SCREEN modeが語る、ノンタイアップ作で深化したアーティスト性 「新たな一面が見せられた」

SCREEN modeが語る、深化したアーティスト性

ここまで突き詰めたことはなかった(勇-YOU-) 

ーーそうすると3曲目「友情ごっこ」だけちょっとニュアンスが違いますかね。言葉遊びをふんだんに取り込んだ恋の歌。

雅友:「友情ごっこ」は勇-YOU-の考えた設定があって、あとはTRUE(唐沢美帆)に任せました。僕は彼女の事務所に以前お世話になっていた時期があり、仲がいいんですけど、TRUEはずっと僕らのことを見ているから、この人が何を書くのかな? ということに興味があったので。

勇-YOU-:僕が出したのは「三角関係」という設定で、手のひらで転がされてるような、でもそれを認めたくない自分がいて、みたいな。駆け引きですね。

雅友:そしたら出てきたのがこれだった。一瞬「お?」と思いましたけど、TRUEの答えはこれなんだと思って、そのまま使わせていただきました。面白い歌ですよね。

ーー童謡の「かごめかごめ」とか、いろんな語呂合わせを散りばめながら物語が進んでいく。

勇-YOU-:発想がすごいよね。タイトル見た時はびっくりしましたけど。インパクトがすごくて。

ーーこれもやはりノンタイアップ作じゃなきゃできなかったという。

雅友:まさにそうですね。

ーーあらためてTV アニメ『文豪ストレイドッグス』第3シーズン挿入歌「WRIGHT LEFT」については?

雅友:第2クールの主題歌になった「Reason Living」を踏まえて、信頼していただいて、「お任せします」と言っていただいたので。複雑性に関しては、これ以上ないだろうというぐらい壮大なものになりました。ほかの曲がシンプルに作られていることの対比として、「こういう曲もやるよ」ということです。ちなみに作品の中では7分11秒の別バージョンが流れるんですよ。原曲は5分ぐらいなんですけど。

勇-YOU-:クライマックスのバトルシーンで流してもらうので、それに合わせて。

雅友:なかなかないですね。アニメサイドの愛を感じました。

ーー6曲揃って新しい音と新しい歌詞。SCREEN mode新時代の幕開けだと思います。

雅友:結果としてSCREEN modeの新たな一面が見せられたと思いますね。「友情ごっこ」も、ビッグバンドっぽいけど本当のビッグバンドにしないとか、「ATTITUDE」もエイトビートのロックっぽい曲だけど、アコギが主体の透明感あるオケの中で歌を聴かせるとか、それが僕の今のマイブームなので。SCREEN modeも長くやってきたので、もっと細かい部分まで詰めたものづくりをしたい思いがあって、今回は勇-YOU-の歌を剥き出しにしていったわけですね。歌の消え際の息の使い方とか、ビブラートの深さや速さとか、全部を聴き手に伝えたくて、実は「約束の空」は4回歌を録り直したんですよ。アニソンではなかなかないというか、J-POPでも4回録り直すことは最近なかなかないです。

ーーそれは1回録って、日をおいて録り直すという。

雅友:そうです。録って、聴いて、話し合いをして、「もうちょっと行けるんじゃない?」みたいな、日をあらためてやり直そうということが4回ありました。歌詞の一言一言に至るまで、この声色でいいのか、音の長さはこれでいいのか、細かい話をしながら録ったんですね。その緻密さはほかの曲にもフィードバックしてると思うんですけど、「約束の空」は特に時間をかけてやりました。勇-YOU-の歌唱力があると、適当に……というと誤解されそうですが、パッと聴きでスッと歌えてしまうんですよ。たいていのものは。歌えちゃうからこそ、通過してしまう部分があるというか、新幹線から見る景色みたいな(笑)。でも実際には細かい風景があるわけで、今回はそこを掘り下げたかったんですよね。

勇-YOU-:ここまで突き詰めたことは、正直今までなかったです。語尾の切り方、ビブラートの長さ、細かいところにこだわる大事さを学んだと思います。そうやっていろんな表現を生み出す中で、そこにちゃんと気持ちが乗るかどうか。技術だけじゃなくて、思いがちゃんとあった上でこの語尾になってるとか、感情と技術の共存はすごく意識して歌いましたね。

ーーちなみに、誰か参考にしたりしました?

勇-YOU-:やっぱり、聴きましたね。好きなアーティストで、バラードが上手な方の歌を。秦 基博さんとか、雅友さんに勧められたOfficial髭男dismとか。

雅友:玉置浩二さんとかね。あとは久保田利伸さんとか。そういう人たちって、そこまでこだわって歌ってると思うんですよ。時間はかかるかもしれないけど、そこに近づいていくのが勇-YOU-の本当にやりたいことだろうと僕は感じたので、今回はあきらめずにやろうよと言いました。著作権の用語で、音楽を録音することを「固定する」と言うんですけど、「約束の空」を録るたびに、「何月何日の『約束の空』です」と固定されていく。普通は1回固定したらそこで終わりですけど、今回みたいにノンタイアップで自分たちの作品ということになると、予算とスケジュールの許す範囲で何回も固定できる。そうすると、どこで固定すればいいのか? という判断がすごく難しいんですよ。僕はこの業界に入って15年ぐらいですけど、今までで一番それを痛感しました。だから4回録ってみて、最高ではないかもしれないけど、自信を持って「これが僕たちの『約束の空』です」と言えるところまで行ったと僕は判断して固定したんですけど、でももっと先があるのかなということは、4回目の録音の日にも思ったので。秦さんや玉置さんのような説得力のある、勇-YOU-の歌というものがもっとあるんじゃないかと思って、本当にここで固定していいのか? と思ってました。

ーーそれは前向きな迷いだと思いますよ。

雅友:詞を書いた松井五郎さんからも何回か連絡をいただいて、アドバイスをもらいました。「歌っていく中でどんどん新しい景色が見えてくる歌詞だと思うから」とおっしゃってましたね。この先この曲をライブで演奏していく中で、年を追うごとに変わって行って、いつか完成していくんだと思います。

ーー「約束の空2019」ですね。今のところ。

雅友:勇-YOU-さんが年を取るごとにバージョンアップしていく。「歌は50歳から」だっけ? 玉置さんが言っていたんですけど。

勇-YOU-:かっこいいなあ。玉置さんが言うと説得力がある。俺なんてまだまだですよ。

雅友:そういうことに6年目にして気づけたということは、僕自身の実感としてあります。今回の経験が、次にアニソンをやる時のフィードバックにもなるだろう、という思いがあります。それがSCREEN modeにしかできない曲ということになるんだと思います。

ーー最後に、8月4日のワンマンライブの話で締めましょう。『SCREEN mode Summer Live 2019“Laughing Stars”』。どんなライブになりそうですか。

雅友:前回はアコースティックライブだったので、基本的には派手にやろうと思ってます。ただ今回のアルバム制作を踏まえて、古い曲のアレンジも見直して、がっつり歌を聴かせるようにしたいなとは思ってます。盛り上がり系の曲も含めて、あらためてちゃんと聴いてもらいたいですね。

勇-YOU-:ミニアルバム『約束の空』を引っ提げてのライブです。こうやって自分の根っこにある気持ちを打ち出すのは初めてなので、より気持ちを込めて届けたいと思います。「Laughing Stars」というタイトルですし、みんなに笑顔になってもらいたい、楽しんでもらいたいという気持ちを強く持って、表現していきたいなと思いますね。

(取材・文=宮本英夫)

SCREEN mode『約束の空』

■リリース情報
『約束の空』
発売:2019年7月3日(水)
価格:¥2,500(税抜)

<収録曲>
01. ATTITUDE
作詞:勇-YOU-, Kino Sei 作曲 / 編曲:太田雅友
02. Feel good
作詞:村野直球 作曲:太田雅友 編曲:太田雅友, EFFY
03. 友情ごっこ
作詞:唐沢美帆 作曲:太田雅友 編曲:太田雅友, EFFY
04. 約束の空
作詞:松井五郎 作曲:SCREEN mode 編曲:太田雅友, EFFY
05. smile
作詞:勇-YOU- 作曲 / 編曲:太田雅友
06. WRIGHT LEFT
作詞:松井洋平 作曲 / 編曲:太田雅友 Strings Arrangement:EFFY(FirstCall)

■ライブ情報
『SCREEN mode Summer Live 2019“Laughing Stars”』
日 程:2019年8月4日(日)
場 所:東京・下北沢GARDEN

オフィシャルサイト

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる