RADWIMPS『天気の子』、セールス好調続く 野田洋次郎は“マルチな音楽家”に

参考:2019年8月12日付週間アルバムランキング(2019年7月29日~2019年8月4日)

 8月最初の週間アルバムチャートです。先月は1位→2位→2位→1位→1位とトップを独走してきた嵐『5×20 All the BEST!! 1999-2019』が3位にランクダウン。とはいえ、まだまだ息の長いセールスを続けています。

RADWIMPS『天気の子』

 嵐ばかり追っていると見逃してしまいますが、ここ数週間しっかり売れ続けているもうひとつの注目作が4位のRADWIMPS『天気の子』。先々週に4.3万枚で3位、先週は2.4万枚で2位、今週は1.4万枚の売り上げを記録し、累計はすでに8.1万枚超え。バンド名義の作品としても、映画のサントラとしても、これほどのセールスをさらりと叩き出せることがまず素晴らしい。

 『天気の子』は、国民的ヒットとなったアニメーション映画『君の名は。』に続き、新海誠監督とがっちりタッグを組んで制作されたもので、いわゆるスタジオアルバムとは趣向が違います。主題歌「愛にできることはまだあるかい」を筆頭に、「大丈夫」や三浦透子をボーカルに迎えた「グランドエスケープ」など単曲の評判も高いのですが、あくまで劇伴として、アニメの世界観に寄り添っている仕事ぶりに注目したいところ。

 通常、ロックバンドのシンガーは感情の起伏が強く、自分の思いを形にしたい、そのためにも自分を深く掘り下げたい、と考える傾向があるように思います。野田洋次郎ももちろんそういう曲を書き、時には強烈なダークサイドと対峙してきたシンガーのひとり。「(劇伴において)自分の音楽性はどうでもいいと思っている」とは、自身も音楽家として活躍し、数々の劇伴を手がけてきた大友良英の言葉(参照)。それを踏まえると、野田洋次郎って本当に前例のない才能を発揮していますよね。そんなマルチな音楽家に彼自身が望んでなったのだ、というべきかもしれません。

 ロックバンドとして「前前前世」のようなヒット曲を書き、同時に「洗脳」や「PAPARAZZI~*この物語はフィクションです~」のようにタブーすれすれのテーマにも挑んでいく。さらにソロで実験性を爆発させ、劇伴ではプロの仕事を完遂する。他にも楽曲提供やプロデュース業も楽しんでいるようで、今の彼は、まさに音楽家として脂が乗り切った状態でしょう。気の早い話をしてしまえば、現在30代前半の彼が将来的にどんな音楽家/表現者になっているのか、楽しみでなりません。

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