ROTH BART BARON、“ファン主導”で開催したプラネタリウムライブは宝物のような一夜に

ROTH BART BARON、プラネタリウムライブレポ

 「自分が大きな宇宙の一部であることを感じたら、日常の瑣末なことなど取るに足らないこと」ーー大いなるものに触れた多くの人が言うから、自分もそう感じるのだろうと思っていたが、実際は逆だった。宇宙の大きさ、世界の広さを感じれば感じるほど、そこでひしめくように生きる人間と、繰り広げられる様々な営み、心模様が一層愛おしく感じられる。ロットの音楽を聴いていつも思うのは、一瞬、非現実的な世界にトリップしたような感覚をくれるのに、日常に戻った時に、今いる場所は素敵で愛しいところなんだと気づかせてくれる、ということ。そんなロットの世界観とプラネタリウムは、想像以上の親和性と相乗効果があったと思う。

 本編は1時間半ほどで終了。続くアンコールで今日初めてのMCをした三船は、現在制作中のアルバム(11月20日発売予定の『けものたちの名前』)に触れ、順調にレコーディングが進んでいることや、本人たちもかなり手応えを感じている中、新作を聴いた関係者から、前作『HEX』(2018年)を越えたという声も出ていることを報告。『HEX』も“最高傑作”の呼び声が高かっただけに、それを越えるアルバムとは一体どのようなものなのか、俄然期待が膨らむ。

 ラストの曲は1stアルバム収録の「氷河期#2(Monster)」。咆哮にも似た高らかなコーラス部分はまるでアンセムのようにそれぞれの胸に響き、ここに集った人たちが、最後にまた心を一つにした感があった。

 こうして“ファンによるプロデュース”は、このバンドの最良の部分をこの上ない形で引き出すこととなり、大成功に終わった。終演後に三船が「本当にいいファンに恵まれてありがたい」と感慨深げに語っていたが、言うまでもなく、そのファンを作ったのは彼らの音楽の力である。アーティストとファン、互いに抱く敬意が高い次元で結び合って生まれた宝物のような夜だった。

 温かな気持ちに満たされ会場を出ると、空には満月が静かに輝いていた。今、プラネタリウムの中で目にしてきたものと、現実の世界がなめらかに繋がった瞬間だった。 「夜ってこんなに綺麗だったかな」。そんなことを思いながら帰り道を歩いた。

(文=美馬亜貴子)

ROTH BART BARONオフィシャルHP

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