オサカナ躍進、けやき坂46への期待、ベビレ解散…『アイドル楽曲大賞』激動の2018年を振り返る

2018年アイドルシーンを振り返る

坂道系での注目株は“けやき坂46”

ーー乃木坂46は、昨年『日本レコード大賞』(TBS系)で大賞を獲得した「シンクロニシティ」が8位にランクインしました。

ガリバー:乃木坂46は「君の名は希望」以降、代表曲というものをなかなか見出せなかった。それに、メンバーの卒業が増えていって、卒業シングルと夏曲の繰り返し……というサイクルに見舞われて。グループとしては売れているんだけれども、次の代表曲がないままずっときていた中、ようやく2018年に「シンクロニシティ」という答えを出せたと思うし、メンバーの成長と洗練された大人の表情も「シンクロニシティ」にばっちりハマった。

岡島:生駒(里奈)ちゃんの卒業シングルという意味合いもあったんですよね?

ガリバー:生駒ちゃんは卒業シングルのタイミングだったんだけど、自分の意思で2列目に下がった。それういったことも含めて、今の乃木坂46の雰囲気がフォーメーション、曲調、衣装、MVにまとまっている。完成度が高いし、2018年の乃木坂46の1曲として申し分ない。グループの代表曲としてこのまま大切にしていってほしいし、それが順位に反映されたのは個人的にすごく嬉しかったです。

乃木坂46 『シンクロニシティ』

ガリバー:一方で欅坂46は、グループのアンビバレントな状態が図らずとも顕になってしまった。21人の絆というところから始まったのに、平手友梨奈の不調や今泉佑唯、志田愛佳、米谷奈々未の卒業、原田葵の休業など、なかなか21人が揃わないという状況。これは個人的主観ですけど、楽曲の世界観を体現するのに、彼女たちがついていけなかったというのが原因だと思っていて。「サイレントマジョリティー」は10代の女の子たちがこの曲を歌っていることへの驚き、斬新さから始まっているんだけど、平手を先頭にした体制でグループとしてまとまりきれなかったという。2ndアニバーサリーライブは有意義だったと思うし、アウトプットは素晴らしいんだけれど、メンバーの精神状態が追いつかなかった。そのままグループのまとまりのなさに繋がった。でも昨年の12月に2期生が加入して1期生と一緒に歌番組にも出演しているので、2019年は明るい方向に進んで行くんじゃないかと思います。

欅坂46 『アンビバレント』

宗像:けやき坂46は躍進していたよね。

ーー上位ではないですが、アルバム『走り出す瞬間』の楽曲が多く入ってますね。

宗像:まだけやき坂46を、欅坂46の2軍だと思っている人が多いんですよね。

ガリバー:坂道合同オーディションで、けやき坂46は3期生の加入を1名に止めたんです。いかに今の体制が磐石かということの表れで、2019年のけやき坂46は一番楽しみですね。

ーーアイドル楽曲大賞の常連でもある、わーすたの「タピオカミルクティー」は10位です。

わーすた / タピオカミルクティー MUSIC VIDEO (Wasuta / Tapioca Milk Tea)

岡島:流行っているものを取り入れるというコンセプトは昔から一貫しています。子ども世代へのアプローチでもある。

ガリバー:アルバムは楽曲の振り幅がすごくて、完成度がすごい。

岡島:スペインのデュオ・Adexe & Nauとコラボした「Yo Qiuero Vivir」を始めとしてメインでは派手なことをやっているんだけど、アルバム曲では楽曲派の喜びそうなこともやっている。

宗像:エビ中もそうでしたけど、楽曲の振り幅が大きいのは面白いですよね。

岡島:インディーズだと、やりたいことは分かるけど予算がないために音やMVのクオリティが低いものがあって。わーすたは衣装から映像からとにかくリッチに作っていますからね。

ピロスエ:「タピオカミルクティー」の衣装は背中にストローが伸びていて、そこにタピオカが入っている。すごく凝った衣装だと思いました。

ガリバー:夏フェスでは、衣装が暑そうなんですけど、彼女たちは苦しそうな表情せずに踊っていて、それもよかった。avexやiDOL Streetにとって、わーすたは希望なんだと思いますね。ゆっふぃー(寺嶋由芙)12位ですよ?

寺嶋由芙 / 君にトロピタイナ(Short ver.)

宗像:「君にトロピタイナ」は、NONA REEVESの西寺郷太さんを作詞、作曲、プロデュースに迎え、シーラ・E、Stock Aitken Watermanのネタを仕込むなどして、キャリア上、初めてここまでブラックミュージックに接近しました。加茂啓太郎さんが手がけてブラックミュージックに近づくと、フィロのスと被るんじゃないかという恐れがあるんですけど、西寺さんをプロデューサーに立てたことによって、ディスコな方向に行った。20位以内でも、ソロのメジャーアイドルでは一番高い順位ですね。

ピロスエ:シーン全体として見ても、ソロで活躍しているソロのアイドルはそんなにいない。元℃-uteの鈴木愛理はソロ復帰していきなり日本武道館ライブで驚きましたね。

岡島:海外に留学していた武藤彩未さんもステージに帰ってきましたね。

ーー14位はラストアイドルの「バンドワゴン」。オーディション番組が始まったのが、2017年の夏でシングルリリース自体はその年の12月でした。

【MV】バンドワゴン/ラストアイドル

ガリバー:「バンドワゴン」の特徴は歌い手が決まっていない中で作られた楽曲ということです。この曲を歌うためにオーディションをして、テレビ番組上でバトルを繰り返し、ようやく最後の7人が決まった。

宗像:ラストアイドルはその後も、セカンドシーズン、サードシーズンと曲をかけた戦いをしているわけですからね。

ガリバー:2018年のラストアイドルを語る時に、「バンドワゴン」ではないなというのがあって。実際、4thシングルまで出しているんですよね。それがどれも上位にランクインせずに、一昨年の「バンドワゴン」でみんなの印象が止まっていた。ライブアイドルとして成長してきたラストアイドルを観てきたので、残念な気持ちもありつつ、「バンドワゴン」がいい曲というのには抗えないですね。

宗像:ラストアイドルは「ほかのアイドルグループとの兼任も可能」(2期生からは兼任不可)ということで、たくさんのライブアイドルがオーディションに参加していった。まさか、パクスプエラの阿部菜々実ちゃんがセンターを張るとは思えないじゃん。C-Styleの八剱咲羅(ファミリーには参加せず)とか、ちゃんと初期段階の審査で見ていたんだなと。

ガリバー:元ライムベリーのMISAKI(木村美咲)ちゃんとかね。

ーー2期生のセンターの一人である橋本桃呼さんは元ハロプロ研修生です。

ラストアイドル「愛しか武器がない」MV【映画『がっこうぐらし!』主題歌】

ガリバー:彼女のラストアイドルとしての最初の握手会に行ったんですけど、「ハロプロから学んだことはなに?」って聞いたら、「挨拶と礼儀」って感動しましたよ。研修期間は4カ月と短いながら、この人は学ぶべきことを学んで帰ってきたんだなと。それでセンターなわけですから。

ーーMaison book girl「言選り」は17位。アルバム部門でも『yume』が7位です。

Maison book girl / 言選り / MV

ガリバー:「言選り」は、詩を生成する箱型AIとサクライケンタが合作で作った楽曲で、そういったチャレンジは評価すべきですよね。コンセプトアルバムの制作に関しては、特に信頼できると思っていて。

宗像:曲単体の強度がすごいんですよ。そこでコンセプトアルバムを作るからとんでもなくすごいことになる。

ーー去年のアイドル楽曲大賞の1位はBiSHの「プロミスザスター」でしたが、今年は上位にはランクインしていないのが意外でした。

ガリバー:BiSHを擁するWACKのグループは、ランキングや外向けの指標軸にそもそも興味がない。特にBiSHに関しては売れてるから、いい意味で踏み台に使っていただいたなという感じではないでしょうか。

ピロスエ:ももクロ(ももいろクローバーZ)とかAKB48がランキング上位に全然入ってこない感じに似ているのかも。まあでも今年はたまたまそうだったのかもしれないし。

ガリバー:WACKは、BiSHのおかげでワンランク上がったというか。動員規模もそうだし、ドルヲタじゃない一般層からのファンが増えた。

宗像:去年は、「プロミスザスター」を『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)で歌ったのが大きいのかもしれないですね。

ガリバー:それで言うと、エビ中はいつも安定して上位なのが不思議なんですよね。

岡島:スターダストって、同人誌とかミニコミとか、ファンカルチャーに対して昔から懐が深いんですよ。運営で“校長”としても知られる藤井(ユーイチ)さんは、『私立恵比寿中学 職員会議』と題して、トークイベントをやってますよね。ファン目線でグループをどう見られているか、ちゃんと気にしている。あとは、このアイドル楽曲大賞って2010年の、ももクロ「行くぜっ!怪盗少女」の1位から始まってるんですよね。その後に、エビ中が出てきているから、割とスタダの層がずっと見ていてくれている気がします。

ピロスエ:でも楽曲部門1位になったことはまだないですね。

岡島:インディーズでは、同じスタダの桜エビ~ずが上位にきたじゃないですか。エビ中の「自由へ道連れ」のポイントを大きく超えていて、いきなりそこまで行ってるんだなと勢いを感じました。

(インディーズ編に続く)

(取材・文=渡辺彰浩)

■イベント情報
『アイドル楽曲大賞プレトーク2019 Vol.1』
日程:2019年2月11日(月・祝)
開場18:00/開演18:30
会場:新宿・ROCK CAFE LOFT
料金:前売1500円 / 当日1800円(+要1オーダー)
チケット予約はこちら(※ROCK CAFE LOFTのサイトのみとなります)
出演:ピロスエ、ガリバー、岡島紳士、宗像明将
ゲスト:児玉律子(FAREWELL, MY L.u.v)、小林拓馬(FAREWELL, MY L.u.vプロデューサー)
主催・お問い合わせ:VIDEOTHINK
内容:ピロスエ、ガリバー、岡島紳士、宗像明将の4名が2019年オススメのアイドル楽曲をそれぞれ紹介。さらにゲストを交えて、そのゲストに関する楽曲や楽曲制作についてのトークなども行う。児玉律子さんによるライブと、物販&特典会もあります。

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