エレカシ 宮本浩次、ソロワークで見せた“誰も知らなかった姿” 歌謡曲へのアプローチを読む

 2018年に、デビュー30周年を迎えたエレファントカシマシ。この直後に、ボーカル・宮本浩次は椎名林檎や東京スカパラダイスオーケストラとのコラボを発表。今年1月には、ソロプロジェクトの本格始動が明らかになった。公式Twitter、Instagramも始動させ自身が投稿するなど、ファンが「きっとしないだろう」と思っていたことをやってのける、驚きのなかでのソロデビューだった。

宮本浩次-冬の花

 各媒体のインタビューによれば、もともと宮本は、30周年ツアー(『TOUR 2018 "WAKE UP!!”』)が終わったらソロ活動をするとメンバーらに宣言していたという(参考:『MUSICA』2019年3月号)。これまで脇目も振らず“エレファントカシマシ”として生きてきた宮本が、バンドではできない楽曲を表現することに重きを置き、ソロミュージシャンとして改めて音楽と向き合った。そうしてできたのが第1弾シングル曲「冬の花」だ。この曲は3月19日に最終回を迎えたドラマ『後妻業』(カンテレ・フジテレビ系)の主題歌になっていて、エレカシで作ってきた“ロック”とはまた違う、壮大で情緒的な“歌謡曲”となっている。ここが、ソロ・宮本浩次の真骨頂だ。

 プロデューサーは、小林武史。2002年にエレカシとしてリリースしたアルバム『ライフ』以来のタッグで、奇しくも宮本が同アルバム制作時、一緒にソロ活動をしてみたいと思っていた相手だ(参考:『MUSICA』2019年3月号)。多彩でアコースティックアレンジに強い小林は、「冬の花」に重厚なストリングスを加え、宮本の歌声を際立てた。宮本本人も「作りたいと思っていた」という歌謡曲は、最高の形で念願叶った(参考:ソロ発表時のコメント)。

 この曲で宮本は歌詞に綴った思いを感情の向くまま歌い上げる、これまでと変わらぬスタイルを見せている。しかし、そこに切なさやもどかしさやるせなさが加わった、あるいはぐっと増したようにも思う。宮本は、52歳にして自身の新たな可能性を世に示したのだ。100%とは言わずとも、ほぼ見せてくれていると信じて疑わなかった宮本の音楽表現だが、その考えは甘すぎた。彼には、まだ見せていない“歌謡曲”という表現があったのだ。

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