日向坂46、3rdシングルが首位を獲得 楽曲制作陣から見えるグループの転換点とは

 では実際に楽曲に注目してみたい。ギターやピアノといったアコースティック(=非電気的)な響きの上物に対して、エレクトリックなリズム部があることでダンサブルなバラードとして成立している。曲の全編に渡って印象的なのがストリングスの音色。ドラマチックで恍惚感がある。淡々と鳴り続けるキックはミドルテンポで少し速め、さながら強く高鳴る鼓動のよう。20名によってユニゾンされる悲しげな主旋律の運びは、キックの刻むその一定のリズムの上で、まるで戸惑っているかのようになめらかな軌跡を描いている。

 前作「ドレミソラシド」やデビュー作「キュン」と比較したとき、サビ始まりという点では共通するものの、フレッシュなアイドル感は削がれ、代わりに哀愁や切なさといった感情が押し出されている。この大胆なイメージの変化は、日向坂46あるいは改名前のけやき坂46からの活動を通してみても大きなポイントとなりそうだ。過度にキャッチーさに頼らず、ストリングスやコーラスを駆使して少し成熟した一面をのぞかせたダンスバラードといった趣である。それをまだデビューしたての彼女たちが歌うのが面白い。

 3作目にして迎えたひとつの転換点。若さから生まれる勢いだけではなく、痛みや苦しさといった成熟した魅力を感じ取れる。さまざまな表情を見せながら成長していく彼女たちの今後に期待だ。

■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
blog
Twitter(@az_ogi)

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「チャート一刀両断!」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる