chelmicoが作り上げるピースフルな空間 ボーカリストとしての魅力も発揮した『Fishing』ツアー

chelmico『Fishing』ツアーレポート

 サイケデリックなサウンドスケープの「12:37」では、レイチェルが高速ラップでオーディエンスを魅了し、続く「Navy Love」のメランコリーなトラックでは、気だるい雰囲気のフロウを披露。「Rachel流シティポップ」とでもいうべき、洗練されたコード進行とケレン味あるシンセが印象的な「仲直り村」をしっとりと歌い、さらにスタンドマイクを立てて「ずるいね」と「Balloon」で、ボーカリストとしての2人の魅力を存分にアピールした。

 「OK, Cheers!」では、「最近嬉しかったことある人!」と客席に呼びかけ、「カノジョができた」人、「今日が誕生日」の人、「テレビに出た」という人をピックアップしつつ、彼らを中心に楽曲を盛り上げていく。フィンガースナップをみんなで一緒に合わせたり、「OK, Cheers!」とシャウトしたり、「オーディエンス参加型」のパフォーマンスに会場の一体感は上がる一方だ。「うちらが初めて作った曲をやりたくて」と、Mamikoの曲紹介で「ラビリンス'97」のイントロが流れ出すと大歓声が。トランシーかつスペイシーなファンキーチューンに、フロアはこの日最高潮の盛り上がりとなった。

 巨大な風船が舞う中、オーディエンスがタオルを回転させながらの「Player」、ゴスペル調のメロディを全員でシンガロングした「Bye」で本編は終了。アンコールでは、「Oh,Baby」「3rd Hotel」「Love Is Over」と1stアルバム『chelmico』(2016年)の収録曲で固め、この日のステージに幕を下ろした。感極まった“泣き上戸”のMamikoが途中で涙ぐむ場面が何度かあっが、終始フレンドリーかつピースフルな雰囲気に包まれた一夜だった。

(写真=横山正人)

■黒田隆憲
ライター、カメラマン、DJ。90年代後半にロックバンドCOKEBERRYでメジャー・デビュー。山下達郎の『サンデー・ソングブック』で紹介され話題に。ライターとしては、スタジオワークの経験を活かし、楽器や機材に精通した文章に定評がある。2013年には、世界で唯一の「マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン公認カメラマン」として世界各地で撮影をおこなった。主な共著に『シューゲイザー・ディスクガイド』『ビートルズの遺伝子ディスクガイド』、著著に『プライベート・スタジオ作曲術』『マイ・ブラッディ・ヴァレンタインこそはすべて』『メロディがひらめくとき』など。ブログFacebookTwitter

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