反田恭平×髙木竜馬×牛牛が織りなす『ピアノの森』の音楽世界 原作とリンクする圧巻の演奏を目撃

 一色まことの同名マンガを原作とするアニメ『ピアノの森』は、森に棄てられたピアノをおもちゃ代わりにして育った主人公・一ノ瀬海(カイ)が、様々なライバルたちとの出会いの中でその才能を開花させ、やがてショパンコンクールで世界に挑む姿を2シーズン・全24話で描いた、本格派のクラシック音楽ドラマ。劇中のピアノ演奏を、第一線で活躍するピアニストたちが担当し、登場人物それぞれになりきって演奏したことでも話題を呼んだ。すでにNHK総合テレビでの本放送は終了した(現在もNetflixにて独占配信中)が、メインキャラクターのピアノ演奏を収録したCDや公式楽譜集なども好調発売中で、ファンの熱気はまだ冷めやらぬといったところ。そんななか、担当ピアニストたちが一堂に会し、ドラマを彩った楽曲の数々を演奏する夢のコンサートが東京オペラシティコンサートホールで、8月28日の昼・夜2回にわたって開かれた。

反田恭平

 当日、夜の部は18時からと早めの設定だったが会場は満員。ステージ上に設置されたスクリーンに本編のダイジェスト映像が映し出されるのを合図に公演はスタートした。トップバッターはカイのピアノの師である阿字野壮介のメインピアニストである反田恭平。デビューして4年、『題名のない音楽会』や『情熱大陸』などメディアでも多数とりあげられ、今のクラシックシーンを代表する演奏家のひとり、といっても過言ではない人気ピアニストの登場に場内は沸く。そんな彼が披露したのは、阿字野が小学生のカイに最初に弾いて聴かせたショパン作品であり、後にショパンコンクールの第1次予選でカイも演奏する「ワルツ第6番 変ニ長調 作品64-1『小犬のワルツ』」。現在、ショパン音楽大学(旧ワルシャワ音楽院)で学ぶ反田の本場仕込みのプレイに聴衆の耳は釘付けだ。

 続いての登場は、転校した小学校でカイと出会い、良きライバルとなる雨宮修平。有名ピアニストの父を持ち、幼い頃から英才教育を受けて何不自由なく育ちながらも、自分のピアノを愛せない修平。そんな彼のメインピアニストは1992年生まれの髙木竜馬。数々の国際コンクールで優勝を重ね、現在オーストリアとイタリアで研鑽を積む髙木のスケールの大きな演奏が、雨宮修平というピアニストに底知れぬポテンシャルを与えていた。ここでもショパンコンクールの第1次予選で修平が演奏した「バラード第1番 ト短調 作品23」を見事に披露。2003年に日本公開されたロマン・ポランスキー監督の映画『戦場のピアニスト』でも、ひときわ印象深かったドラマティックな構成を持つ名曲だ。

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