ROLLY、セルフカバー作を語り尽くす「ミュージシャンと音楽ファンの両方の気持ちがある」

ROLLY、セルフカバー作を語り尽くす「ミュージシャンと音楽ファンの両方の気持ちがある」

 QUEENもしくはSWEETばりの幾層にも重なった分厚いコーラスは、すかんちの頃からの得意技だが、本作ではそれが「入っている曲もある」ではなく「入っている曲だらけ」である。70年代のグラムロック、ハードロックを基本にしつつ、そこに歌謡曲やフォークやシャンソンなどを取り入れまくる「他の人は決してやらないミクスチャーロック」であるところも、すかんち以来一貫しているスタイルだが、その元ネタの範囲が本作では途方もなく広くて深くて遭難しそうになる、聴いていると。

 2015年と2016年に自身に影響を与えた70年代の日本のロックのカバーアルバム、2017年はそのライブアルバムをリリースしたROLLYが、2019年5月に発表したのは、ももいろクローバーZやPUFFY、高橋瞳や藤木直人などに提供してきた楽曲のセルフカバー10曲に、書き下ろしの新曲3曲を加えた(本人曰く)ニューアルバム。東洋一トゥーマッチなミュージシャンがさらにトゥーマッチになった、ちょっとどうかと思うほど聴き応えある本作が生まれた背景などを聞いたのが、というか例によって鬼のようにしゃべりまくってくださるさまを拝聴したのが以下のテキストである。

 なお、「それ俺しかわからないっすROLLYさん」な箇所と「それ俺もわからないっすROLLYさん」な箇所は極力カットしましたが、それでも少しは残しております、会話のムードを消さないために。興味を持たれた方は、各自調査していただけますと幸いです。(兵庫慎司)

はじめにやりたいと思ったのは中学生の時 

ーーこのように、自分が他のアーティストに提供してきた曲をセルフカバーして、アルバムを作りたいというのはーー。

ROLLY:自分が過去29年間の中に、かつていろんなアーティストに提供してきた楽曲を、自分で演奏してまとめた究極のアルバムを制作したい、っていう思いは、ずっとありました。はじめに「こういうのをやりたいな」と思ったのは、中学生の時でーー。

ーーええっ?

ROLLY:というのもね、森進一の「襟裳岬」、キャンディーズの「やさしい悪魔」、石野真子のデビュー曲「狼なんか怖くない」。この3つに何が共通してるかお気づきですか? 作曲家が吉田拓郎。「狼なんか怖くない」の頃に、吉田拓郎さん、『ぷらいべえと』というアルバムを出されたんですよ(1977年)。自分が人に提供した楽曲を自分で歌ったものと、あと何曲かは石原裕次郎「夜霧よ今夜もありがとう」とかのカバーも入ってたね。

 そのアルバム、買ったんですよ。驚きましたね。「襟裳岬」は、森進一の圧倒的な個性により、森進一のものになってたけど、吉田拓郎さんが歌うとまさに「これが吉田拓郎である!」ということが、ものすごく際立つんですよ。キャンディーズの「やさしい悪魔」も、本人が歌うと、もうまったく吉田拓郎そのもの。それを聴いた時に「なるほど!」と。自分がいつかみなさんに曲を提供することがあったら、こんなアルバムを出したいって思ってましたね。1曲も作曲したことない時から(笑)。

ーーで、実際に人に提供するようになったのって、最初はいつ頃ですか?

ROLLY:最初はおそらく、1994年のTOKIOのデビューアルバムに、「恋のカリキュラマシーン」という曲をね。プロデューサーがすかんちと同じ白井良明さんで。僕が作った曲を良明さんがアレンジしたわけだから、もうそのまま、まさにすかんち! っていう感じで。先日も、ドラムの松岡(昌宏)さんの主演ドラマ、『家政夫のミタゾノ』の最終回で、ロックスター役で出演させてもらったんですけど、彼はそのことを憶えてくれてはって。そのTOKIOから始まって、東京パフォーマンスドールの八木田麻衣さん、「恋のトレモロマジックダーリン」(1996年)だとかーー。

ーーああ、このアルバムにも入ってますね。

ROLLY:八木田麻衣さんとはその後、一緒にジャングルブッダというグループも結成して、CDも1枚出しました。あと、楳図かずお先生(「木村の兄さん」1996年)。それから、永作博美さんがいたribbon(「花柄のスリル」1992年)ーー。

ーー昔からいっぱい書いてるんですね。

ROLLY:これ、吉田豪さんが言ってたことなんですけど、「ROLLYの作るアイドル曲にハズレはない」と。すかんちの音楽っていうのは、当時のロックバンドにしては非常にアイドルっぽかったと思うんですね。ロックバンドがアイドル風の曲をハードに演奏する。だから、いち早く目をつけてくれたディレクターの方たちは、僕に「『恋のマジックポーション』みたいなやつを!」って言うわけ。

 でもね、残念なことに、僕のお客さんは、「やさしい悪魔」をファンは吉田拓郎さんの曲だと思ってなかったりするのと同じで……たとえば、浜田省吾のファンの人は、浜田省吾が初めてアイドルに提供した、能瀬慶子「アテンションプリーズ」をーー。

ーーええっ、あの曲そうなんですか!? (注:1979年、ホリプロスカウトキャラバンで優勝した能瀬慶子のデビューシングル)。

ROLLY:そう! 浜田省吾が歌ったバージョンが、YouTubeにあったんですよ。完全に浜田省吾だった! 僕は浜田省吾もすごく好きで、初めてアイドルに曲を作ったというので、能瀬慶子のアルバムも買いました。能瀬慶子が当時親御さんと同居してる家の、自分の六畳間のレイアウトも手描きで載ってたね(笑)。

 話を戻すと、すかんちは70年代の、SWEETとか、スージー・クアトロ、SLADEみたいなB級グラムロック、プラス、そこにLed ZeppelinとQUEENですよね。それだけだと洋楽っぽいんだけど、そこにアイドル歌謡の要素が入ることで、すかんちらしさが生まれていたんですよね。それを教えてくれたのは、近田春夫さんなんだろうね。近田春夫&ハルヲフォンが、すっごい好きだったので。

 近田春夫&ハルヲフォンが、1978年に歌謡曲のカバーアルバムを出したの。『電撃的東京』。それがねえ、郷ひろみ、ザ・ピーナッツ、森進一、フォーリーブス……ベッタベタな歌謡曲なんですけど、全曲ものすごいスピード感のある、初期パンクみたいな演奏で。すかんち、デビューしてからずっとタイトルが、「恋のT.K.O.」「恋の1,000,000$マン」「恋のロマンティック・ブギ」「恋のマジックポーション」、全部「恋の」だったのは、ハルヲフォンからの影響だったのかもしれない。

ーー……あ! すみません、話がそれるけど、いいでしょうか。

ROLLY:どうぞどうぞ。

ーーさっき楳図かずお先生に曲を書いたという話が出ましたけど、僕、近田春夫&ハルヲフォンを知ったの、『まことちゃん』です。

ROLLY:ああ、よく出てきてましたね! 僕が楳図さんに書いたシングル曲「木村の兄さん」のカップリングがアニメ映画『まことちゃん』のオープニング主題歌「パパ&ママROCK」のセルフカバーだった。最初の「パパ&ママROCK」のプロデュースは、近田さんだったような気がするな。で、『まことちゃん』に、らん丸っていうグラムロックスターのキャラクターが出てくるじゃないですか? 普段はすごいスターなんだけどーー。

ーーああ、正体はハゲててチビのお爺さん!

ROLLY:そうそうそう! それって実にグラムな感じじゃないですか? まことちゃんが楽屋をのぞき見しちゃうのよね。楳図さんから「ROLLYさんは、らん丸に似てるから好き」って言われて(笑)。うれしかったですよ。そのご縁で僕、『楳図かずお祭り』の司会やりましたもん……アルバムと全然関係ない話に行きましたね(笑)。

ーーこのアルバム、13曲中10曲がセルフカバーで3曲が新曲ですけども。過去の膨大な提供曲の中から、この10曲をどんなふうに選んだのか。

ROLLY:ももいろクローバーZの「僕等のセンチュリー」は、人生で一度だけオリコン1位になった曲ですが、その曲も、まったく0.1ミリも売れなかった曲も、全部自分のお腹を痛めた子供なので、自分では選べなくてねえ。キングレコードの夏目さん(ディレクター)に選んでもらいました。夏目さんの僕の音楽に対する愛情を、僕は信じていますので。キングレコードに入社する時に、「好きな音楽はなんですか?」って聞かれて、「近田春夫&ハルヲフォンの『電撃的東京』が好きです」って答えて入社した人ですから。

ーーはははは。

ROLLY:で、選んでもらったら、いやあ、我ながら濃いものばっかりで。大変でした、レコーディングが。自分のアルバムだとね、全体の構成を考えて曲を作っていくから、力の配分も考えるじゃないですか。シングルみたいな曲は、アルバム1曲でひとつ、ぐらいの。でもこれは何も考えてない、もう大盛り料理の極致みたいな。普通食前酒から始まるところを、いきなり結婚式で出てくる富士山アイスクリームみたいな。「なんだこれは!」と思ったら、次は北島三郎一家がねじり鉢巻で寿司を握ってくれる感じの「Eejanaika」で、次はフィル・スペクター並の分厚いコーラスの「僕等のセンチュリー」で……もうやりたい放題やりましたね。特にコーラスワーク、3日間で800トラック録りまして。アゴが外れるぐらいに絶叫しまくったんでね、最後、リンパ節が腫れまくって、首の両側に湿布を貼ってね。それ以来体調おかしいですね。

ーーこのアルバムができあがって、通して聴いてみて、改めて気がついた発見って、何かありました?

ROLLY:改めて気がついたこと、あるんですよ。ほとんどの曲、おんなじコード進行です。

ーーあはははは!

ROLLY:全部一緒でしたわ。そう聞こえないのが不思議なんですけどね。アコギで弾き語ってみると、すごく単純な曲なのに、よくこんなふうに違う曲になってるなあと思って。

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