Jewel、結成10年で放った最高の輝きーー『Jewel First Tour ~Unveiling~』ファイナル公演を見て
ライブという瞬間こそ、Jewelにとっての宝石
また、手嶌葵のバラード曲「明日への手紙」のカバーも披露され、実に聴き応えがあった。大切な人のことを、いつまでも遠くから見守っていますという楽曲。激しくダンスを踊りながら歌う様子とは一転、切なさを滲ませながら歌った3人。これまでの10年の間には、さまざまな出会いと別れがあり、その一人一人に宛てるような、心のこもった歌声が胸を熱くさせた。
そんな3人の決意は、「Answer」に込められていた。Jewelは結成10年目。2016年から現在の3人体制になり、それ以降はニューヨークでの武者修行を行うなど、アーティストとしてダンスと歌に磨きをかけてきた。その過程で身につけたのが、ボディパーカッションというパフォーマンスで、この楽曲にはそれらが取り入れられている。熱くまっすぐなボーカルがハーモニーと共に繰り出され、サビは切なさや悔しさを胸に、3人で力を合わせて前に進むイメージが浮かぶ。会場には3人が足を踏みならしながら身体を叩く音が響き、それに対する賞賛の歓声が沸くと、3人はすれ違いざまにハイタッチを交わして笑顔を見せた。
MCでは、ツアーのタイトル『Unveiling』にかけて、ベールを脱ぐ話、つまり今だから言える暴露話で会場を盛り上げた。例えばamiは、Nonoがいつまで経っても携帯番号を登録してくれないと困り顔。そんなamiにMOMOKAは、ライブの途中で「お腹空いた」と言ってくることなど。何とも微笑ましいエピソードの数々に、この時ばかりは会場にほっこりとした空気が流れていた。
結成からの約10年を振り返る場面もあり、Nonoは「ここにいる誰一人欠けても、こんなに楽しい時間にはならなかった。10年やって来て、今日が一番楽しい」と、満面の笑顔。amiは「バラバラになりそうな時、リリース出来ない時もあったけど、続けて来て良かった」と、感極まった様子。そしてMOMOKAは、「続けてきて良かったと思えるのは、今が幸せな証拠。みんながジュエラーで良かったと思ってもらえるように、ここで満足せず上を目指します」と、さらなる飛躍を力強くファンに誓った。
本編のラストでは、彼女たちのテーマソングのような「Jewel」を披露した。〈どんな宝石より輝く最高の瞬間やっと見つけたんだ〉というフレーズで始まる、切なさを胸に抱きながら前を向いて進んで行くポジティブなナンバー。3人で歩んで来た時を認め合い、これからも力を合わせて進んで行くことを誓い合った歌詞が、グッと胸を打つ。これまでに流して来た汗や涙も、彼女たちにとっては、今という時を輝かせるための宝物だったに違いない。それを大勢のファンと共有する、ライブという瞬間こそ、Jewelにとっての宝石なのだ。この日Jewelの3人が見せてくれた輝きは、この約10年で最高の輝きだったと思う。
■榑林史章
「THE BEST☆HIT」を経て音楽ライターに。オールジャンルに対応し、インタビュー本数は延べ4,000本。現在は日本工学院で講師も務める。