入ったメンバーが増えたことで新しい個性を見つけられたと思うので、2020年はそういった面での変化があるかもしれないですね。

“一番の夢”を悔しいままで終わらせちゃいけない

ーー2011年8月に結成した乃木坂46も、結成10周年まで2年を切りました。正直、ここまで続いていること自体がすごいですよね。

秋元:本当ですね。そこまでは意地でもグループを維持しなくちゃいけないというのは、10周年を目前にした今だからこそより感じます。

ーー手探りの中始まった乃木坂46の地盤がなんとなく固まったのは、おそらく5年目ぐらいだったのかなという印象があって。それ以降の5年というのは、その完成に近づいた乃木坂46をどう広げていくか、どう次につないでいくかが課題だったのかなと思うんです。

秋元:そうですね。初期から活動してきたメンバーは個々にやりたいことが見つけられたかもしれないし、逆に途中から加入したメンバーはグループでの活動に力を注ぐことに必死だったりと、今は5年目の頃よりも個々が向いている方向がバラバラなのかもしれないなと感じていて。5年目の頃はまだみんながグループのことで精一杯だったけど、そこから活動の幅が広がったことで選択肢が増えた。そんな今だからこそ、大きな目標をひとつ持つことが大事になるのかなと思っています。

ーーまた視点を変えると、地盤を固めたあとの5年というのは「日本のトップアイドルグループ」として必要な要素をどんどん手に入れる時期でもあったのかなと。それこそ、2017年には初の東京ドーム公演も実現したし、同年末には日本レコード大賞も受賞したわけですから。

秋元: 5年目を迎えるちょっと前ぐらいに、取材で「グループで達成したい来年の目標はなんですか?」と聞かれたときはみんな「東京ドームでライブをやりたい」と言っていたんです。その夢を達成できて、レコード大賞まで獲らせていただいた。で、そのあとにメンバーに同じ質問をすると、結構答えが出てこないんですよ。だからこそ、同じ目標をひとつ持つこと、その目標を探すことが今は重要な気がしていて。私は今、定まった目標がないという状況に危機感を持たないといけないのかなって、最近こういう1年を振り返る話をする中で感じるんです。

ーー今はそれだけ選択肢が増えた、恵まれた状況にあるということですよね。グループとしても個人としても、以前と比べたらいろいろ挑戦できる環境だし、実現できる環境であると。その中に置かれた皆さんに、いい意味で欲が出てきたということなんでしょう。

秋元:確かにそうですね。グループでの活動がすごく好きなメンバーも、外での活動が好きなメンバーも、両立しやすい状況になったのかなという気はします。それは決してマイナスではないですものね。ただ、私としては……東京ドームってまだ1回しか経験していないし、終わった直後にみんな「悔しい」って言葉を口にしていたので、その経験をしているメンバーたちのリベンジというか、やりきったぞと言える東京ドーム公演はやってみたい、という気持ちはずっと持っています。特に私は、玲香がめちゃめちゃ悔しがっていたのがすごく印象に残っていて、その気持ちを残したまま卒業してしまっているので、東京ドームという一番の夢だった場所でライブができた思い出を悔しいままで終わらせちゃいけないと思うんです。

ーー2017年以降、大阪や名古屋、福岡ではドーム公演を何度か行なっていますが、確かに今の乃木坂46が再び東京ドームでパフォーマンスしたらどんなステージを見せてくれるのかは気になります。それに、当時よりも成長した3期生や、初めて東京ドームに立つことになる4期生の活躍も楽しみですし。

秋元:最近は3・4期生ライブもありましたし。後輩たちが先輩抜きで作るライブを経験したことでさらに実力を付けたはずなので、その状態で臨める東京ドーム公演がもし実現したら、より素晴らしいものができそうな気がします。

控えめながらも内に秘めたものを持っているのが乃木坂46らしい

ーーちょうど話題に挙がりましたが、11月26、27日に行われた3・4期生ライブは今後の新たな可能性を感じさせる素晴らしい内容でしたよね。

秋元:本当にそうですね。やっぱり卒業生が増えたり同期が減ったりして「どうしようかな?」と不安も感じていたんですけど、後輩たちがあれだけのステージを完成させてくれたのを見て、「この穴を埋めなくちゃいけない」ということを誰かに言われたわけではなく、自分たちで感じて、考えてくれたんだなと感じました。もしかしたら、そのポジションに行きたいと思ってくれているメンバーもいるかもしれないし、その控えめながらも内に秘めたものを持っているのが乃木坂46らしくて、そういう面がよく表れたライブだったと思います。

ーーきっと先輩がいたら恐縮してそこまで前に出られない子も、気心知れた先輩後輩同士ですごくやりやすかったでしょうし。あそこまでライブでのびのびしている3期生や4期生を初めて目にしましたものね。

秋元:そうなんです。なんだか「いいお姉ちゃんと妹」という関係性が見えてきて、あまり縦の関係を強く感じさせないあの空気を全体ライブでも出してほしいなと思いました。

ーーまた、「自分たちで感じて、考えてくれた」という点においては、梅澤美波さんや久保史緒里さんのようなメンバーがリーダーシップを発揮していたのも印象的でした。

秋元:やっぱり各期にそういうメンバーって必ずひとりは必要ですし、私たちが卒業したあとも乃木坂46には続いていってほしいので、彼女たちの頑張りを見て安心しました。

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