三浦春馬、舞台/ミュージカル経験を経た“シンガーとしての表現力”に注目

ポテンシャルを引き出した舞台/ミュージカル経験

 「Fight for your heart」では、三浦のダンスも話題を集めた。MVでは真っ赤な背景をバックに頭を激しく揺さぶりながら躍動する、シルエットが映し出されたシーンが印象的だ。歌の感情がそのまま神経を伝って身体を動かしているようなコンテンポラリーダンスで、実に見応えがあった。また『2019 FNS夏のうたまつり』では、どこかバレエを想像させるしなやかな動きで格式の高さや上品さを感じさせ、サビではダンサーと見事にシンクロしたダンスを展開した。この振付は、s**tkingzのNOPPOが担当したとのこと。ネットでは「こんなに踊れるんだ」「歌も上手くてダンスもすごい」など、三浦のダンススキルの高さが話題になった。

三浦春馬「Fight for your heart」Music Video

 幼少期からダンスに慣れ親しんできたことによるポテンシャルの高さに加えて、舞台で鍛えられた面も大きいだろう。2009年に地球ゴージャスプロデュース公演『星の大地に降る涙』に出演したことを皮切りに、2012年には同じく地球ゴージャスの舞台『海盗セブン』に出演。また、同年には、劇団☆新感線『ZIPANG PUNK〜五右衛門ロックIII』にも出演している。地球ゴージャスや劇団☆新感線の舞台は、歌とダンスのスキルが必須だ。そして『キンキーブーツ』への出演経験によって、ダンスによる自己表現に磨きをかけた(昨年の『2018 FNS歌謡祭』では小池徹平やソニンと共に膝上の赤いブーツを履いたドラァグクイーンの扮装で登場して「RAISE YOU UP」を歌った姿が評判になった)。ダンスというと近年のポップスシーンでは、DA PUMPの「U.S.A」のようにみんなで一緒に踊れるものや、大勢のメンバーで魅せるシンクロダンスやフォーメーションダンスが注目されることが多いが、三浦春馬のダンスはそれらとは違ってONE AND ONLYの魅力を持っている。それは感情と一体化したダンスと呼べるもので、きっと舞台やミュージカルで感情を身体の動きに移すという作業をやってきたからこそ、身についたものだろう。

 『2019 FNS歌謡祭』第1夜では、ダンス&ボーカルのオーソリティでジャケットプレイを生み出した郷ひろみと共演。どんな化学反応が起き、どんな新たな魅力を発揮するのか楽しみだ。

■榑林史章
「THE BEST☆HIT」の編集を経て音楽ライターに。オールジャンルに対応し、これまでにインタビューした本数は、延べ4,000本以上。日本工学院専門学校ミュージックカレッジで講師も務めている。

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