BUCK-TICK、気高く瀟洒なステージによる饗宴 『ロクス・ソルスの獣たち』最終公演

BUCK-TICK『ロクス・ソルスの獣たち』評

 アンコールは場内騒然となった客席側からの登場、センターステージにて披露されたアコースティックセットという誰もが予想していなかったものだった。BUCK-TICKにはアコースティックテイストを取り入れた楽曲は存在するものの、演奏形態として試みるのは初。しかも演奏されたのはアコースティックにはほど遠い「スズメバチ」。ノイジーなグラムロックナンバーを小粋なアレンジで小気味好くキメていく。豹柄のコートに赤髪の今井がアコースティックギターを掻き鳴らすシルエットは、いい意味でミスマッチ。プレイのみならずファッションでも奇抜な“ハズシ”でキメてくる彼らしい。「形而上 流星」はシンプルなアレンジが歌を際立たせ、まさに〈死ぬほど美しい〉情景を創り出した。


 今井の、久しぶりの一角獣の被り物に湧いたダブルアンコール。「さくら」で場内いっぱいに舞い散った花びら越しに崇高なBUCK-TICKの姿を見る。

「30年を迎えてみなさんに祝ってもらって31年目、まぁ、長いですね……。でもみなさんが楽しんで笑ってくれるんで、また次もいいもの作ろうなんていう気にさせてくれます」

 櫻井が感謝の意を述べると暖かい拍手に包まれた。最後の最後は「HEAVEN」。

「どうかみなさん、しあわせに、しあわせに、しあわせに……」

 楽曲が描く真っ白な世界をおおらかに歌い終えると、丁寧に三度、そう言い残し、ステージを去った。ギターのフィードバックノイズを置き去りにして。

 最新シングルから十数年ぶりに演奏された楽曲まで、新旧満遍なく組まれたセットリストであったものの、バンドを彩ってきた代表的なシングル曲や、ライブのテンションを一気に煽っていくような軽快なナンバーは1曲もなかった。一見、初心者に優しくない内容であるように思うが、それが実に彼ららしくもあり。媚びず流されず我関せず焉、BUCK-TICKというバンドの魅力を知るに相応しいものであるように思う。耽美で退廃的で妖艶で……なのに、なぜかキャッチーでもある。これがジャンル分け不可能、いや、不要か。これこそが、BUCK-TICKが他に例えようのないBUCK-TICKたる所以である。

■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログTwitter

BUCK-TICK オフィシャルサイト

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