NGT48問題がもたらす新潟経済への影響は? 『ご当地アイドルの経済学』著者が解説

 NGT48には有望なアイドルが多く所属し、このまま彼女たちが活躍の場を十分に得ることができないのは残念だ。だが、これは筆者が指摘するまでもなく、事務所のマネジメントが自ら招いている事態だということは明らかだ。いくつかのメディアから、「NGT48の再生にはどうすればいいのか?」と聞かれることがある。この問いはNGT48が新潟で経済的な成果を再びあげることができるか、という問いにもなる。

 『ご当地アイドルの経済学』の中で、2015年時点での日本全体の女子アイドル市場を試算したことがある。詳細は同書を参照にしてほしいが、いくつかの前提をみたせば、潜在的なアイドル市場の規模は2500億円ほどであった。県内総生産の規模から推測すると、新潟県のアイドル市場は、潜在的に約45億円ほどだと思われる。このうちNGT48はそのかなりのウェイトを占めただろう。この数字には、地元の自治体や企業とタイアップしたイベントでの集客とその関連の売り上げ、メディア出演での宣伝効果なども含まれている。

 特にNGT48が、新潟のイメージアップに貢献した影響は、この数年顕著なものがあった。どの地方もそうだが、文化的なコンテンツで地元のイメージをPRすることが難しい中で、NGT48の貢献は目覚ましかった。それだけに今回の事件は、まさに逆流とでもいうべきマイナスの経済効果を生み出している。

 あくまでも試算にすぎないが、派生効果も含めて考えると、地方自治体や企業のタイアップなどの自粛が続くとすると、年間で約35億円前後の市場損失になる可能性がある。もちろんNGT48の穴があいた部分を、他の有力なアイドル(NegiccoやRYUTistなど)が埋める可能性があるが、それでも規模的には限定されるだろう。いずれにせよ、あくまで目安の数字にしかすぎない。

 問題はこのような数字ではなく、アイドルのもたらす癒しや夢が毀損したことだろう。「NGT48の再生にはどうすればいいのか?」との問いは、あまりにも答えるに重い質問である。

■田中秀臣
1961年生まれ。現在、上武大学ビジネス情報学部教授。専門は経済思想史、日本経済論。「リフレ派」経済学者の代表的論客として、各メディアで発言を続けている。サブカルチャー、アイドルにも造詣が深い。著作に、『AKB48の経済学』、『日本経済復活が引き起こすAKB48の終焉』『デフレ不況』(いずれも朝日新聞出版社)、『ご当地アイドルの経済学』(イースト新書)など多数。『昭和恐慌の研究』(共著、東洋経済新報社)で第47回日経・経済図書文化賞受賞。好きなアイドルは、櫻井優衣、WHY@DOLL、あヴぁんだんど、鈴木花純、26時のマスカレイド、TWICE、NGT48ら。Twitterアイドル・時事専用ブログ

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