森口博子が語る、ガンダムソングへの愛とカバーを通した発見「生涯枯れることなく歌い続けたい」

森口博子が語る、ガンダムソングへの愛

 森口博子が8月7日にリリースした『GUNDAM SONG COVERS』が、オリコン週間ランキング(2019年8月19日付/集計期間:2019年8月5日〜8月11日)にて初登場3位を記録。自身としては、28年2カ月ぶりのTOP10入りとなり、「アルバムTOP10 入りインターバル記録」では女性アーティスト歴代1位を記録した。今年40周年となる『ガンダム』シリーズとそれらを彩ってきた“ガンダムソング”の根強い人気を改めて感じることができる結果となった。

 今回のインタビューでは、その『GUNDAM SONG COVERS』に収録されている各楽曲のカバーの話題を中心に、森口博子の歌への熱意、ボーカリストとしての展望について語ってもらった。(編集部)

ガンダムソングはもはや私たちのライフソング 

ーー昨年NHKで放送された『発表! 全ガンダム大投票』にて、全ガンダムソングの中から森口さんの「水の星へ愛をこめて」が1位、「ETERNAL WIND~ほほえみは光る風の中~」が3位に選ばれました。あらためて感想を聞かせてください。

森口博子(以下、森口):ホントに驚きました! 40年というガンダムの歴史の中で、ガンダムソングは実に361曲も存在するんですよ。その中から私の楽曲を2曲も選んでいただき、純粋に感動してしまいましたね。思わず泣いちゃいました。

ーーそれによってガンダムへの愛、そして楽曲への愛もより深まったのでは?

森口:もちろんです。作品に対しての思いがより深まりましたし、「こんなにもファンのみんなと繋がることができているんだな」っていうことをあらためて強く感じましたね。世代や国境を越えた人たちが楽曲を通して同じ気持ちを抱いていられることは本当に素晴らしいなって。それはひとえにガンダムという作品の持つ普遍的な魅力あってこそ。複雑な人間模様が絡み合う、深いテーマですよね。だからファンのみんなの愛、情熱が一切ブレないんだと思います。自分の楽曲も含め、ガンダムソングはもはや私たちのライフソングになっていますよね。オーディション落ちまくっている時に救ってくれたのがアニメの世界でした。「機動戦士Ζガンダム」のテーマソングでデビューし、その後「機動戦士ガンダムF91」のテーマソングを歌わせて頂き、初のベスト10入りをして、たくさんの人たちとめぐりあう事ができました。ガンダムは人生を変えてくれた、運命の作品です!

ーー1位に輝いた「機動戦士Ζガンダム」のテーマソング「水の星へ愛をこめて」は森口さんのデビュー曲でもあります。34年前、どんな気持ちでレコーディングをしたか覚えていますか?

森口:デビューのタイミングということもあり、ひたむきに一生懸命レコーディングに向き合っていました。ただ、歌詞がすごく哲学的な内容でもあるので、その意味を理解しているような、していないような感じだったところはあって。今でこそ、売野雅勇さんのこの詞の美しさ、深さに感動して震えていますが、当時のディレクターさんに「“水の星”って何かわかる?」って聞かれたとき、緊張して「水星!」って答えちゃったくらいなので(笑)。いや、もちろん地球だってことは頭で理解してるんですけど、「“水の星”=“水星”」って言葉のリズムで打ち返しちゃったっていう。そのやり取りはすごく覚えていますね(笑)。「上手に歌おうと思わなくていいから、とにかく丁寧に歌ってね。特に語尾を大事に歌ってね」って言われたことも鮮明に記憶に残ってます。そのアドバイスは今でも私の歌の基本になっているので。

ーーこれだけ長きに渡って愛され続ける曲になることを当時、想像していましたか?

森口:まったく想像してなかったですね。でも、ひとつ「あ、叶ったな」と思えたことがあって。当時、ディレクターさんに「この曲は何年経っても、君が大人になっても歌える曲だからね」って言われたんです。さらに、デビュー時の私のキャッチフレーズは「よかった、君がいて」というものだったんですけど、そこには「歌を聴いた人に“博子ちゃんの歌があってよかった”“博子ちゃんがいてくれてよかった”と思ってもらえるような、そんな人になってほしいんだよ」っていう、ディレクターさんの思いが込められていて……やだ、なんか泣けてきちゃった……。なかなかデビューが決まらなかった私をスカウトして下さったその方は、40代の若さで亡くなってしまったんです。今、その方の思いが現実になっていることを直接報告できないことが、……残念です。でもきっと一番喜んでくれていると思います。

ーー「水の星へ愛をこめて」には、森口さんのそういったドラマがしみ込んでいる。同様に、聴き手もまた楽曲それぞれに対して様々なドラマを持っているのかもしれないですよね。

森口:きっとそうだと思います。みなさんそれぞれの人生の中にガンダムという作品、そしてその主題歌たちがしっかり息づいているし、逆に言えば主題歌の中に私たちの人生が息づいている。だから長く愛され続けているんだと。今回、カバーアルバムを出させていただくことになったときには、そんな重みを持つ主題歌たちを未来に繋げるという大きな使命を感じたところもありました。

ーー今回リリースされた『GUNDAM SONG COVERS』に収録されるのは『発表! 全ガンダム大投票』で選ばれた上位10曲ですからね。言わずもがな名曲揃いなわけで。プレッシャーもあったのではないですか?

森口:ファンの方々からの期待も大きいですしね。ただ、プレッシャーというよりは、それぞれの楽曲に出会えた喜び、感動、衝撃のほうが大きかったかも。それをカバーさせて頂ける喜びのほうが勝っていたというか。もちろん曲に込められたエネルギーがものすごいからボーカリストとして試されている部分もあったし、さらに今回は豪華ミュージシャンの方々との同時レコーディングに挑戦すると言う意味では、そこに関してのプレッシャーはありましたけどね。

ーー同時レコーディングは森口さんにとって初の試みになるそうですね。

森口:そうなんです。同時レコーディングではみなさん魂を振り絞るかのように集中して挑まれるので、そうそう何回もテイクを重ねられるものではないんですよ。しかもその瞬間に生まれる流れやグルーブは一度っきりのものなので、毎回ドキドキでしたね(笑)。

ーーセルフカバーとなる「水の星へ愛をこめて」には今回、ジャズバイオリニストの寺井尚子さんが参加されています。

森口:以前、フェスや番組でコラボさせて頂いた時、尚子さんのドラマティックでエネルギッシュな演奏に痺れたんです。しかも、私の歌声を「こんなにまっすぐに歌える人、届けられる人はそういない」と褒めて下さって、こころ強かったです! この曲はストリングスの音色が大事だなっていう思いが強くあったので、寺井さん以外考えられませんでした。レコーディングはもう圧巻でした! 情熱的、かつ歌うような繊細な演奏は本当に素晴らしかったですね。ガンダムを知らない方でも聴き入っちゃうと思います!!

森口博子 with 寺井尚子「水の星へ愛をこめて」( 森口博子「GUNDAM SONG COVERS」収録 )

ーーこの曲のジャズテイストのサウンドを含め、本作収録曲はどれも今の森口さんにふさわしいアレンジになっていますよね。

森口:アニソンはアニメと寄り添ったものなので、その当時に聴いていた原曲のイメージが当然強いものなんですよ。だから今回の新たなアレンジをどう受け止めてくれるんだろうってすっごく楽しみにしていたんです。そしたら、先日2ショット撮影会でこの曲を初お披露目したときに、「新しいアレンジ、最高です。感動しました!」っておっしゃってくれた方がすごく多くて。それはつまり、私自身がジャジーなアレンジに真正面から向き合える年齢になったのと同様に、ファンのみんなも大人になったんだということでもあるのかなって。そんな発見もあったんですよね。

ーーボーカルにも今の森口さんの表現が詰まっていますよね。

森口:そこに関しても、ライブやイベントで歌う度に「今の歌声で『水の星へ愛をこめて』をCDにして欲しい」という声をいただくことがすごく多かったんです。「当時の声もいいけど、大人になって歌詞をより深く解釈できるようになったことで表現力が増しているから」って。そんなボーカリスト冥利に尽きることを言ってもらえてすごくうれしかったんです。でも、その分、いざレコーディングする段階になると、けっこう緊張しちゃいましたね(笑)。数えきれないほど歌ってきているはずなのに。

ーーあらためてCDに刻まれたご自身の歌声を聴いて、どんなことを感じますか?

森口:フレーズによっては、なんとなく昔の歌い方になっちゃってるところもありますよね。(笑)。ただ、原曲とは違った歌い方をしようって最初から決めていたところもあったんですよ。それは〈永遠(とお)い祈りなのね〉のところ。当時、17歳だった私はそこを弾んで歌っちゃってるんですよ。若さゆえのフレッシュさが出ちゃったんでしょうね(笑)。なので、その部分に関しては大人として、より大事に歌えていると思います。「水の星へ愛をこめて」はこれから先、歌い続けていくことでまたいい意味で変化していくことになるだろうし、それも含めてみんなと一緒に楽しんでいけそうだなって今回のレコーディングを通して実感しましたね。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる