あいみょん、「ハルノヒ」などタイアップソングの歌詞に隠された巧みなテクニックを探る
話を「ハルノヒ」に戻そう。この楽曲は「北千住駅」のプラットフォームから始まり、視点はその銀色の改札、「2人」の座るベンチへと移動し、そこから「2人」の前にある木々や猫へと行き着く。まるで映画のワンショット撮影でのオープニングのようだ。意識的にせよ無意識にせよ、具体的な映像を脳裏に思い描かせることで、歌の世界に一気に引き込む技法を実に効果的に入れ込んでいる。その後も〈藍色のスカート〉という鮮烈なアイテムの後に心象を入れて、色彩も心の機微も強めたりするなど、歌詞というよりも超高濃度の小説という印象が強い。
一見シンプルに見えつつも、非常に多彩なギミックが盛り込まれているあいみょんの作風は、歌詞に意識的であるというのはもちろんであるが、インプットも官能小説を参考にしたり、日常の出来事を少し自分目線で咀嚼してからメモに残すなどし、「勝手にタイアップの曲作り」でアウトプットしてきたことにより育まれたものなのではないだろうか。日々培ってきたものが、血肉となり、個性となり、その個性が沢山のコンテンツと共に咲く。本稿を書いて、改めて彼女の引き出しの多さに驚かされた。
(文=石川雅文)