SKE48 大場美奈が“アイドル以外の活動”にも挑む理由「この先どうなるかなんてわかんない」
SKE48・大場美奈が主演を務める辻村深月原作の舞台『ハケンアニメ!』が、10月12日よりCOOL JAPAN PARK OSAKAにて始まった。今年8月には写真集『本当の意味で大人になるということ』を発売したほか、バラエティ番組のレギュラー出演や、11月15日公開の映画『地獄少女』で御厨早苗役に抜擢されるなど活躍の場を広げている大場だが、舞台で主演を務めるのは本作が初めてのこと。
リアルサウンドでは、稽古真っ最中の大場にインタビュー。同舞台への思いや役者としての成長、彼女が様々なことにチャレンジする理由なども語ってもらった。(編集部)【最終ページに読者プレゼントあり】
「稽古場で一度だけ泣きました」
ーー大場さんが初主演を務める舞台の稽古がいよいよ始まりましたが、稽古に参加した印象はどうですか?
大場:当初は、かなり自分の世界に入り込んでいました。朝起きてから暇があれば台本に目を通すのはもちろん、稽古場の行き帰り、お風呂や寝る前もセリフの復唱を繰り返す、みたいな、ずっと台本にがんじがらめにされていた一週間で。そうしなきゃいけないと思っていたんですよ。けど、そのやり方が逆に自分を追い詰めてしまって、稽古場で一度だけ泣きました。仕事場で泣くのが嫌いで、今まであまり泣いたことがなかったんです。でも涙が溢れてきて。そこから周りの方々にアドバイスをもらうようになって、少し気が楽になって、いろんな先輩ともコミュニケーションがとれるようになりました。今はすごくいい感じです。
ーー具体的にどのようなアドバイスをもらったのですか?
大場:山内さん(山内圭哉)からは「(今の状態は)あまりよくない」「稽古場に来たら台本を見てもいいけど、それまでは絶対に見るな」とアドバイスをいただきました。それからは、周りを見るようにしたり、適度に「稽古場を出たら台本は開かない!」って決めたり、考え方をガラッと変えました。この舞台が始まる前に一番不安だったのが、セリフを覚えられるかってことだったんです。なので、(台本見ないようにした)1日目は「いいのかな?」って不安でした。でも、いざ稽古が始まるとセリフが入っていたんです! いつの間に覚えていたんだろうと思って、自分でもびっくりしましたね。
ーーバラエティなどでも台本を読み込むタイプと聞きましたが、それが舞台では通用しなかった。
大場:私はまだまだ舞台経験も浅いので、台本に書かれているセリフを見ても、単純な喜怒哀楽の表現にしかならなくて。自分のセリフだけで感情を理解して表現しようとしていたんです。でも、実際の演技は自分のセリフの前に展開するシーンがあって、その流れを踏まえた上で演じる人物の感情を表現しなければならない。点ではなく線で、他の出演者の方の演技も受け取った上で考えなければいけないことに気が付いたんです。AKB48やSKE48の活動の中で演技をした時に学べていなかったことを演技のプロの方々に教えてもらって、新たな気持ちで演技と向き合えていることはすごく嬉しいです。
ーー稽古のやり方を変えて気持ちに変化はありましたか?
大場:次の日の稽古から集中力が上がりました。役に入り込んで相手の方と会話をするって、こんなに気持ちが通い合うんだって。演出家のG2さんにも「なんかわかってきたでしょ?」って言われて、「これか!」って。こういう感覚って、今まで自分が力み過ぎてたが故にわからなかったことで。それまではG2さんから言われたことを120%理解しようとしていたけど、山内さんから「稽古場は色んなことを言われる場所だから、とりあえず楽しみなさい」って言われてから力がすっと抜けました。
ーー実際の演技にも変化が生まれてきたんですね。
大場:G2さんにも「そのままでいい。むしろ良くなってるから、他のシーンもこのままの感じにしてほしい」って言われて。まだうまくいかないシーンもたくさんあるんですけど、自分の役・川島加菜美を理解できてきた気がします。お芝居をしていて、気持ちいいと感じるというか……。明るいシーンだけではないですし、セリフもお腹の底から出ているわけではないんですけど、演技をしていてすごく……すべての感覚が心地よくて。逆に、うまくいかないシーンだと「どうしよう! まだわかんない! やばい!」っていう焦りで居心地が悪いです。
ーー川島加菜美という役に共感する部分はありますか?
大場:今の私に重なる部分はありますね。『ハケンアニメ!』はアニメの制作会社を舞台にした物語で、“新米制作進行”という役柄なので、「わかんない、どうしよう!」っていうあたふた感は、稽古が始まって一週間の自分と重なりました。川島加菜美が仕事を通して成長していく過程は、殻に閉じこもっていたところから力を抜いてお芝居に取り組んでる今の自分ともリンクしているなと思います。
ーー周りの方々の雰囲気はいかがですか?
大場:みなさんすごく緊張しています。現場は大先輩の方ばかりなので、きっと(演技に対して)何も迷いがないんだろうなと思ったら、細かいセリフをずっと練習していらっしゃったり、私以上に焦っている方もいて。
ーーピリピリしている感じ?
大場:全然ピリピリはしてないです! 特にすごい面白い方がいて……(笑)。
ーーぜひ、教えてください。
大場:菅原永二さんです。たぶん天然なんでしょうね(笑)。永二さんだけ、セリフを際立たせる場所が独特というか……。ふいにセリフを忘れたときって、「確か、こういうことが言いたかったんだよな」って、一部のセリフだけを引っ張り出して言ってしまうこともあるんですよ。そういうときの引っ張り出し方がすごく面白くて、笑っちゃいけない場面でも笑っちゃう(笑)。あと、人の間違いにすぐ気付くんですよ!
ーー(笑)。
大場:なのに、自分が言われているときはポカーンとしてるから、みんなに「人の訂正だけすごい早いよな」って言われていて。いじられてる永二さんを見ていると、緊張してピンと張った糸がちょっと緩んだりします。
ーー原作者の辻村深月さんと、作品についてお話する機会があったと聞きました。役を演じるにあたって得るものはありましたか。
大場:辻村さんには、稽古で最初から途中まで通したものを見ていただいたことがあって、「もうほんとに、ただただ本番が楽しみです」と言っていただきました。あと、オリジナルキャラクターを演じさせていただくにあたって、原作者の辻村さんがどう思われているのか気になっていたんですけど、辻村さんは「G2さんは原作と上手くリンクさせながら新しいキャラクターを生んでいる。原作をとても理解してくださっていることがすごく嬉しい」と喜んでくださって。『ハケンアニメ!』を生んだ人だからこその思いの深さを、まじまじと感じました。そんな辻村さんに「楽しみです」と言っていただけると、「もっと頑張ろう……!」と思いますし、辻村さんの言葉の一つひとつを聞くことができて、「この思いの強さを持ち帰って、みんなで舞台にぶつけていけたらいいな」と思いました。