坂道、アンジュルム、ももクロ、BiSH……アイドルにとっての“衣装”とは? グループの特徴を考察
ハイファッション・モード系の女性向けファッション誌である『装苑』の表紙を、アイドルグループであるBiSHが飾った。最新アルバム『CARROTS and STiCKS』のための衣装に身を包み、パンキッシュなヘアメイクで「絶対衣装。」という特集タイトルを背負って立つ。射抜かれるような強いまなざしには「この特集には、私たちがふさわしい」と言わんばかりの力強さが垣間見える。
アイドルにとって、衣装とは何なのだろうか。
単なる身に纏うもの、という役割を超えてアイドルにおいて衣装の役割は非常に重要だ。民族衣装が言葉や歴史、宗教などを反映し、文化・伝統を共有する集団の中で用いられる衣服を指すのであれば、その意味にほど近い存在になりつつあるのかもしれない。グループそして個人への祈りにも似た愛情が詰め込まれ、各グループが目指すべきアイドル像を象徴するような、特色ある衣装が多く生まれている。『装苑』の衣装特集をきっかけに、今現在の特色ある衣装を着こなすアイドルたちを紹介したいと思う。
アイドルの衣装ブームの先駆けとなり、多くの人が衣装をアイコン的に認識するようになったのはAKB48がはじまりだろう。彼女たちが身につけた、制服をベースにした赤チェックのデコラティブな衣装は真似しやすいダンスと共にお茶の間を席巻し、模した衣装が激安量販店ドン・キホーテのコスプレコーナーに並んだ。そして現在、AKB48のライバルグループである坂道シリーズは、よりグループの個性を象徴した衣装で踊る。乃木坂46は私立女子校系といえるだろう。最近は制服という枠組みから外れバリエーション豊かだが、はじめの頃は膝下スカートに、淡い色味の衣装が印象的だった。バレエのような伸びやかなダンスにシフォン素材のスカートがなびき、グループの清楚で品のあるキャラクターを引き立たせている。対して欅坂46はカッコいい系。歌詞にある孤独/戦いといった欅坂46独特の世界観を際立たせる、色味も渋く重厚感のある衣装が印象的だ。時にはドクターマーチンのブーツやモッズコート、軍服を用いた飾りなどカッコいいモチーフが採用され、彼女たちが持ついい意味での“隠”的要素を引き出している。
グループのイメージを象徴する衣装がAKB48や坂道グループだとするならば、より「個」のイメージを象徴する衣装を用いるグループもある。スターダスト所属のももいろクローバーZはメンバーカラーで個性を主張し、各色がグッズを彩り、メンバーそしてファンのアイデンティティとして昇華されるまでになった。特徴的な衣装はコスプレ的な要素を強め、ライブ会場にはももクロと同じ衣装を身に纏ったファンたちも並んだ。一目で推しメンがわかる衣装は、彼女たちの作品の一部。ももクロ以降、多くのグループがメンバーカラーを採用するようになった。
さらに「個」に特化した私服的衣装でオリジナリティを追求しているのがハロー!プロジェクト、特にアンジュルムの衣装はインパクトのある個性豊かなデザインだ。メンバーのひとり、文化学園大学短期大学部ファッション学科を卒業した勝田里奈がメンバーの衣装をコーディネートするようになったことも大きなきっかけだろう。私生活も知っているメンバーだからこそ、「和田(彩花、2019年6月卒業)さんはアート好きだからグラフィカルで品のある雰囲気」(『装苑』9月号)などそれぞれの性格やイメージが色濃く反映できる。最近のツアーでは、メンバーカラーも無視された、全員が全く異なる古着もMIXしたド派手な衣装を着こなしていた。ハロプロらしくシャイニーな素材感や肌見せもありつつ、アイドルらしさに縛られないスタイリッシュでファッショナブルな衣装は彼女たちのキャラクターによく似合っていた。媚びることなく「私が着たいものを着る」、それでいいんだと思わせてくれる。