真心ブラザーズ「サマーヌード」はなぜカバーされ続けるのか 歌詞とメロディから魅力を分析
そして、メロディメイカー・桜井秀俊の手腕にも注目したい。YO-KING独特の声質や節回しと化学反応を起こせて、夏の煌めきをも喚起させるポップなメロディは、2019年に聴いても秀逸! なかでも、胸のドキドキをそのまま表わしたような〈僕ら今〉のバウンシーかつソウルフルな歌メロはインパクト大で、この“ホップ・ステップ・ジャンプ”を思わせるリズムに乗れば、たとえ何歳になった大人であろうと、すぐさま〈はしゃぎすぎてる 夏の子供〉に戻れそうな気がしてくる。また、浮き立たせた〈ウソだろ〉の部分でリスナーをハッとさせるのも実に心憎い。
ピアノ、ストリングス、ホーン、パーカッション、ワウギター、フルート(アウトロでヴァン・マッコイ「The Hustle」をオマージュ)、ファンキーなコーラスなど、遊び心を感じるブラックミュージック風アレンジがたっぷり施された「サマーヌード」だけれど、桜井のメロディに揺るぎない魅力があるからこそ、自由奔放に味付けできたと言っていい。フォーキーで口ずさみたくなる歌メロということを含め、このあたりからも同曲がカバーされる理由は見えてくる。それにしても聴けば聴くほど、当時『日清サマーヌードル』のCMソングのために急ピッチで書き下ろした楽曲だったとは思えない。
「サマーヌード」の発売から約2年後となる1997年の夏、CHOKKAKUをプロデューサーに起用し、セルフカバー「ENDLESS SUMMER NUDE」が完成した。曲のテンポはそのままに、アレンジはイントロからガラッと様変わり。氏の得意とするディスコテイストがちりばめられつつ、原曲のストリングスパートが凛々しいブラスセクションに置き換えられていたり、間奏でクールなキーボードソロがあったりと、オリジナルと比べても甲乙つけがたい仕上がりとなっているので、この機会にビッグバンド風のバージョンも振り返ってみてほしい。多様なアレンジに合うメロディの素晴らしさが再確認できるはずだから。
真心ブラザーズの「サマーヌード」が多くのリスナーやアーティストに愛され続けている理由は、数えればきりがない。それこそ往年の月9ドラマみたいな心ときめく理想のデートあるいは普遍的なラブストーリーを、ほろ苦さも含めて脳裏にスッキリと描かせその世界観に浸らせてくれるから、という声もあるだろうし、在りし日の恋、かけがえのない夏の記憶をシンプルに回想できるような「あの頃の自分に会える」曲としても機能する。それぞれに思いを馳せるなか、リスナーは「今年も聴きたくなる季節がきた」と、アーティストは「今年の夏、カバーしてみたい」と、この曲がふと頭に浮かぶのかもしれない。
■田山雄士
フリーのライター。元『CDジャーナル』編集部。日本のロックバンド以外に、シンガーソングライター、洋楽、映画も好きです。