ONE OK ROCKが国内外で続けるあくなき挑戦 カテゴライズ超越した『Eye of the Storm』を聴いて
また、同年10月に埼玉&大阪で実施されたオーケストラとの共演ツアー『ONE OK ROCK with Orchestra Japan Tour 2018』では、のちに配信リリースとなる新曲「Stand Out Fit In」を初披露。同ツアーさいたまスーパーアリーナ公演を観覧したときには、「楽曲の持つテイスト自体は『Ambitions』から「Change」の延長線上にある、海外のメインストリームでも存分に戦えるキャッチーな楽曲だった。いずれ届けられるであろうニューアルバムをこれだけで語るのは無理があるが、それでも次作はかなりの挑戦作になるであろうことは想像に難しくない」と率直に感じた(参照:ONE OK ROCK、なぜオーケストラとコラボ? 新たな実験が行われた日本ツアーを振り返る)。
ONE OK ROCK - Stand Out Fit In [Orchestra Ver.]
その後も今年2月公開の映画『フォルトゥナの瞳』に提供された「In the Stars (feat. Kiiara)」、4月公開予定の映画『キングダム』の主題歌として書き下ろされた「Wasted Nights」といった新曲を徐々に公開。このように楽曲単位で“次章への予告”を見せ続けてきたONE OK ROCKのニューアルバム『Eye of the Storm』も、2月13日のリリース日をもってその全貌が明らかになる。
すでにお聴きいただいた方にはおわかりのとおり、今回は『Eye of the Storm』は前作以上の挑戦作であり、真の意味での勝負作になる1枚だ。『Ambitions』という大きなクッションは存在していたものの、その後の「Change」「Stand Out Fit In」などのリード曲で新作の振り切れっぷりは何となく予測可能だったし、その心の準備も多少はできていたことだろう。とはいえ「完全感覚Dreamer」や「Wherever you are」、あるいは「The Beginning」のようなスタイルを求め続けるリスナーには、今作は一聴しただけではその魅力は伝わりにくいのかもしれない。
ONE OK ROCK: Wasted Nights [OFFICIAL VIDEO]
だが、ちゃんと向き合えばこの『Eye of the Storm』に収められた13曲はしっかり“ONE OK ROCKらしさ”を引き継ぎつつ、それらをネクストレベルにまで昇華させた作品であることに気づくはずだ。
このアルバムに収録された楽曲はすべて、海外の著名なプロデューサーの手により仕上げられている。そのメンツはDan LancasterやCJ Baran、Colin Brittainといった過去のONE OK ROCK作品に携わった気心知れた者からDerek Fuhrmann、Pete Nappi、David Pramik、Kyle Moorman、Dan Bookなど数多くのヒットソングを手がけてきたプロデューサー/ソングライターまで多岐にわたる。1枚のアルバムで楽曲ごとに異なるプロデューサーを採用するケースは、サブスクリプションサービスでの単曲配信が当たり前となりつつある海外ではごく当たり前のこと。前作『Ambitions』もその流れに沿った1枚だったが、同作のインタビューでTaka(Vo)は「Colin Brittainと一緒に、自分たちがやりたいものを作っていく、そういう方向でアルバム制作を進めて。それプラス、海外のレコード会社からラジオでかかりやすいような曲も欲しいって言われて、向こうが提示してきたプロデューサーと一緒に曲を作ったりしてます」(引用:Takaが果敢に挑んだ"新たなオリジナリティ" 海外バンドと戦うために完成させた第二のデビュー作/激ロック)と回答しており、こういった流行を意識した人選は現地のレーベルからのリクエストもあったのかもしれない。
ONE OK ROCK: Stand Out Fit In [OFFICIAL VIDEO]
それもあってか、本作で鳴らされている“最近のヒップホップ以降”のサウンドや、2分台後半から3分台というコンパクトな楽曲の体裁は完全に、“今”の欧米のヒットチャートを席巻するものや支持を獲得している楽曲と共通するものが少なくない。ぶっちゃけ、ポスト・マローンのアルバム『Beerbongs & Bentleys』(2018年)あたりと続けて聴いてもまったく違和感はない。オープニングを飾る「Eye of the Storm」からして、聴いた瞬間にその突き抜け方に驚きを隠せないだろう。だが、一度聴いたら耳から離れないキャッチーなメロディとスケール感の大きなアレンジには、これまで築き上げてきた“ONE OK ROCKらしさ”はしっかり残されている。Linkin Parkの最新作にしてチェスター・ベニントン(Vo)の遺作となった『One More Light』(2017年)にもゲスト参加したKiiaraをフィーチャーした「In the Stars (feat. Kiiara)」も、シンガロングしたくなるその親しみやすさは従来の“ONE OK ROCKらしさ”と重なる。かと思えば、スタジアムロック的なコーラスパートが印象的な「Push Back」もあるし、早くもライブでのキラーチューンになりそうな「Stand Out Fit In」だって含まれている。間違いなくこれらは“最新型のONE OK ROCK”なのだ。
ロックやヒップホップ、ポップスなどジャンルで括ることがバカらしくなるほどに“ONE OK ROCKらしさ”に満ち溢れた、カテゴライズを超越したアルバム『Eye of the Storm』はここ日本において新たな潮流を生み出すことだろう。もしかしたら、本作はロックというジャンルよりも宇多田ヒカルの『初恋』(2018年)あたりとともに語られるべき1枚なのかもしれない。このあくなき挑戦が国内外で、前作を超える成功を収めることができるのか、今から楽しみでならない。
■西廣智一(にしびろともかず)Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。
※記事初出時、タイトルに誤りがございました。訂正の上、お詫びいたします。
■リリース情報
ONE OK ROCK フルアルバム『Eye of the Storm』
発売中
各種サブスクリプションサービスにて配信中
<収録曲>
1. Eye of the Storm
2. Stand Out Fit In
3. Head High
4. Grow Old Die Young
5. Push Back
6. Wasted Nights
7. Change
8. Letting Go
9. Worst in Me
10. In the Stars (feat. Kiiara)
11. Giants
12. Can’t Wait
13. The Last Time
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