エド・シーラン、唯一人のステージで世界最高峰のエンターテインメントを体現した東京ドーム公演

エド・シーラン、東京ドーム公演レポ

 2017年3月にリリースされた3rdアルバム『÷(ディバイド)』が世界中で驚異的なロングヒットを記録。ここ日本でも爆発的なヒットとなり、今年2月には「Shape Of You」が国内のストリーミングサービスで1億回再生を突破するなど、数々の記録を作り続けているエド・シーラン。昨年の日本武道館、大阪城ホールでの公演に続く今回のツアーの会場は東京ドームと京セラドーム大阪。筆者は日本武道館ライブを観る幸運に恵まれ、「ほんとに一人だけでこんなにすごいライブをやるんだ! すげえ!」と驚愕したのだが、今回のスケールはその数倍。この日もエドは、ギター1本と歌だけで5万数千人のオーディエンスと向き合い、感動と興奮を極限まで引き出す驚異的なステージを繰り広げた。

 17時45分、まずはオープニングアクトのONE OK ROCKが登場。ブルーの照明のなかメンバーがステージに現れると、会場から「おぉー!」という歓声が上がる。世界を視野に入れた活動を続けている彼らのステージは、エド・シーランのファンにもしっかりとアピールしていた。

 そして19時ジャスト、ついにエド・シーランのライブがスタート。バックステージから移動するエドの姿がスクリーンに映されると、凄まじい歓声が巻き起こる。

 ステージに登場したエドは、いつものようにTシャツとジーンズ姿。すぐにアコギを鳴らし、ボディを叩き、ループペダルで音を重ね、最初のナンバー「Castle On The Hill」を響かせる。会場からは手拍子と歓声が沸き上がり、エドの「Sing!」という声をきっかけに大合唱が起きる。歌とギターだけで数万人のオーディエンスを一つにする、彼にしか実現できない魔法のような空間が生まれ、早くも心を奪われてしまった。

 「日本は世界でいちばん好きな国。東京ドームでライブができたらどんなにいいだろうと思っていたけど、今夜、ここでライブをやれているのが信じられない」という感謝に溢れたMC、そして、「僕はひとりでライブをやるけど、ループペダルを使って、その場で音を重ねながらライブをやるんだ」といった説明を挟み、「Eraser」へ。アコギのリフとコーラスでトラックを作ると、本人はハンドマイクを持って前方に進み、アグレッシブなラップを披露する。観客のテンションは早くもピーク。自分がどういうミュージシャンで、どんなライブをやって、どんなふうに楽しんでもらいたいかをわかりやすく体現するパフォーマンスを目の当たりにして、「世界でトップに立つミュージシャンとは、こういうものか」と改めて実感させられた。

 この後は、トーク、曲、トーク、曲の順番で進行。思わず「さだまさしか!」と突っ込みたくなったが、これも“オーディエンスと密に接したい”という気持ちの表れだろう。アルバムタイトルの“÷”にも、巨大な樹木にも見えるオブジェ全体をスクリーンにした映像、楽曲のリズムと正確にリンクした照明も素晴らしいが、軸になるのはやはりエドのギターと歌(だけ)。しつこいようだが、ステージに立っているのは最初から最後までエド・シーランだけで、ギター、歌、ルーパーによって、すべての楽曲をその場で創造していく。「The  A “TEAM”」では観客がスマートフォンの白いライトを掲げ、「Don’t」では手拍子によって壮大なグルーヴが生まれるなど、オーディエンスと一体になりながら、豊かで奥行きのある音楽が生み出されるのだ。「次の曲は静かに聴いて」という言葉に導かれた「Tenerife Sea」では、静寂に包まれた空間のなかで、繊細なアルペジオと美しいメロディ、そして、〈I’m So in love,so in love〉というフレーズがゆったりと広がり、大きな感動へとつながった。

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