『INTO THE PURGATORY』インタビュー
GALNERYUSが究める、ヘヴィメタル×ポップスの融合「最新作が最強というバンドでありたい」
昨年デビュー15周年を迎えたGALNERYUSが、約2年ぶりとなる12thフルアルバム『INTO THE PURGATORY』を10月23日にリリースした。同作は、コンセプトアルバムとして作られた直近2作(『UNDER THE FORCE OF COURAGE』『ULTIMATE SACRIFICE』)とは異なり、15周年を経たバンドの蓄積と16年目の新しさが収められた自由度の高い一枚になったという。
日本のHR/HMシーンを牽引し、海外からも高い支持を受けるGALNERYUSにとって、この15年の歳月はどんな時間だったのか。SYU(Gt)、Masatoshi“SHO”Ono(Vo)、YUHKI(Key)に、デビューから現在までの歩みを振り返りつつ、最前線で戦い続けるための矜持を聞いた。(編集部)
1曲1曲がキラーチューンの自由度の高いアルバムを作りたい(SYU)
ーーGALNERYUSの過去2作はコンセプトアルバムという、ひとつのストーリーに沿ってアルバムをまるまる1枚制作するスタイルでしたが、今回のニューアルバム『INTO THE PURGATORY』のように曲ごとに異なるストーリーを持つオリジナルアルバムは『VETELGYUS』(2014年の9thアルバム)以来5年ぶりになります。
SYU:そうですね。『UNDER THE FORCE OF COURAGE』(2015年の10thアルバム)、『ULTIMATE SACRIFICE』(2017年の11thアルバム)と2作連続でコンセプチュアルな作品を作ったことで精神力を高められたし、一方では各場面に合わせた楽曲を作っていかなくてはならない苦労もありました。実は今回、そのストーリーの完結編を作ろうとはしていたんです。けど、それよりも自由に書いた曲に愛を込めて、1曲1曲がキラーチューンの自由度の高いアルバムを作りたい、そういう思いのほうが強くなって制作に入りました。こっちはこっちでコンセプトアルバムとは違った大変さがありますけど、すごく活き活きと制作できたと思いますよ。
ーー過去2作には組曲のような長編の楽曲も存在しました。今回も7、8分台の楽曲は含まれていますが、それなのにコンパクトに感じられますよね。
SYU:確かにそうなんですよ。今回の制作のテーマは、方法論だけでいえばコンパクトに楽曲が連なって、ザッと聴ける作品というのがあって。かつ、各曲のバランスが良く、ダイナミクスもちゃんとあって、アルバムを通して聴いても疲れないということを念頭に置いて作ったんです。
ーーだからなのか、過去2作以上よりも気軽にリピートできるアルバムなんですよね。
SYU:これは狙ってなかったんですけど、最後のインスト曲「ROAMING IN MY MEMORY」のエンディングから、同じコードのままオープニングの「PURGATORIAL FLAME」に移るんですよ。
ーー確かに。リピートするとわかりますが、綺麗につながるんですよね。
SYU:そう、無限のループになっているんです。なので、「PURGATORIAL FLAME」のSEとして「ROAMING IN MY MEMORY」を使っているような感覚でもありますよね。
ーー歌詞の書き方も過去2作とは異なるアプローチだったと思いますが、そういったところでの新たな気づきなどはありましたか?
SYU:コンセプトアルバムは発案者が歌詞を書いていったほうが、その世界観を作りやすいんです。でも、今回はそこから脱した作り方で。このアルバムの前に、僕はソロ作(今年1月発売のアルバム『VORVADOS』)を作ったんですけど、小野さん含め複数のボーカリストに歌詞を書いてもらって、その人の言葉で歌ってもらうとすごく説得力があるなと改めて感じたので、それをGALNERYUSでもやりたいと思ったんです。もちろん僕も歌詞を書いてはいるんですけど、できるだけ小野さんにもお願いして。やっぱり小野さんが自分で書いた歌詞を歌うと、すごく素直に歌っているなと感じられるところもあったので、そういう再発見もありましたね。
Masatoshi“SHO”Ono(以下、SHO):僕は今回3曲(「FIGHTING OF ETERNITY」「COME BACK TO ME AGAIN」「REMAIN BEHIND」)作詞したんですけど、そのうち1曲はYUHKIさん(「FIGHTING OF ETERNITY」)の曲で。通常、作詞する前はどんなイメージがいいかをあらかじめ伝えてもらうんですけど、今回のYUHKIさんはただ「英語が多め」みたいな、そのぐらいでしたよね。
YUHKI:作曲しているうちに、あるメロディがどうしても〈eternity〉に聞こえて、「〈eternity〉は入れてほしい」とは言いました。
SHO:そう、〈eternity〉と〈infinity〉を入れるというぐらいで。縛りもなく、自由にと言われれば自由に書きますけど、「こんな感じ」と題材を与えてもらうことで、逆に書きやすいということもあります。そうは言いながらも、今回は自由に書けましたね。
実は、GALNERYUSに加入して最初のアルバム(2010年発売の6thアルバム『RESURRECTION』)のときに歌詞を書くことになって、メタルということで、〈僕〉や〈私〉よりは〈俺〉とか〈貴様〉とか、そういう感じのほうがいいのかなと勝手に思って書いたら、「いや、〈君〉でいいです」と言われたことがあったんです。僕はこういう性格なので、あんまり〈俺〉だとか〈貴様〉なんて普段は使わないですが、そう言ってもらってからは自然に書けていますね。
SYU:小野さんのキャラというのがあるじゃないですか。そこはすでに確立されているものですし、無理に変える必要がないと思うし、かつ僕自身が小野さんのファンでもあるので、そのまま“ソロシンガー・小野正利”を導入していく。そんな感覚でしたね。
喉に負担をかけずに、突き詰めていくとこうなる(SHO)
ーーアルバムからのリード曲として「THE FOLLOWERS」のMVも制作されました。曲自体も新境地だと思いましたが、小野さんのオペラチックな歌唱法がまた斬新でして。
SYU:なぜこの曲をMVに選んだかというと、自分たちの中で面白い要素が非常に多いなと思ったからなんです。あと、『INTO THE PURGATORY』というアルバムタイトルにもすごく合う曲でもあると思ったので。僕はこの曲で7弦ギターを使っていて、YUHKIさんもパイプオルガン的な音を出してくれていて、さらに小野さんのオペラチックな歌唱が聴ける。この歌唱法でお願いした理由としては、小野さんが一昨年出した『VS』というソロアルバムに入っている「A Question Of Honour」(※サラ・ブライトマンの楽曲で、日本では『2002 FIFAワールドカップ』のテレビ中継などに用いられたことで知られる)のカバーを聴いたときに、寒イボが立って。「こんな声出せるんなら、はよ言ってくださいよ!」と(笑)。
SHO:(笑)。
SYU:小野さん、珍しく「聴いてよ!」って喜んで聴かせてくれたんですよ。
YUHKI:「こういう声を生かした曲を作れ」ってことだったんでしょうね(笑)。
SHO:そういうことじゃないですよ(笑)。
SYU:でも、僕もうれしかったですよ。まだまだ僕の知らない小野さんの一面があるんだと思ったし。だったら、この歌唱法を活かした曲を作ろうと思って、できたのが「THE FOLLOWERS」なんです。
ーー小野さんはもともと、オペラを勉強したことがあったんですか?
SHO:完全に自己流で、「こんな感じかな?」くらいの感覚なんですよ。なんとか喉に負担をかけずにしっかり発声しようと考えて、突き詰めていくとこうなると思うんです。実は声楽の本を読んだとき、クラシックの方々はやれ骨盤を鳴らすんだとか、膝を鳴らすんだとか書いてあって。
SYU:えーっ?
SHO:まったくわからないですよね。でもポップスやロックを歌っている僕らは基本マイクを使うので、乱暴なことを言うと体が鳴っていなくてもマイクにパーンと乗ればいい。そういう意味でも感覚的にやっているんです。「手打ち風うどん」は手打ちではないですから、それと一緒ですよ(笑)。
ーーなるほど(笑)。かつ、「THE FOLLOWERS」ではベースのTAKAさんが作詞を担当しています。
SYU:これまでTAKAさんはあまり作詞してこなかったんですけど、独自の世界観を持っている人なんです。我々としてもそこはすごく尊敬できるところなので、ここで彼の文才であったり、そういう素晴らしい部分を伝えたくて。なおかつ、この曲にはベースソロを入れたかったので、TAKAさんにしっかりソロを弾いてもらった。そういう各メンバーのフィーチャリング要素が非常に強い楽曲なんですよ。
ーーあのMVの世界観が、まさにアルバムの雰囲気を象徴していますしね。
SYU:撮影チームの方々もこの曲からいろいろ察してくださって、ああいうシチュエーションを選んでくれた。撮り方も素晴らしかったですし、非常に良いMVが仕上がったんじゃないかと思います。