田村芽実、二十歳を迎えて意識した二面性 “新芽”のような6曲に込めた思いを聞く

田村芽実『Sprout』インタビュー

上手い歌やお芝居ではなく「本質を届ける」ことを大切に

――田村さんはアイドルグループ・アンジュルムを卒業後、ミュージカル女優としても活躍。歌手との二刀流で精力的に活動中ですが、それぞれの意識の違いってありますか?

田村:私の中でまず歌とミュージカルはまったくの別物なんです。歌は3~4分で作品のイメージを伝えるけど、舞台は2時間とかじゃないですか。なので心の忙しさが全然違いますし、もっと言うと、2つは切り離したものとしてやっていきたいなという思いがあって。

――そうなんですね。

田村:歌の発声も表現の組み立て方も全然違う。自分ではそれぞれ分けてやってるつもりなので、歌手のときには、「“田村芽実”としての歌を極めなきゃ!」って思います。ミュージカルのときも「アイドル上がりの歌手がミュージカルに出てる」みたいな目では見られたくなくて。そういう先入観があったとしても、見たら「完全にミュージカルだった!」って思ってもらえたらいいなと思ってるんですけど……。

――後者はすでに成功している気がしますけどね。

田村:いや、どうでしょう。まだまだこれからです。私がミュージカル女優として目指しているのは、来てくれたお客さん一人ひとりをちゃんと作品の世界に連れていってあげること。ミュージカルを見たことがない人って、歌がセリフのようになってたり、普通のセリフから急に歌にいったりする構成に最初ビックリするじゃないですか。「なんでそうなるの?」って。そういう構成に疑問も持たせないくらいナチュラルに舞台へ引き込むようなお芝居ができたらいいなって思ってます。

――では、両方をやっていることで相互に活かされていることは?

田村:活かされるということとは違うんですが、ミュージカル中は自分というものを消さなきゃいけなかったりして、そこが難しさであり、楽しさでもある。ただ自分自身と向き合わなくてもいいのはちょっとラクなんですよ。歌手のときはかなり自分と向き合うことになるので、それが結構しんどい。「もう! 自分は何を表現したいんだ!?」って、ちょっと荒れたりして(笑)。

――そんなモードになるんですね。

田村:大変です(笑)。ただ、しんどい思いをしただけのやりがいや充実感はすごく感じるので。ミュージカルも歌手も、やってて本当に幸せです。

――二刀流だからこそ精神的なバランスがとれているっていうのもあるかもしれないですね。

田村:それもあると思います。舞台を長期間やっていると役が抜けにくいこともあるんですけど、歌手活動という環境の変化があると自然と切り替えられるというか。それに、両方をやることで物事を見る視野や視点も広がった気がしますね。歌手活動では1曲の歌にとことん向き合って、その本質や、歌の歌詞の整合性みたいなことも歌う前にじっくり考えるんです。そういうのがミュージカルにも活きてて、この作品の本質をどう伝えるか、自分だけじゃなく作品全体としてどうか……ということも今は考えるようになったというか。

――なるほど。

田村:一方の歌手活動でも、ミュージカルをやっていることで脚本家や演出家のような視点で1曲の構成を考えたりできるし、表現のアプローチはお芝居から学んだことも多いので。本当にどっちも必要ですね。とても勉強になってます。

――例えば、どちらか一方だけを選ぶということはあり得ないと。両輪があって初めて今の田村芽実が存在してるんですね。

田村:本当にそうだと思います。以前、スタッフさんに相談したことがあるんですよ。どちらも100%でやるのは体力的に精神的にも大変で、そのバランスをどうしたらいいですかって。昼に舞台をやって夜にレコーディングみたいなときって、体力的にはなんとかやれても私は何事も組み立てて考えるタイプなので切り替えが少し難しかったんです。そしたらあっさりと「両方やるんだよ」って言われて。「もう、やるのは私だよー!」ってそのときは思ったんですけど(笑)、今は素直に感謝ですね。やっぱり両方やるからこそ、っていうのはいろんなところで実感するので。発見できることも片方だけの人のきっと倍以上はあると思ってます。

――同時に、田村さんのキャパも自然と広がってるんじゃないですか?

田村:そうかもしれないですね。今は不思議と、悩んだとしても「どうしたらいいかわからない」っていうのがないんですよ。たとえ遠くても、点でもゴールみたいなものがなんとなくわかったり、求められてるものや自分が行くべきところが見えるようになったのは経験なのかなって。どんなときも、ただ上手い歌、ただ上手いお芝居というのではなく「本質を届ける」というのを大切にしていきたいですね。

――最後は6月30日のワンマンライブについても聞かせてください。1月のソロデビュー後初ワンマンに続く、2度目のステージになります。

田村:今回のアルバムを引っさげて、収録曲は全部歌うつもりです。あとは、日本人として生まれた国籍や女性っていう性別は、基本的には変えられないじゃないですか。そういう「変えられないもの」をひとつテーマにライブを構成していこうかなって。私の大好きな昭和歌謡も歌おうと思ってるんですけど、そういうのも今の二十歳の私が発信する歌として、何かアップデートして届けられたらいいです。

(取材・文=川倉由起子)

■CDリリース情報
2019年3月20日(水)リリース
田村芽実1stミニアルバム『Sprout』
【初回限定盤】(CD+DVD)¥4,500(+税)
【通常盤】(CD)¥2,000(+税)
収録曲
1. First Flash(作詞・作曲:遠藤響子 編曲:松谷 卓)
2. 1, 2, 3, Go!!(作詞・作曲:遠藤響子 編曲:鶴崎輝一)
3. 無形有形(作詞:末満健一 作曲・編曲:和田俊輔)
4. 体温(作詞:松井五郎 作曲:深田太郎 編曲:多田三洋)
5. カガミよカガミ(作詞:阿久 悠 作曲:深田太郎 編曲:鶴崎輝一)
6. 歌が咲く(作詞:末満健一 作曲・編曲:和田俊輔)

【初回限定盤】DVD収録内容(約88分)
「田村芽実ワンマンライブ2019“めいめい白書”」
(収録曲)(カッコ内はオリジナルアーティスト他)
・トゥモロー(ミュージカル『アニー』より)
・私のお気に入り(ミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』より)
・シューティングスター(スマイレージ)
・自転車チリリン(スマイレージ)
・孤独なハリケーン(本田美奈子)
・ロマンス(岩崎宏美)
・繭期の子守唄(舞台『グランギニョル』より)
・窓際の化け物(ミュージカル『マリーゴールド』より)
・無形有形(*新曲)
・輝いて ~My dream goes on~
・Summertime
・Lovin’ you(ミニー・リパートン)
・魔法をあげるよ ~Magic In The Air~
・優しい夢だけをみて
・MAY(斉藤由貴)
<アンコール>
・歌が咲く(*新曲)
・オシャレ!(松浦亜弥)
(バンドメンバー)Key西村奈央 / Gt長谷龍之介 / Ba加納誠人 / Drウツミエリ / Vn銘苅麻野

■配信情報
iTunes Store、レコチョク、mora他、主要配信サイト、ハイレゾ配信サイト、
定額制聴き放題サービスにて、3月20日(水)から配信スタート
ダウンロード特典も決定、詳細は各サイトを参照。

■イベント情報
1stミニアルバム『Sprout』リリース記念、東名阪インストアライブ開催
2019年3月23日(土)16:00スタート
【大阪府】タワーレコード梅田NU茶屋町店(店内イベントスペース)
2019年3月24日(日)14:00スタート
【愛知県】HMV栄(店内イベントスペース)
2019年3月30日(土)18:00スタート
【東京都】タワーレコード新宿店(7Fイベントスペース)

■ライブ情報
『田村芽実 ワンマンライブ 2019 Vol.2』
6月30日(日)渋谷 WWW X
開場17:00/開演18:00
チケット料金 スタンディング 前売 ¥3,500(税込)/当日 ¥4,000(税込)
●チケットプレイガイド先行受付開始
受付期間:3月20日(水)12時~3月31日(日)23時59分
受付はこちら
問合せ:liveinfo@victormusic.jp

田村芽実 オフィシャルサイト
ビクターエンタテインメント 田村芽実オフィシャルサイト

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