セルフカバーアルバム『ROLLY'S ROCK WORKS』インタビュー
ROLLY、セルフカバー作を語り尽くす「ミュージシャンと音楽ファンの両方の気持ちがある」
一回引退して、半年後にはニューROLLYとしてデビューしたい
ーーじゃあ、新しく書かれた3曲というのは、どんなふうに発想されました?
ROLLY:これはね、夏目さんから、新曲を2曲ぐらいは入れてくれって言われて。それでねえ、どういうのにしようかなあ……と思ってたんですけど。ある日、朝パチッと目を覚ましますと、突然聞こえてきました。すべてが。雷がピカッ! ティンパニーがドーッ……イメージとしては『ライオン・キング』のごとく、あるいはThe Whoの『トミー』のエンディングのごとく、崖の上に自分が立ってて、後ろはでっかい太陽。〈たった今開いた 音楽の扉が 呪縛から解き放たれ 羽が生えたように メロディが歌いあがる 燃え上がる この想いを伝えたい〉ーーっていう、1曲目の「天地創造」の歌詞、メロディ、絵、入ってるサウンド、全部が瞬間的に見えましてね。「あ、見えた!」と思ったので、その場で15分ぐらいでデモを作りました。
そして、これをさらにアホらしいものにするために、次の「Eejanaika」をーークレジットでは1曲目、2曲目ってなってますけど、ほんとは2つで1曲なんです。旧約聖書の「天地創造」みたいな風景から、いきなりすし太郎みたいな、板前がハッピ着て全員でええじゃないかええじゃないかと歌う、これぐらいのナンセンスさの曲がほしいなと思って。
この曲の元ネタっていうのはね、ある日、近所のネパール人がやってるインドレストランに行ったの。そしたらBGMで、ものすごいかっこいいインド音楽が流れてきて。なんだこれ! と思って、その曲を探したらあったんですよ、聴いてみますか? (と、スマホで曲をかける)。
ーーほんとだ、かっこいいですね、これ。
ROLLY:ねえ? 映画の音楽でした、調べたら。サビでもう、パン屋から犬から全員が「ええじゃないかええじゃないか」って踊る感じなんですよ。このハッピー感にすごく影響を受けましたね。
だから、オープニングはとにかく、ロックのレコードでこんなもん絶対ありえないだろう、というものにしたかったわけです。23年前、すかんち解散後に最初に出した『ROLLY’S ROCKROLLY』(1996年)っていうアルバムでね、とにかく聴く者の度肝を抜こうと思って。1曲目が「恐るべきロックローリー」っていう、10分にも及ぶロックオペラで。あまりにも常識からかけ離れていたために、試聴機で聴いた人が「これはロックじゃない」って思ったらしくて、ものすごい評判悪くてね。
1曲目はもっとわかりやすいものにしとかなきゃいけなかったんだ、もう二度とこんなことは絶対やったらあかんな、と心に誓ったんですけど、自分の55周年を記念して、もう一回やろうかなと(笑)。一回やって反省したらそれで終わりだけど、一回やって反省したくせにもう一回おんなじことをやるというところに、男気を見てほしかったんです(笑)。
ーー最後に入っている新曲も、いい曲だけど、シャンソンですよね。
ROLLY:これはねえ、QUEENの『世界に捧ぐ』の最後に「マイ・メランコリー・ブルース」って曲が入ってる、あれみたいな立場ですね。ほんとに僕……このアルバムが5月21日に発売されたんですけど、3月の終わりにシンコーミュージックさんから、『ROLLYのロック・ギター異人館』っていう本を出してね。絶対に他の人は取り上げないであろうギタリストばっかりを取り上げた連載を、ヤング・ギター誌でやってまして、それをまとめた本で。
カナダのロックバンド、Triumphのリック・エメットは、いいギタリストなんだけど、みんな、聴いたことはあるかもしれへんけど、深く掘り下げてはないじゃん。それとかAC/DC、アンガス・ヤングのことしか本とかには載ってないけど、実はAC/DCの音楽にはマルコム・ヤングのカッティング・ギターが……Scorpionsで言いますと、ルドルフ・シェンカーーー。
ーーはい、マイケル・シェンカーのお兄さん。僕もついていくのギリギリです(笑)。
ROLLY:そんなギタリストばっかり載せてる本なんですよ。その本の第一楽章に、Triumphについてみっちり書いていて。ぜひ本を買って、Triumphの『ジャスト・ア・ゲーム』を聴いてくれるとうれしいんですけど。でねえ、そのアルバムの最後も、こんな感じで終わるんです。「スーツケース・ブルース」っていう曲で。
ーー(笑)あ、そう話がつながるんですね。
ROLLY:じゃあ今出すね、Triumph。聴いてみればすむわけやからーー(と、スマホでTriumphの音源を出す)ーーでね、このアルバムを……オジー・オズボーンの『ブリザード・オブ・オズ』は聴かれました?
ーーはい、邦題が『血塗られた』ーー。
ROLLY:『英雄伝説』。ランディ・ローズのガット・ギターで奏でる「ディー」って曲があるじゃないですか? その元ネタは、Triumphのこの曲(「ファンタジー・セレナーデ」)だと思います。ランディは絶対Triumph好きだったと思う。で、『ジャスト・ア・ゲーム』、QUEENの『世界に捧ぐ』のちょっと後やから、影響され合ってるようなところも感じるんです。その本を熟読して、Triumphの『ジャスト・ア・ゲーム』を聴いて好きになってくれる人ならば、このアルバムの「Dear Music」の終わり方を通じて、僕が仕掛けた甘い罠に、Cheap Trickに、気がついてくれるんじゃないかな(笑)。
ーー2020年は、デビュー30周年ですよね。こんなことをやりたい、って何か考えているアイデアはあります?
ROLLY:あのね、今年になってから、『ロック・ギター異人館』という本を出しました。で、このアルバムを出しました。その前にもPHP社から、全国の中学校に密かに置かれている名作、『みんなとちがっていいんだよ キミに届け! セミの法則』っていう本を出しまして。それで今(2019年6月)、ツアー中でございます。そのツアーの間にもいろいろやっていて、7月は『パリ祭』っていうシャンソンのイベントのツアー、美川憲一さんとか山本リンダさんとか何十人も出る、僕はそれの司会者で各地を回るんです。あと、8月には、絵本に合わせて演奏して、子供に読み聞かせをするという、これも10年ぐらいやってるんですけどーー。
ーーああ、三軒茶屋シアタートラムの。
ROLLY:そうそう。で、9月になったら、三谷幸喜監督の映画『記憶にございません』、中井貴一さんが内閣総理大臣で記憶喪失になる話なんですけど、僕も出ていて、その映画が公開されるので、キャンペーンもあって。それが終わったらすぐに、ティム・バートンの映画で有名な『ビッグ・フィッシュ』、2年前にやったミュージカルの再演があるんです。っていうふうに、いろんなことをやりまくっているので、30周年で次は何をやりますか? って言われると、何やっていいのかわかんない(笑)。でもまあ、音楽家としては、いちばんドンとやらなければいけないことは、オリジナルニューアルバムを作ることですもんね。……。
ーー今日初めて沈黙しましたね。
ROLLY:いや、実を言うとね、イヤですね(笑)。若い頃はね、義務みたいに1年に1枚はアルバムを作ってたけど、どんどん自分に対する審美眼が厳しくなっていくでしょ。だから、そんな簡単にアルバムを作れなくなっていくんですよね。あと僕、ミュージシャンとしての自分の気持ちと、一音楽ファンである自分の気持ち、両方があるから、そこの葛藤も……Kula Shakerなんかも、アルバム2枚で一回解散して、再結成してまたアルバム出してるけど、やっぱり聴くのは最初の2枚ですもんね。だから僕が今、ものすごくいいアルバムを、命を懸けて作ったとしても、QUEENで言うと『ザ・ミラクル』(1989年)のようになる気がする(笑)。だけど、やらなければいけない。そのためにはどうすればいいのか? っていうのがねえ……。
その点、このアルバムは、すでにある曲のリメイクなので、自分の中ではいい感じに、ニューアルバムとして作れたんですね。だからよけい、次に新曲ばっかりのニューアルバムを作るというのが難しいのよね。そのためには何か……一回UFOにでも拉致されるとかないと。だから、来年30周年で、何をやるかって考えたら、いちばんやりたいのは……恥ずかしいんですけど、生まれてから、日本武道館公演をやったことがなくてね。
ーーえ、すかんちでやってない?
ROLLY:やったことない! なんとなくいけそうな感じの時はあって、やっときゃよかったんですけど、やらずに解散しちゃったもんで。だから、死ぬまでに一度、武道館公演をやるとしたら、引退コンサート!
ーー来年引退するんですか(笑)。
ROLLY:ROLLYデビュー30周年にして初武道館、さよなら公演! って言って、ミラーボールの回る中、ギターを置いて立ち去って(笑)。それで一回引退して、半年後にはニューROLLYとしてデビューしたい。映画『ベルベット・ゴールドマイン』、あれ、伝説のロック歌手・ブライアンが引退するじゃないですか? あんな感じで。あるいは、デヴィッド・ボウイが『ジギー・スターダスト』で“ジギー”を引退するみたいに、引退公演をやってみたいな。絶対復活するのはわかりきった上で、みんなで盛り上げていくっていう遊び、どうかな?
(取材・文=兵庫慎司/写真=中野敬久)
■リリース情報
『ROLLY'S ROCK WORKS』
発売:2019年5月21日(水)
価格:¥3,000(税抜)
<収録曲>
01.天地創造 [ROLLY新曲]
02.Eejanaika [ROLLY新曲]
03.僕等のセンチュリー [ももいろクローバーZ]
04.恋のトレモロマジックダーリン [八木田 麻衣]
05.秘密のギミーキャット~うふふ 本当よ~ [PUFFY]
06.恋のROCK’N’ROLL!DRIVE! [藤木 直人]
07.眠れる森の少女 [9nine]
08.宇宙のMON DIEU [MEG]
09.恋してキメル! [KIMERU]
10.鏡の中のフェアリーテール [高橋 瞳]
11.恋するラヴレター [豊崎 愛生]
12.未来泥棒 [イヤホンズ]
13.Dear Music [ROLLY新曲]
※[ ]内は曲提供アーティスト
■ライブ情報
『ROLLY'S ROCK SHOW TOUR 2019』
バンド:ROLLY& GlimRockers
6月9日(日)仙台MACANA ~ロックの日記念日~
6月15日(土)千葉 LOOK
6月22日(土)F. A. D yokohama
7月25日(木)京都磔磔
7月26日(金)岡山Desperado (対バン:Neo Fantastic)
7月27日(土)広島Back Beat (対バン:Neo Fantastic)
7月28日(日)博多CB (対バン:Neo Fantastic)
8月17日(土)大阪 心斎橋JANUS
8月23日(金)渋谷 CLUB QUATTRO
8月25日(日)名古屋TOKUZO