中居正広のスイッチは今も奥にしまわれている 安室奈美恵ベスト盤でうずき出したエンタメへの情熱

 この話を始めるとき、中居は「僕、昔、音楽かじった時ありまして」とも語っていた。そんな中居が「俺、固結びして、ギンギンに結んで、もう俺の奥の方にしまって。その扉も、なんか鍵を何重にもしてたのに!」と、封印していた歌や音楽に対する情熱がうずき出したというのだ。

 中居は、後輩グループKis-My-Ft2から派生したユニット・舞祭組をプロデュースしているが、2015年9月9日にSMAPとしてリリースした『Otherside/愛が止まるまでは』を最後に、自ら歌うシングルCDからは離れている。「Otherside」は、中居のソロパートにメンバーが合いの手をいれる形で、一斉に前かがみになる振付が楽しい曲だった。静と動、大人と少年、クールとワチャワチャ……一見、相反するような要素が融合する不思議な感覚が、見るものを惹きつけてやまない1曲だ。

 曲の構成をじっくりと紐解き、どう見せていくのかを考えていく。変わった構成であれば、「どういうこと?」と、グッと引き寄せられる。自分だったら、どんなふうに表現するのかをつい試行錯誤してしまう。そんな中居と音楽と向き合う心が、安室奈美恵の渾身の歌声によって刺激されたのだろう。

 「自分たちでも照らし合わせると……一緒にしちゃいけないんですよ?」と前置きをしながら「『君色思い』って、俺のスローのパターンの始まりなんですよ」と、中居のソロから始まる「君色思い」を連想したという。ちょっとの違和感が、聴き続けることで常識化されていく過程が近いのだとか。これを機に両曲を聞き比べてみてはいかがだろう。

 「でも、さすがだったね。その当時に結んだ、あの結び方は頑丈だったね」。残念ながら、中居の奥にしまったエンターテインメントのスイッチは、完全には紐解かれることはなかったようだ。だが、いつかまたベストなタイミングで、中居自らが歌い、踊る作品を見せてくれることを期待せずにはいられない。中居の中のスイッチは決してなくなったのではなく、今も奥にしまわれているということがわかったのだから。

(文=佐藤結衣)

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