EMPiREが創り上げた独自性とライブの強さ avex制作スタッフの証言と共に2ndアルバムを紐解く
アルバムのイメージを大きく差配するメンバー作詞曲
アルバムを聴いていて気になったことがある。ここ最近のシングルカップリング曲で見せていた、ダークなエレクトロサウンドの楽曲が今作に収録されていないことだ。このサウンドと音楽性が今後のEMPiREにおける重要なカギになっていく気がしていただけに、肩透かしを喰らった気分にもなった。しかし、全曲通して何度も聴き込んでいくうちに、あえてそこを外したような、作品としての差別化の意味合いがあるようにも思えてきた。
「「ERASER HEAD」や「maybe blue」は、ライブにおいて“魅せる”要素が強いため、よりダイレクトなダイナミズムを訴求したい今作では、意図的にこのようなタイプの楽曲は制作しないことを決めていました。ただ、これらの楽曲はEMPiREのストロングポイントでもあるので、今後も作っていくと思います」
代わって、今作のイメージを大きく差配しているのがメンバーによる作詞曲だ。オリエンタルな旋律に対する言葉の乗せ方がなんとも美しい「きっと君と」、おとぎ話の絵本を読み聞かされているような不思議な気分になる「曲がりくねった道の」、といった楽曲がアルバムのカラーを大きく彩っている。これまで作詞を手掛けてきたMAYU EMPiRE、MiDORiKO EMPiREとは全く異なるこの詞世界はいったい……?
「今回のMVPは、MAHO EMPiREです」と篠崎氏は強く言う。
「今作はサウンドの方向性的に作詞はかなり難しく、その中でMAHOは単独1曲、共作3曲で採用されており、大事な部分を多く手がけています。他のメンバーが苦戦する中、同音異義語の使い方や韻の踏み方も綺麗で、「きっと君と」をはじめ、「Have it my way」のラップ全部とBメロ等の難しい部分、「曲がりくねった道の」のサビはMAHOによるものです」
そして、キーパーソンがもう1人。「めちゃくちゃ可能性を感じさせてくれた」というNOW EMPiREである。
「今回は1曲だけですが、その存在同様に作詞でもものすごく純粋で「こんな歌詞ある?」という可能性をたくさん見せてくれました。「曲がりくねった道の」の〈流れ星に祈り込めて 新しい帝国へ 今 始まる物語さ〉というフレーズは、新メンバーのNOWだからこそ書ける視点と純粋さだと思いました。また、採用にはなりませんでしたが他の曲でもかなり独自のセンスの歌詞を提出してきており、今後がかなり楽しみです」
グループの姉ポジションにいる利発的なMAHO EMPiREと、妹キャラで純朴なNOW EMPiREの作る新しい詞の世界が、今後のEMPiREにとって大きな武器になっていくことは間違いないだろう。
ラストを飾る「I have a chance!!」はメンバー全員による共作詞だ。EMPiREには珍しくギターが思い切り前に出たバンドサウンドをベースに、己を卑下しているようで解放感のある詞が降り注ぐ。これもまた今までにない印象を大きく受ける曲だ。
「この曲は、フリーテーマで全員に書いてもらったのですが、いまいちピンとこず、「EMPiREのメンバー同士、EMPiREとエージェント(EMPiREファンの総称)の関係性」というお題の元、上がってきた歌詞を組み合わせてます。難しい表現や、作詞スキル的なものでなく、素直な想いが伝わるような歌詞になったのは、サビを書いたYU-Ki EMPiREの裏表ない陽性のキャラクターによる「根拠はないが、コイツがいうなら大丈夫なんだろう」という気にさせてしまう、素直で単純な言葉のセンスから組み立てました」
YU-Ki EMPiREといえば、以前「いつしかグループを包み込むような存在となっていた」と評したことがあるのだが、ここ最近、発声法を変えたのではないかというほど、歌の面でも覚醒したように思う。そうした安定感の増した歌声は今作に反映されている。そして、ばっさりとイメチェンしたショートヘアで“一重界のカリスマ”の名を欲しいままにし、“アニマルほのぼのツイッタラー”としての活躍もめざましい“バズりの女帝”、MiKiNA EMPiREのアンニュイなイケメンボイスも聴きどころである。
EMPiREだからこその女子目線の歌詞
渡辺淳之介(WACK代表)による抽象性の高い当て書き詞もEMPiREならでは。日本語の発音やイントネーションを崩して外国語っぽく聴かせる言葉遊びはWACKのお家芸だが、「RiGHT NOW」や「SUCCESS STORY」など、ちょっとハズした言葉選びや軽めの口語調はすっかりEMPiREの味となっている。WACK全グループの作詞を手がける渡辺淳之介が考えるEMPiRE独自の詞世界は確実に存在するはず。
「僕の知る限り、渡辺さんはEMPiREの歌詞にだけハッキリと女子目線の歌詞を書いています。「MAD LOVE」「FOR EXAMPLE??」も女子目線ですよね。そこに関して話した訳ではないですが、今作では「WE ARE THE WORLD」がそれに該当します。〈えへへ〉っていう歌詞は、EMPiREだからこそのものだと思います。一方で、「A journey」のようにEMPiREの今後を指し示すような力強い歌詞もあり、流石だなと考えております。余談ですが、「A journey」の1番最初のデモはBiSHの「NON TiE-UP」(2018年6月リリース)のファーストデモと同じ日にこちらはEMPiRE用にと松隈さんより上がってきており、かなり時間をかけて今回やっと日の目を見ることになりました」
「全10曲、50分以内のアルバム」「15曲を収録するよりも本当に自信のある10曲を厳選し、聴き終わったときにもう1回聴きたいと思わせるアルバム」、そう決めて制作に取り掛かったという今作。まさにライブで強さを出せる精鋭の10曲、といった趣である。音楽性とサウンドプロダクトは作品としての統一感があるものの、メンバー作詞曲によって生じている心地よい違和感が絶妙なスパイスとなり、新しい帝国を感じさせている。前ミニアルバム『EMPiRE originals』表題曲で、張り詰めていた緊張感の中〈オリジナルを作りたい〉と願っていた“帝国の祈り”は、紆余曲折の“Winding Road”を歩き、この10曲を以て昇華されたのだ、そんな気さえしてくる。
「全体的に「挑戦」や「共闘」、「前進」や「未来」を感じさせる歌詞が多く、そこを汲んで渡辺さんが『the GREAT JOURNEY ALBUM』というタイトルをつけてくれました」
Zeppで創り上げる、新しい帝国の“ミライ”へ
また、これまで以上にものすごく“歌”を感じることは出来たアルバムであることを最後に記しておきたい。MAYU EMPiREの真っ直ぐな声、MAHO EMPiREの豊潤な声、MiDORiKO EMPiREの落ち着きのある声、NOW EMPiREの清らかな声、そして、覚醒したYU-Ki EMPiREとMiKiNA EMPiRE。誰かが突出しているわけではないからこその面白さがここにある。様々な想いが巡り巡った「ピアス」。突き刺すような想いを込めて歌われているオリジナルと比べ、新たに録り直され、優しくなった歌声を聴けば、一段と大きくなったグループの懐と余裕を、感じずにはいられないのである。
現在このアルバムを軸とし、現実逃避を掲げる全国ツアー『EMPiRE’S GREAT ESCAPE TOUR』真っ最中のEMPiRE。アルバムリリース翌日の12月19日には自身初となるZepp DiverCity(TOKYO)でファイナルを迎える。その日彼女たちが創り上げる独自性、これからの帝国の“ミライ”も楽しみで仕方ない。ただ唯一懸念があるとすなら、天気だろうか。過去3回のBLITZ公演、すべて雨に見舞われた“雨の女帝”擁するEMPiREの晴れ舞台。当のYU-Ki EMPiREは〈大丈夫だよ〉と歌っているのだから、きっと大丈夫なのだろう。
■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログ/Twitter
the GREAT JOURNEY ALBUM YouTube LiVE
12月12日22時よりEMPiRE official YouTube Channel にて公開
■リリース情報
EMPiRE 2nd Full Album『the GREAT JOURNEY ALBUM』
2019年12月18日(水) 発売
iTunes Store 先行配信はこちら(11月25日より1日限定300円)
Apple Music 先行配信はこちら(11月25日より)
初回生産限定盤 [BOX仕様]
カセット+Blu-ray(スマプラ対応)+LiVE CD+PHOTOBOOK
¥9,091(+税)
DVD盤(CD+DVD)¥4,800 (+税)
CD盤(CDのみ) ¥2,000(+税)
<CD&CASSETTE TAPE収録内容>
01 Have it my way
02 WE ARE THE WORLD
03 ピアス(the GREAT JOURNEY ver.)
04 A journey
05 RiGHT NOW
06 きっと君と
B-SiDE
07 SUCCESS STORY
08 NEW WORLD
09 曲がりくねった道の
10 I have a chance!!
Bonus Track(初回生産限定盤のみ収録)
11 SELFiSH PEOPLE(the GREAT JOURNEY ver.)
<Blu-ray収録内容>
『-2019.07.11 at Mynavi BLITZ AKASAKA NEW EMPiRE TOUR "EVOLUTiONS"』
01 EMPiRE is COMiNG
02 SELFiSH PEOPLE
03 デッドバディ
04 Don't tell me why
05 EMPiRE originals
06 maybe blue
07 Talk about
08 TOKYO MOONLiGHT
09 Dope
10 コノ世界ノ片隅デ
11 ERASER HEAD
12 LiTTLE BOY
13 Black to the dreamlight
14 ピアス
15 アカルイミライ
16 FOR EXAMPLE??
17 SO i YA
18 S.O.S
19 Buttocks beat! beat!
20 MAD LOVE
21 SUCCESS STORY
※(初回生産限定盤のみメンバー副音声収録)
-Music Video
「ピアス」「SUCCESS STORY」「RiGHT NOW」「Have it my way」「WE ARE THE WORLD」他全6曲収録
-Making Movie
<LiVE CD収録内容>
『-2019.07.11 at Mynavi BLITZ AKASAKA NEW EMPiRE TOUR"EVOLUTiONS"』
全15曲収録
<DVD収録内容>
『-2019.07.11 at Mynavi BLITZ AKASAKA NEW EMPiRE TOUR "EVOLUTiONS"』
■ツアー情報
『EMPiRE’S GREAT ESCAPE TOUR』
1 2019年11月3日(日) 岡山 IMAGE ※SOLDOUT
2 2019年11月9日(土) 北海道 札幌SPiCE ※SOLDOUT
3 2019年11月17日(日) 大阪 江坂MUSE ※SOLDOUT
4 2019年11月23日(土) 神奈川 F.A.D YOKOHAMA ※SOLDOUT
5 2019年11月24日(日) 茨城 水戸ライトハウス ※SOLDOUT
6 2019年11月30日(土) 愛知 X-HALL-ZEN- ※SOLDOUT
7 2019年12月7日(土) 栃木 HEAVEN'S ROCK UTSUNOMIYA VJ-2 ※SOLDOUT
8 2019年12月8日(日) 新潟 Live Hall GOLDEN PIGS BLACK STAGE ※SOLDOUT
9 2019年12月12日(木) 福岡 DRUM SON ※SOLDOUT
10 2019年12月14日(土) 宮城 仙台CLUB JUNK BOX ※SOLDOUT
11 2019年12月15日(日) 山形 山形ミュージック昭和Session ※SOLDOUT
12 2019年12月19日(木) 東京 Zepp DiverCity
※チケット一般発売中
詳細はこちら
■関連リンク
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