エレカシ 宮本浩次、ソロワークで見せた“誰も知らなかった姿” 歌謡曲へのアプローチを読む

宮本浩次「冬の花」

 また女性目線の歌詞もソロでの新たな挑戦のように思う。ドラマ『後妻業』のストーリーを把握した上で作られたこの曲は、主人公・小夜子(木村佳乃)を思い作られたのだろう。エンディングに流れるだけで小夜子が隠す心を浮き彫りにするようだ。小夜子は、後妻業(“財産目当て”で高齢男性に近づき、入籍あるいは内縁関係になったあと、遺産を相続する女性)で荒稼ぎをする、一見すると悪女のようなキャラクターだが、実は親からの虐待や愛した男からの裏切りなど、悲痛な過去を背負っている。

 それに、彼女が老人に近づく理由からは、孤独な彼らの心の寂しさを埋めてあげたいという優しさも垣間見え、一概に“犯罪”=“悪”と言えないところもドラマを一層奥深くしていた。そんな小夜子の悲喜こもごもに、人生の奥深さを表現するかのような〈悲しくって泣いてるわけじゃあない 生きてるから涙が出るの〉〈ひと知れず されど誇らかに咲け ああ わたしは 冬の花〉という歌詞は、ドラマチックなメロディも相まって作品と見事な親和性を見せていた。改めて、ミュージシャン・宮本浩次は底知れない。

 宮本曰く、50代は「老人の青春時代」だという(参照:『ROCKIN'ON JAPAN』2019年2月号)。この年代にさらなる音楽表現に目覚め、青春を謳歌する彼の“散歩”に、歩幅を合わせついていきたい。

(文=松本まゆげ)

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