横浜銀蝿、復活インタビュー 40周年へのチャレンジとチームのスピリッツを大いに語る
ツッパリは俺たちの真ん中にあるアイデンティティ
ーーそういう時代を経ながら、今もみなさんやファンが愛してやまない横浜銀蝿の音楽。来年にはベスト盤とオリジナルアルバムをリリース予定とのことで、オリジナルアルバムの制作は、いかがですか?
Johnny:ただ好きなこと、今やりたいことをやっています。それは昔と変わらない、3コードでエイトビートのロックンロール。今レコーディングしているんだけど、思うのは「変わらないな」ということ。今はいろいろな録り方があるのに、相変わらず“せーの”で録ったりして、本当にアナログです。それが俺たちに合ってると思うし、古いとか新しいとかを通り越して、これが“横浜銀蝿”だと思うやり方でやってる感じです。
翔:全員が同じ空間で一緒に音を出していることの楽しさは、絶対音に出ると思うんです。横浜銀蝿の音は、この4人で臨場感たっぷりに鳴らすものでなければ出せない。歌詞も、今思ってることが、そのまま歌詞になっています。40周年を迎えるにあたってチーム横浜銀蝿として、何を思って何をするか。そのフレーズが面白いと思ったからそれを広げて、曲になっていくのが、まぎれもない俺たちのオリジナルだし。
ーー昔は、ツッパリ文化がみなさんにとってリアルだったから、それを歌っていた。今は、60代になったみなさんにとってのリアルなものが、歌になっているような?
TAKU:若い時は、諦めなければ夢に手が届くとか、届くまで頑張ろうということが、リアルに思えたしリアルに歌えた。今の俺たちがリアルに思うのは、やり残したことは何だろうとか、もう一度チャレンジできるとしたら、何ができるんだとかっていうことが多いよね。例えば感謝とか、若い時は分からなくて、今の年齢になったから分かることもある。そういうメンタルの変化は、どんなに隠しても絶対に出るから、そういうものは自然とアルバムに入ってきているんだろうと思います。
ーーじゃあ「ツッパリ還暦ロックンロール」みたいな曲はないんでしょうか?
TAKU:なくはないかもしれないけど(笑)。
翔:そもそも“ツッパリ”とか“ぶっちぎり”という言葉を使った曲がどうして生まれたのかと言うと……それ以前は、普通に愛や恋を歌っていたんです。それがある時ディレクターや社長から、「そんな格好をしているくせに、銀蝿じゃなきゃ歌えない歌は何かないのか?」って言われて。じゃあ俺たちが好きな車やバイクのこと、学校でJohnnyと楽しかったこと、サーファーの女の子に恋をしたことを歌にしてやろうって思って。そうやって追い詰められて、半ば開き直ってできていったものなんです。決して不良ブームだったから作ったんじゃなくて、俺たちにしかできない音楽は何だと問いかけられて、俺たちが遊んでいたことを言葉にして乗せたロックンロールを答えとして出した時に、ディレクターや社長から「それです」と言われて。それでデビューしたのが横浜銀蝿なんです。
60歳を過ぎて40周年を迎える、今の俺たちにしか歌えないものが歌詞になりメロディになると考えると、当然「ツッパリ還暦ロックンロール」もあると思う。だってツッパリは、紛れもなく俺たちの真ん中にあるアイデンティティだし、実際に還暦を迎えているからね。
嵐:作ってもいいんじゃない? 「ツッパリ還暦ロックンロール」。
ーー本当にそういう曲ができるか、楽しみにしています(笑)。
翔:でも、本当に来年がすごく楽しみ。だって俺らが今、すごく楽しいから。ワクワクしてるから。当時から応援してくれてるやつらは、絶対みんな喜んでくれると思うし。ツアーもあるから、若い時を共に過ごした音楽を、何十年も経ってまた一緒に楽しめるというのは、絶対にプレゼントになると思うし。来てくれるみんなを裏切らないステージができるように、死ぬ気で頑張ります。
ーーみなさんにとって横浜銀蝿とは、ライフワークのような?
嵐:ライフワークどころじゃない。“人生そのもの”だよ。だって銀蝿がなかったら、今ごろ何をしていたか。
翔:今回は特にJohnnyが帰ってきてくれたことで、もう一度あの頃を始めるような感覚もあるけど、今思うのは、こんなに楽しい遊び場はないってこと。
Johnny:もともと、単なる横浜の不良ですから。まさか音楽で一生飯を食うとは、思ってもみなかったけど、当時の社長やディレクターには、本当に感謝しています。
TAKU:俺は嵐さんと出会ったのが18歳くらいだから、銀蝿をやっていない時の倍の期間が銀蝿なんです。自分を取り巻くものの一個として当たり前にあるものだから、それを「何ですか?」と聞かれても、言葉にするのは難しい。ただ、嵐さんと知り合わなかったらどうなっていたかってたまに考えるけど、そこはやっぱり感謝だよね。
ーー50周年60周年に向けてもやってほしいですね。
嵐:そんなにやったら死んじゃうよ(笑)。
翔:でも永ちゃんは9つ上で、加山雄三さんは82歳、高木ブーさんにいたっては86歳。そう考えると、俺たちにはまだあと20年あるんだよ。還暦になる時は、50周年60周年なんて絶対無理だと思ったけど、還暦を過ぎて40周年を迎える今となっては、素直に「50周年、60周年に向けて頑張ります」って言えるようになりました。でもその代わり、責任を持ってちゃんと追っかけて下さいね!
ーーはい。頑張ります!
(取材・文=榑林史章/写真=石川真魚)