『高等ラッパー』と『SMTM』の影響力が絶大?『Korean Hiphop Awards』からシーンを読む
近年、アイドルを中心としたK-POPシーンに負けじとグローバルなアピールを見せる韓国のヒップホップ・R&B(以下、K-HIPHOP/R&B)シーン。本稿では先日ノミネートが発表された『Korean Hiphop Awards(以下KHA)』をもとに、K-HIPHOP/R&Bシーンの現在を読み解いていく。
『Korean Hiphop Awards』とは
ウェブメディア「HIPHOPPLAYA」と「HiphopLE」が主催するこのアワードは、「HIPHOPPLAYA AWARDS」から名前を変え2017年にスタート。音楽評論家やメディア編集者たちによる投票と、インターネットでのリスナーによる投票が50:50の割合で受賞作の選出に反映される。
“メインストリーム”を形成するサバイバル番組の影響力
ノミネート全体を見ていて印象的に感じたのは韓国で絶大な人気を誇るヒップホップ・サバイバル番組、『高等ラッパー』と『SHOW ME THE MONEY(以下、SMTM)』の影響力の強さだ。
『高等ラッパー』の優勝者・HAONが新人部門の有力候補として挙がっているほか、楽曲部門には『SMTM』からCODE KUNST(コード・クンスト)プロデュース、pH-1、Kid Milli、Loopy、Paloaltoによるチャート4位のヒット「Good Day」、序盤で脱落したものの、ピンクの覆面を被った強烈なキャラで、3,000万回を超える動画再生回数を記録したMOMMY SONの「少年ジャンプ」がノミネート。また、アーティスト部門、プロデューサー部門も両番組に出演し大きな足跡を残したアーティストが多数選ばれている。中でもプロデューサー部門を2年連続で受賞しており、昨年も『高等ラッパー』でチャート1位曲を生んだGroovyRoomはその象徴的な存在だ。
そもそもこれらの番組は、総合エンタメ企業・CJ E&Mが手掛けるチャンネル「Mnet」が放送していることから、シーンの商業的な側面を象徴しているし、実際に2018年もそれぞれの番組からチャートトップ20入りした楽曲が7曲ずつも出ている。アイドル以外によるラップ曲がチャートの上位に入るのが珍しい韓国において、両番組は、トラップやフューチャーベースを軸にしたサウンドや、“競争が付きもの”といった大衆がイメージしやすいヒップホップ像を作っているといえるだろう。
最注目のアーティスト部門と新設されたレーベル部門
そうした“影響力”やシーンへの“貢献度”は、レーベル創設者やオーディション番組でのプロデューサー役が多数ノミネートされているアーティスト部門で重要な評価基準となっていそうだ。なんといっても注目は3年連続受賞がかかるJay Park(パク・ジェボム)。韓国国内での活動は例年より大人しめだったものの、自身のレーベル<AOMG>を率いながら、昨年はジェイ・Zのレーベル<Roc Nation>から2チェインズなどとコラボしたEP『ASK BOUT ME』で全米デビュー。その活躍ぶりは「K-POPの広告塔がBTSならK-HIPHOPのそれはJay Park」と言っていいほどだ。
また、今年から新設されたレーベル部門も見逃せない。師弟関係が重要視されるジャンルの特性もあるが、アーティストが設立したレーベルが大多数のK-HIPHOPでは、レーベルが果たす役割の大きさは尚更だ。今回のノミネートの中で特に注目なのは、2017年にSwingsによって設立され歴史は浅いながらに、Kid Milli、JUSTHIS、所属ラッパーによるマイクリレー曲「IndiGO」など多数のノミネートを輩出した<Indigo Music>。先月には、昨年新たに加わった女性ラッパー・Jvcki Wai(ジャッキー・ワイ)が、レーベルメイトのYoung Bらをフィーチャーした新曲「DDING」でチャート3位の大ヒットを記録するなど、確実にシーンの台風の目となっている。