世界へ生き急ぐラッパーTohjiはどこまで高く飛び続けるのか 1stミックステープ『angel』レビュー

ジェネレーションZを体現する“成し遂げて死ぬ”男

Tohji『angel 』

 天使の羽根のタトゥーが背中に刻まれた、弱冠22歳のラッパーTohji。既存のラッパーとは一線を画すリリックや活動によって、同世代の心を鷲掴みする存在ヘと1年ほどで急成長した。

 もともと彼はYouTubeやSoundcloudで作品を発表し続け、国内のエモラップシーンの中心人物的ラッパー、釈迦坊主のパーティ『TOKIO SHAMAN』への出演によって現場を沸かすようになる。

 まず、フッド(地元)ではなく、ネットから表現する活動が型破りだ。地元のクラブでライブを重ねてメジャーレーベルにフックアップされるという既存のラップゲームの成功方式ではなく、Z世代ならではのインターネットが普及しきった生活環境によって、YouTubeやSoundcloudを通して直接世界へと訴えかけている。彼のひとつ上の世代となる現在アラサーとなったミレニアル世代は、ネットレーベルを立ち上げるなどしてオンラインでの表現に対して意識的であったが、Z世代はネット上でのリリースはあたりまえなのでもはや自然体だ。

 そして、昨年末にリリースされたMall Boyz(Tohjiとgummyboyを中心としたクルー)による「Higher」では、〈成し遂げて死ぬ 成し遂げて死ぬ〉という異質なリリックを披露して、ラップファンの記憶に存在を刻み込ませた。既存のヒップホップでは成り上がって優雅な生活を送ることが目標とされていたが、成功と引き換えに死を歌い上げたリリックは、既存の価値観を崩壊させた。そう、まず欲しいのはフェイム(名声)だ。

 噂が先行して実像の捉えられない彼を一目見ようという機運が高まり、今年3月に行われた渋谷WWWでのショーケース『Tohji presents Platina Ade』では550人近い集客を集めた。そこからブランドとのコラボや大規模イベントへの出演を重ね、今年注目のラッパーへと浮上した。

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