『高等ラッパー』と『SMTM』の影響力が絶大?『Korean Hiphop Awards』からシーンを読む
シーンの幅の広さを見せる作品たち
一方で『KHA』には、これまで挙げてきたコマーシャルで華やかな世界とは距離を置く、アンダーグラウンドなイメージのアーティストも多くノミネートされていることを強調したい。中でも3部門にノミネートの2人組・XXXは、商業的なシーンの現状についてインタビューなどで度々懐疑的な発言をしているが、アティチュードだけでなくその作品も独特。テクノやベースミュージックを昇華したFRNK(フランク)の先鋭的なビートと、それを乗りこなすKim Ximya(キム・シミャ)の柔軟でテクニカルなフロウは、華やかなメインストリームとはまた別のスリリングさを体感させる。
最後にK-HIPHOPの後を追うように年々層の厚みが増しつつあるR&Bシーンにも触れておこう。“ヒット”といえばチャート1位を記録したDEANの「instagram」が圧倒的だが、彼と同じくK-POPとアンダーグラウンドのR&Bをコネクトさせるような活躍をしているSUMINにも期待したい。BTSやRed Velvetの楽曲にも携わっている彼女の作品は、ビート感覚こそフューチャリスティックで今っぽいのだが、ボーカルやシンセなどの音づかいに関しては90’sっぽさを色濃く感じさせ、今年のグラミー賞で主要2部門にノミネートされていたエラ・メイが象徴する世界的なR&Bシーンの“オーセンティック回帰”の流れともリンクさせる。アルバム『Your Home』はK-R&Bとグローバルなシーンをコネクトさせるパワフルな作品だ。
ヒップホップを大衆に定着させ続ける華々しい作品たちと、独自のスタイルを貫くことでシーンをカラフルにしていく野心的なニューカマーたち。多様なプレイヤーの存在こそがシーンを次のレベルへと進化させるのだということを、『KHA』のノミネート作品たちは伝えている。
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■山本大地
1992年生まれ。ライター、編集者。海外の音楽を中心に執筆。2016年まで「Hard To Explain」編集部。現在は音楽メディア「TURN」編集スタッフも。