赤い公園、新曲「消えない」MVに反響 二分割映像と楽曲に込められたバンドの意志

赤い公園「消えない」MVより

 赤い公園が、10月29日に新曲「消えない」のMVをYouTubeに限定公開し、多くの反響の声が挙がっている。新曲「消えない」に触れる前に、まずは石野理子を新ボーカルに迎えたこれまでのグループの流れを振り返りたい。

 2010年に結成された赤い公園からボーカルの佐藤千明が、2017年8月31日にグループを脱退。赤い公園のホームでもあるライブハウス・立川BABELにて、結成記念日である今年1月4日に津野米咲、藤本ひかり、歌川菜穂での3人体制、新曲のみのライブを開催はしていたが、それ以来バンドはほぼ沈黙状態が続いていた。一方、石野が所属していたアイドルネッサンスが2月24日に解散。そこから2カ月余りの、5月4日に『VIVA LA ROCK』のステージで新体制が初お披露目となる。

 石野加入にあたって、メンバーコメントでは「いつでも出逢えるよう、三人での活動を始めたばかりですが、どうやら音楽の神様からの贈り物が届いたようです」(津野米咲)、「先月の今頃はまだ決まっておりませんでした」(藤本ひかり)とあるが、5月9日放送の『赤い公園 津野米咲のKOIKIなPOP ROCKパラダイス』(NHK-FM)にてパーソナリティーを務める津野が石野加入までの経緯を語っていた。赤い公園として“大きな景色”を単独で見ていないことに気づき、新たにボーカルを探そうという結論に至ったのが、2017年の冬。それから様々なボーカルを紹介してもらった候補の中に、Base Ball Bearの小出祐介が石野を滑り込ませていたという。津野がこのエピソードを話す前日の5月8日には、小出が『アフター6ジャンクション』(TBSラジオ)に出演し、ギターの湯浅将平が脱退した2016年に、サポートメンバーとして津野が参加してくれていたことへの“恩返し”として、石野を紹介したことを明かしている。

 その後、少し期間を置き、9月8日に『BAYCAMP 2018』、9月15日に『Talking Rock! FES. 2018』と2つのロックフェス、イベントへの出演を経て、今回の「消えない」MV公開に至る。

赤い公園「消えない」Music Video

〈こんなところで消えない 消さない〉

 「消えない」を聴いた時に、最も鮮烈に残ったのは、このラストのフレーズだった。ボーカルを失った赤い公園と、歌う場所を失った石野。惹かれ合うように巡り合った彼女たちの、“進む”という強く熱い意志が、「消えない」には前面に溢れ出ている。

 「消えない」は、『BAYCAMP 2018』のステージでのラストに初披露されていた。その際のMCで津野が話していたのが、広島在住で高校生の石野が、週末に上京し音楽制作を行なっているというエピソード。瀬戸内海の島々をバックに歌い踊る石野と、バンドセットを構え演奏する3人が2分割にされたMVは、広島に住む石野と東京の3人の関係性をイメージさせる。MV公開後の放送となった『KOIKIなPOP ROCKパラダイス』にて、津野は「私の感覚では、広島の理子と東京の3人が出会って、赤い公園としてやっていこうとなるまでの誕生秘話的な、創成期って感じがしている」と語っていた。

 監督・振付を担当したのは、志村知晴。本田翼が出演するLINEモバイルのCMやCHAI「GREAT JOB」の振付を担当している。石野のダンスは、『BAYCAMP 2018』の時点では存在していなかったが、今回MVではアグレッシブかつ華麗に腕を旋回する仕草や、〈声を荒げる〉〈見ちゃいけない〉〈消さない〉といった歌詞からイメージされたと思われる振付が多く見られる。このMVが示すのは、今後、石野のダンスパフォーマンスが赤い公園でも活かされるということ。石野は、PerfumeやSU-METAL(BABYMETAL)を卒業生に持つアクターズスクール広島出身で、アイドルネッサンスでもメンバーからも一目置かれる存在であった。アイドルネッサンスでの活動を踏襲した今回の形は、パフォーマンスの面に置いても、新たな体制を予感させるものである。

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