松下優也が明かす、6年ぶりソロアルバムへの想い「影の部分にフォーカスを当てたかった」
前作から約6年。長い時を経て、松下優也渾身のフルアルバム『BLACK NEVERLAND』が3月27日にリリースされる。今作は、楽曲はもちろん、アルバムタイトルから衣装、ビジュアルまで松下本人がセルフプロデュース。彼はこのアルバムにどんな想いを込めたのか。胸の内を語ってもらった。(高橋梓)
「今回は、自分の感性に素直になりました」
ーー6年ぶりのフルアルバムですが、どんな気持ちでこの作品に向き合ったのでしょうか。
松下優也(以下、松下):そうですね、自分を応援してくれているファンのみんなや、自分のやりたいことに興味を持ってくれるであろう方たちに対して、100%全力を注いで作ったアルバムです。今回は曲もそうですし、ジャケットからアルバムの中の写真まで自分でプロデュースしているので、より手作り感があるアルバムになったんじゃないかなと。
ーーセルフプロデュースだからこそ、貫いたものもあると思います。
松下:自分の中で「こういう表現がしたい」と思ったことに素直になるというか。今までは、「こういうのは良くないんじゃないか」と勝手に思っていたんですよね。「こういう表現はしないほうが良いんじゃないか」とか、「こういうことは誰も求めてないんじゃないか」とか。自分で、やりたいことやひらめきを勝手にないものにしていた部分もあったんです。でも今回は素直になって、自分が本当に良いと思うことを忠実にやりました。
ーーなるほど。「ないものにしていた部分」とはどんな部分なんですか?
松下:結構尖った表現だったりだとか、ですかね。
ーーそれは歌詞で?
松下:歌詞もそうですけど、たとえば『BLACK NEVERLAND』のジャケ写の時、髪の毛を赤と黒のツートーンにしたんですよ。そもそも「ツートーンなんて、周りに批判しかされないだろうな」と思ってて。やってもいないのに、勝手に「そんなの良くないでしょ」って。けど、やりたいって思ったし、それが良いって思ってるから、まずはやらないとわからないじゃんって。自分で自分を決めつけるのが良くないなって思ったんですよね。それは髪の色だけじゃなくて、歌詞、曲の表現、曲の幅、全般的に思います。なんとなく自分のファンの方が求めるものは理解しているんですけど、そこだけに安心しているのもアーティストとしてはどうなんだろうって。楽しませたい、驚かせたい、感動させたい、色々感じてもらいたいっていう思いでやっているわけです。一方的に求められるものだけに甘えて、やっていくのは表現者として良いとは思えなかったんですよね。
ーー『BLACK NEVERLAND』には松下さんのやりたいことが詰まっている、と。
松下:そうですね。「やりたいこと」っていうと独りよがりになっちゃいますけど、自分の頭の中にしかない、表現したいことをやった感じですね。
ーー作詞もすべて松下さんが手がけてますよね。特に思い入れのある曲はありますか?
松下:7曲目の「In Darkness」は思い入れがありますね。歌詞を見てもらうと分かるんですけど、タイトル通り自分の影の部分を書いています。でも、自分のことだけじゃなくて。今の世界って、SNSとかで物事を簡単に発信できるようになりましたよね。その分、ちょっとしたことでいろんなことを言われちゃうから、ものすごく気を遣う。特に僕らってアーティストであり、表現者であり、大きく言うと芸術的なことをやっているのに、表現の幅が狭まって物事を軽々しく発言できなくなってしまっているような気がします。でも、音楽の中だったら自由に発信しても良いんじゃないかなと思い、歌詞に落とし込みました。影こそ本当の部分じゃないか、と。
ーーなるほど。そういったアイデアや考え方は、どんな瞬間に生まれるんですか?
松下:いろんな時に生まれます。ライブを観たり、音楽を聴いたりしている時に生まれることもありますし。あとは、不本意なんですけど、すごく自分が疲れている時に出てくることもあります。意外とそういう時の感情の方が強いことがあるんですよね。それは発散ではなくて、同じ気持ちの人がいるんだったら、音楽に残しておけば救われる人がいるかも知れないと思い、音楽に落とし込むというか。より多くの人に音楽を聴いてもらいたいですけど、一人でも僕の曲で救われる人がいれば、それで良いのかなとも思ってます。
ーーアルバムタイトルの『BLACK NEVERLAND』は、以前開催されたライブのタイトルでもある松下さんの造語です。どんな風に導き出されたのでしょうか。
松下:いつもは「タイトルどうする?」って、考えなきゃいけないタイミングで考え始めるんです。でも、『BLACK NEVERLAND』は何でもないときに出てきたんですよ。“BLACK”と“NEVERLAND”って相反するものだし、「面白いな」と思って。それに僕はブラックミュージックが好きで、“光の影の部分”を表現したいなと。人間誰しも一つの面だけじゃなくて、環境や状況、時期によっていろんな面を持ち合わせていると思うんです。その中でも、影の部分にフォーカスを当ててみたいなと。だから、BLACKってすごく自分らしいし、NEVERLANDはずっと子どもでいられる場所なので、僕も音楽などの創作的な活動は、常にそういう気持ちを持ってやっているため、意味合い的にもいいなと思いましたね。今回アルバムを出すってなった時に、世界観を考えても『BLACK NEVERLAND』というタイトルがしっくりきました。