ZOCの信念を貫き通す眩しさ “家族”のように集った6人の特別な関係性

ZOCの信念を貫き通す眩しさ

 ZOCのメンバーと靖子ちゃんは、お母さんと娘、姐御と舎弟、保育士さんと園児……。「アイドルとプロデューサー」という枠組からはみ出した関係性。

 かなのちゃんが様々なインタビューで、家族(母親)との関係に問題があって育ったために、母親的存在を切実に求める心理を自己分析して語っていたけれど、かなのちゃん以外のメンバーも皆「安らげる場所」と「家族」を求めて、靖子ちゃんの元に集ったのかもしれない。プロデューサーとプロデュースされる人という上下関係とは全く違う、心の底から欲している、淋しくて堪らない人間が求めてやまない、血よりも濃い繋がり。そんな6人が全国デビューとして歌う楽曲のタイトルが、「family name」。

ZOC「family name」Music video

 “生い立ち”という逃れられない属性。それでも道を切り開いていくという気合い。かなのちゃんが出演したラジオで、共演者から何気なく発せられた「お母さんと色々あると思うけど、可愛く産んでくれたことだけは感謝しなくちゃね」という言葉に戦慄した。辛い目に合わされても、分かり合えなくても、自分の身体はその相手から生み出され、同じ血で作られているという事実。どんなに外側を塗り替えても、自分自身からは逃げられない。圧倒的に可愛い見た目は、武器であると同時に呪いにも思える。

 一回もアイドルを目指したことなんてないし、そもそも人前に立つことも超絶苦手な自分だけど、ZOCのことがとてつもなく羨ましい。可愛いから、スタイルがいいから、縷縷夢兎の衣装を着ているから、大好きな大森靖子ちゃんの曲をステージで歌って踊れるから、羨ましいのではない。あの奇妙で特別な6人の6人にしかない関係性が、羨ましかった。

 踊り方も歌い方も様々で、どんなに歪でも何ひとつ揃っていなくても、情報量多過ぎでも、全員が自分の信じる「美しさ」を貫いている。空気を読んで人に合わせたり、無難で人当たりのいい服を着たり、嫌なことを言われても笑ってやり過ごしたりする窮屈な日々の中、信念を貫き通す6人がとてつもなく眩しく見える。

 でも本当は、誰だってそういう風に生きられるはず。これから新しい時代が始まるのだから。

■松村早希子
1982年東京生まれ東京育ち。この世のすべての美女が大好き。

<雑誌連載>
『Rocket』コラム「きみは89番目の星座」
『TRASH-UP!!』コラム「東京アイドル標本箱」

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