兵庫慎司の「ロックの余談Z」 第28回
Theピーズの日本武道館から2年 安孫子義一が飛び入りした32周年ワンマンを観てきた
2019年6月8日土曜日、上野水上音楽堂こと上野恩賜公園野外ステージにて行われた、『32周年ワンマン 1人ピーズin上野水上音楽堂』のアンコールに、Theピーズのギタリスト、アビさんこと安孫子義一が飛び入りし、はること大木温之とふたりで「Yeah」「ノロマが走っていく」「実験4号」「異国の扉」「生きのばし」「グライダー」の6曲を演奏した。
はるひとりの弾き語りライブであり、かつ、すり鉢状に座席ありの会場だったため、超満員(推定1000人オーバー)のオーディエンスは、その時まで、ほとんどの人が座ってライブを楽しんでいた。が、アンコールに応えて出てきたはるが、まず「ひとりくらいは」を歌い終え、「ここから先は夢ですよ! あれ、お願いします!」と叫んでSEが流れると、セミアコを抱えたアビさんが登場。大騒ぎになった。
上野水上音楽堂は、ステージの前がお堀になっていて少しスペースがあり、通路も広めにとってある会場なのだが、その空きスペースにみんなが詰めかけ、瞬時にしてギッシギシのオールスタンディング状態と化す。「実験4号」の〈ゆーワケで せっかくだし 悪いけど 続くよ まだ二人いる〉のところでは「おおおお!」とどよめきのような歓声が飛び、会場のあちこちでは男女問わず……いや、女性の方が多かったかな、とにかく、滂沱の涙を流す人、ハンカチでそれを拭う人が続出するという、なんだかもう途方もない光景になる。
いやいやいや、「実験4号」のそこんところで盛り上がっちゃったら、ドラムのシンちゃん(佐藤シンイチロウ)いなくなって、このふたりが残ったみたいじゃん! それに、何もそんなに泣かなくても。アビさん脱退したわけでもなんでもないじゃん、久しぶりなだけじゃん!
とは思ったものの、かく言う自分も、泣きはしないまでも、どうしようもなく興奮してしまったのは、事実なのだった。
なんせ、はるとアビさんが共にステージに立ったのは、2017年6月9日の、Theピーズ初ライブからぴったり30周年記念の日本武道館以来2年ぶり。つまり、アビさんが人前に姿を現したこと自体、2年ぶりとなる。
その日以来、シンちゃんはthe pillowsでの活動に専念。はるは、以前からやっていた1人ピーズ(弾き語り)と、TOMOVSKYとコゴローズ(アビさん脱退時にピーズでギターを弾いた土田小五郎のバンド)で精力的に活動。“1人ピーズ”は“2人ピーズ”(歌とギターのはるにベーシスト岡田光史が加わる)、そして“3人ピーズ”(さらにドラマー茂木左も加わる)という形にも発展、現在はその3形態全部ありでライブを行っている。